Manegy
(画像=Manegy)

敵対的TOBは、買収する側の企業と、される側の企業の合意が成立せずに行われるTOBです。日本では、TOBそのものは年間50件前後ですが、そのうち敵対的TOBは1件あるかないかのようです。しかし、株価も変動するため話題性が大きくなります。世間の耳目を集めた敵対的TOBを振り返ってみましょう。

伊藤忠VSデサント

最近注目を集めた敵対的TOBといえば、2018年から2019年にかけての伊藤忠によるスポーツ用品大手のデサントへの敵対的買収です。どちらも有名企業ですから、この買収劇は、マスコミにも大きく取り上げられました。

伊藤忠はデサントの大株主であり、デサントが経営危機に陥るたびに支援を続けてきましたが、なかなか業績が回復しないことから、経営陣の刷新を図ろうとしたわけです。ところが、デサントが応じなかったため、伊藤忠は敵対的TOBに打って出ました。

伊藤忠が公開した1株あたりの買い付け価格は2,800円で、デサントの株の40%を確保したことにより、敵対的TOBが成立したものです。

北越製紙VS王子製紙

敵対的TOBが成立せずに、防衛策が成功したケースとしては、「北越製紙対王子製紙事件」があります。

2006年に製紙業界トップの王子製紙が、北越製紙に経営統合を持ち掛けたものの、北越製紙はこれを拒否。そこで王子製紙は、敵対的買収に打って出ましたが、北越製紙は三菱商事を引受先とする新株発行という防衛策に出ます。

結果は、三菱商事が北越製紙の筆頭株主になったことで、敵対的TOBを断念することになりましたが、大手企業同士の攻防戦は、業界の勢力図を塗り替えることにもつながるだけに、「北越製紙対王子製紙事件」と呼ばれたほど大きな話題となりました。

ライブドアVSニッポン放送

有効的TOBに比べ、敵対的TOBでは株の争奪戦が展開されることになりますから、いやでも世間の注目が集まるものです。その中でもひときわ世間の注目を集めたのがホリエモンこと堀江貴文氏率いるライブドアによる日本放送へのTOBではないでしょうか。

ライブドアとその子会社が、ニッポン放送の発行済み株式の35%を取得し、筆頭株主に躍り出たのです。ニッポン放送の筆頭株主ということは、フジテレビも傘下に収めることになるだけに、連日のようにテレビではこの件が取り上げられたものです。

そこでフジテレビは、ニッポン放送を子会社化するためにTOBを発表、発行済み株式の36.47%を取得して、壮絶な株式の争奪戦に発展すると、誰もが想像したはずです。この買収戦線には、“物言う株主”を標榜していた村上世彰氏も参戦するなど、話題には事欠かない騒動となりました。

結局、ライブドアがニッポン放送の株式をフジテレビに譲り、フジテレビがライブドアへ出資するという和解が成立したのですが、敵対的TOBとはどういうものか、その防衛策としての“ホワイトナイト”や“ポイズンピル”といった用語も、このときに株には無縁の多くの人が知ることになったのではないでしょうか。

まとめ

企業の買収や経営統合など目指して行われるTOBですが、“買収”という言葉で思い出すのが“ハゲタカファンド”です。TOBと根本的に違うのは、経営に参画するというより、株式や債券を安値で買いたたき、それを高値で売りぬくことで巨額の利益を得るファンドです。

いずれにしても敵対的TOBやハゲタカファンドに狙われる企業には、特徴があるようです。企業価値が低いにもかかわらずキャッシュ・フローの豊かな企業は、株主を大切にしていないため、仕掛けやすいそうです。また独自コンテンツや特許を所持している企業、買収への防衛策が備わっていない企業は、敵対的買収のターゲットになりやすいようなので、経営企画や財務・IR担当などの管理部門の担当者は、もしものときに備えて防衛策を講じておきましょう。