住宅不足や環境問題対策として、欧米や中国を中心に需要が拡大している「モジュラー・ビルディング(Modular Building)」。従来の建物に比べ建設時間が20~50%短縮されるほか、環境に優しくコスト削減も期待できるため、2030年までに14兆円市場に成長すると予想されている。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドが2018年、モジュラー・コンストラクション・スタートアップであるカテラ(Katerra)に、8.65億ドル(約950億円)を投じたことでも注目を浴びた。

労力・コスト・時間を大幅に削減「モジュラー・ビルディング」

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(画像=aurielaki/shutterstock.com, ZUU online)

モジュラーとは、「基準寸法に沿って作られた組み立てユニット」という意味。モジュラー方式で建てられた家をモジュラー・ホーム、建造をモジュラー・コンストラクションという。

モジュラー・ビルディングは、複数のユニットの組み合わせで構成された、組み立て式の建物だ。工場などであらかじめ組み立てたユニットを建設現場に運搬し、デザインに合わせて、その場で完成させる。LEGOブロックで部屋やキッチン、バスルーム、オフィスなどのフレームを作り、最後に合体させて一つの家やビルにする工程をイメージすると、理解しやすいだろう。ゼロから全てを組み立てるより、各パーツを先に作っておいた方が、作業が早く完了する。

組み立て式という点で、日本でもおなじみのプレハブ住宅と共通するが、モジュラー・ビルディングはよりコストと労力、環境汚染の要因となる廃棄物や二酸化炭素の排出などを抑えることに重点を置いている。環境問題や住宅不足問題に対応可能な、現代社会向きの建物といえるだろう。 第二次世界大戦後の米国では、住宅不足解消策としてモジュラー・ホームが広範囲に普及したが、その多くが住まいとしての役割を重視した、デザイン性や機能性の乏しいものだった。

しかし近年は、機能性・デザイン性が高いモジュラー・ビルディングが続々と登場し、一戸建てから高層マンション、仮設住宅、商業用ビル、教育・医療施設、クルーズ船の宿泊施設、防衛省の建物まで、さまざまな種類やスタイルが実現している。

建築作業の60%が工場で行われたブルックリンの32階建ての住宅タワー「B2」や、中国湖南省に位置する岳陽市の30階建てのタワーホテルを見ると、「近代的なモジュラー・ビルディング」の在り方がよく分かる。

さらに前述のカテラが展開するサービスのように、テクノロジーを駆使し、建築プロセス全般を単一のプラットフォームで管理するなど、効率化を図る動きも活発化している。

2030年には欧州だけでも14兆円市場に?コスト削減効果も大

市場調査企業Fortune Business Insights の予想によると、世界のモジュラー市場は2018年の時点で648.5億ドル(約7.1兆 円)に達しており、2026年までに1072億ドル(約11.8兆円)規模に拡大する見込みだ。また、マッキンゼー・アンド・カンパニーは、 2030年までに1300億ドル(約14.3兆円)市場に成長し、220億ドル(約2.4兆円)相当のコスト削減を期待している。