要旨
- 新型コロナウイルスが中国経済に与えた打撃の凄まじさが明らかになってきた。中国国家統計局などが公表した最近の経済統計を総点検したところ、1-3月期の国内総生産(GDP)は前年比年率では▲50%前後と、前代未聞のマイナス成長になりそうだ。その詳細を紹介したい。
- 1-2月期の工業生産は前年比13.5%減と19年通期の同5.7%増から一気にマイナスに転じた。製造業が前年比15.7%減、鉱業が同6.5%減、電力エネルギー生産供給が同7.1%減だった。PMIを見ても、2月の製造業は35.7%で1月の50%から14.3ポイントの急落、非製造業も29.6%で1月の54.1%から24.5ポイントの急落と、ほぼ全産業が大打撃を受けた。
- 需要面から見ても、1-2月期の小売売上高は前年比20.5%減と19年通期の同8.0%増から一気にマイナスに転じた。飲食が前年比39.7%減、自動車が同37.0%減、家具が同33.5%減、衣類が同30.9%減、家電が同30.0%減といずれも大幅な前年割れだ。外出制限令が追い風となった電子商取引(商品とサービス)でさえ前年比3.0%減と前年同期の水準を下回った。
- また、投資の代表指標である固定資産投資(除く農家の投資)を見ても、1-2月期は前年比24.5%減と19年通期の同5.4%増から一気にマイナスに転じた。製造業は19年通期の同3.1%増から1-2月期には同31.5%減へ、不動産開発投資は同9.9%増から同16.3%減へ、インフラ投資は同3.8%増から同30.3%減へ大幅なマイナスに転じ、内需は壊滅状態だった。
- 以上のような状況を踏まえると、1-3月期の成長率が大幅マイナス成長(前年比▲7%~▲10%)になるのは間違いないだろう。しかし、ここもと新型コロナ感染に歯止めが掛かってきたため、下半期にはV字回復に転じる可能性がある。そうなればリーマンショックで世界経済がどん底に落ちた時に似た展開となり、再び中国が世界経済を救うかもしれない。但し、欧米から新型コロナが逆流し“第2波”が襲来すれば、20年はマイナス成長になる恐れもある。