(本記事は、山田 実希憲氏の著書『年収が上がる転職 下がる転職』すばる舎の中から一部を抜粋・編集しています)

どう始める?転職活動

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全てのビジネスパーソンに役立つ転職活動

私は転職エージェントとしてこれまでに5千人を超える方の転職支援を行わせていただきました。

しかし、やみくもに転職を勧めてはいません。

転職を考えるから相談にいらっしゃるわけですし、今の仕事にすべて満足している人は少ないのかもしれませんが、転職したからと言ってすべて満足に変わっていくわけではないからです。

ただ、転職するしないを別問題として、転職活動は全てのビジネスパーソンが始めるべきだと思っています。

それは、転職を検討しなさいということではなくて、自分を他者に伝えるために、転職活動は自分と向き合う、言い方を換えれば、自分を客観視しながらキャリアと向き合う絶好の機会になるからです。

「やり方」以前に不可欠な「キャリアの棚卸し」

さて、この本を手に取ってくれたあなたは、転職活動のはじめ方を知っていますか?

そもそも転職活動というと、どういった活動をイメージするでしょうか。

友人・知人への相談、リクナビNEXTやDODAといった転職サイトへの登録、履歴書・職務経歴書の作成、求人情報の収集、転職エージェントとの面談、企業との面接などが想像できるかと思います。

それぞれの具体的な活動内容についてのアドバイスは後述しますが、とにかくこれらの活動が日常的に行っている活動ではないことは間違いありません。

そして、これらの活動には前提として以下のことを把握することが欠かせません。

・自分が普段、どういった仕事をしているのか
・これから働き方をどうしていきたいのか
・自分を知らない人に、自分をどう紹介するのか

転職活動には、自分はどんな人間で、どんな経験をしてきたのかを他人に伝えることが不可欠です。

そのためには自分を知らなくてはならないのですが、いざ考えてみると、実はその自分をよく知らないことに気づかされます。

転職活動を始めるとぶつかる、「キャリアの棚卸し」と言われる壁です。

自分がやってきた仕事や実績を伝えるということは、数年~数十年分のキャリアを伝えるということです。

当然の話ですが、そのまま伝えたらどれほどの時間がかかるかわかりませんし、より明快に伝わるよう、整理してわかりやすくまとめる必要があります。

うまくいった経験やうまくいかなかった経験も含めて、過去の実績を整理していくことで、自分は何ができる人であるかをまとめます。

その上で自分がやりたいと思っていること、過去の経験から再現性のある職務としてできることが見えてきます。

例えば、営業の仕事をしていたとして、過去の実績を数字で表現してもらうと、達成したかどうかは見えてきます。

しかし100人中90人が達成しているケースもあれば、100人中10人しか達成していないケースもありますし、キャリアの棚卸しとして考えると情報として物足りません。

その実績は、ただ商品やサービスが良かったから達成できたものなのでしょうか。

達成したいと強く思った気持ちや、どうしたら契約になるかを考え、実行した経緯など、実績につながった要因を掘り下げてみましょう。

お客様の本当のニーズの取得、顧客目線で考え抜いたプレゼン資料の作成、周囲を巻き込んで協力要請を行うなど、実績につなげるための思いと行動こそが、自分がやってきたこと、できることになります。

これは必ずしも飛びぬけた営業実績が出なかった経験であっても、同じことが言えます。

契約にならなかった理由を振り返ったのかどうか、その振り返りを行動として次に活かしたのかどうか、それがやってきたことです。

結果が出た人、出なかった人で終わらせず、どういう気持ちと行動で結果に結びつけた人か、これこそが再現性のある経験と実績だと言えます。

私が過去にお会いした中には、断られ続けてもアプローチし続けられる強さを持った人、トップセールスマンになりたくて社内のトップセールスマンの動きを観察し続けた人、他社と製品で差がつかないので売る人で差をつけようと努力を重ねた人など、たくさんのストーリーを聞いてきました。

その人たちは、実績につながった自分の思いや行動をしっかりと細分化して、具体的に振り返ったことで、次のやりたいことも明確になっていきました。

事実と気持ちの部分を分けて考えると、自分が充実感を感じるポイントに気づきやすいです。

「3つの円」で考える

そうして整理していくと、自分ができること、やりたいことについてはわかってきますが、もうひとつ、意識しておかなければならないのが、「価値があること」です。

価値があると言われてもわかりづらいかも知れませんが、「求められていること」と言ってもいいでしょう。

この「価値があること」は、できること、やりたいことに比べて、業界や会社をより客観的に見て、自分の置かれた立ち位置をはかる必要があるので、すぐには把握できないかもしれません。しかし、自分と向き合うことを通じて、自分と社会・業界との距離は見えるようになっていきます。

やれること、やりたいことであっても、社会から求められていることでなければ価値は見出しづらいです。

しっかりと「価値がある」という視点を得られる、つまり自分の市場価値はいかほどだろうと考える機会であるというのも、転職活動そのもので得られる大きなメリットです。

「できること」「やりたいこと」「価値のあること」の3つの円が重なり合う部分が見つかれば、それが転職で目指すべきところだと言えるでしょう。

転職理由に関わらず始め方は同じ

「現状に対する不満がある」「新たにやりたいことができた」「家族の生活スタイルが変わった」等、転職を考えるきっかけは人それぞれです。

それでも、転職を考える理由に関わらず、転職活動を始める際には、説明したように次の選択のために自分を知ることから活動を始めます。

その上で自分の市場価値を見定めていくのです。

実際、自分が生きてきた環境によって価値観が出来上がっているので、自分にとっての当たり前が社会にとっての当たり前ではないこともよくあります。

自らを振り返る、そこでやりたいこと、やれることを整理して、それが価値あることなのかを推し量っていくという順序が、転職活動を意味のあるものにするために効果的なのです。

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山田 実希憲 (やまだ・みきのり)
ジェミニキャリア株式会社 取締役・転職エージェント。1979年生まれ。法政大学社会学部を卒業し、リフォーム会社に入社。500世帯以上の住まいと人生に関わる。入社して10年が経過し、生き方と働き方のズレを感じたことから、30代で初めての転職活動を経験。そこで、転職のための活動が自分と向き合う機会であることや、キャリア相談をする相手の必要性、経験や市場価値を客観視する重要性などを実感。転職エージェントとして「生き方」に「働き方」を重ねるための転職支援をスタート。累計5,000名を超えるビジネスパーソンの相談を受ける。現在は経営コンサルティングと人材紹介事業会社であるジェミニキャリア(ジェミニストラテジーグループ)において、キャリア相談窓口を広げる一方、企業の経営サポートを行う。

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  1. 全てのビジネスパーソンに役立つ転職活動とは?
  2. これからの時代に「自分のキャリアイメージ」が重要になる理由とは?
  3. 自身の市場価値を「他者目線」から図る方法
  4. 「10年後にどうなっていたいか?」未来の自分を明確化する
  5. 「他者目線」でキャリアをチューニングするという考え方