これまでの2回では、北野氏に「投資家」「経営者」の視点からみたオープネスの必要性について論じてもらった。

最終回となる第3回では、個人レベルにおいても「オープネス」が重要となる理由を語ってもらった。

「自分の名前で仕事をする」ことこそ最高のリスクヘッジ

撮影:森口新太郎
(撮影:森口新太郎)

――北野さんは別のインタビューで、会社でも資料には必ず作成者の名前を入れると言ったように「『すべての人が作ったモノに対して、その人の名前を入れる』というカルチャーを広めたい」といったお話もされていました。ただ、「表に出ず自分は黒子に徹したい」と考える人もいると思うのですが。

そういう方もいると思います。私自身も、あまり名前を出したくなかったので、アルファベットのペンネームで活動していた時期がありました。しかし、そうしたスタンスで今後も良いかどうかを考える上で、重要なことが2つあります。

ひとつは、「自分の名前を出さないで生きる」ということは、己が代替可能な存在であることを認めることを意味します。そのことが良いか悪いかはわかりません。そういう生き方、働き方もあるでしょう。

しかし、国や会社が自分のことを100%守ってくれる状況ではないという現状を考えれば、リスクヘッジの観点から「名前の入った仕事」をしておいた方が良いと思うのです。

例えば、たとえば1年間で10個のプロジェクトに携わるとします。そのすべてに名前を出すのは抵抗があるかもしれないので、仮に一つは自分の名前で外部にPRするとしましょう。一方で、このように外部に語ることができる仕事が1年間ゼロの人も結構いると思います。

これを15年続けたら、少なくとも15個は「自分の名前の入った仕事」が残るわけです。そうすると、仮に15年経った時点でその会社が潰れたとしても、積み重ねた15個の仕事は、次の会社に転職する際に確実に役立つであろうポートフォリオになっているわけです。

仮に、それが22歳から37歳までの15年間だとしたら、その期間にサラリーマンが作ることができる金融資産なんてたかが知れています。一般的に言って、コツコツ貯金しても1000万程度でしょう。自分のキャリアのポートフォリオを作るというのは、それと同等かそれ以上の価値があると思います。

――市場から評価されるために必要な情報は整理しておくべきということですね。