ルビコン・プロジェクト(NYSE:RUBI)は、デジタル広告枠の売買を仲介する世界的なアドエクスチェンジ企業です。

アドエクスチェンジは日本語にすると「広告取引所」。

メディアやアプリ運営者が持つ広告枠を高く買う広告主をオークションで選び出す役割を担い、ルビコン・プロジェクトは独立系の広告取引所としては世界最大手です。

4月上旬には、動画広告関連技術で急成長するアドテク企業、テラリア(NYSE:TLRA)と合併する予定です。

Googleの独壇場だったデジタル広告業界の伏兵が大きく動き始めたと言えそうです。

コロナショックで株価はコンセンサス(アナリストの目標株価の平均値)の半分ほどの6ドル前後に下落しました。

コロナウイルスの影響を決算や株価の動きで慎重に見極めながら、エントリー時を探るのも手かもしれません。

オークションに新方式

インターネットやアプリ、動画コンテンツなど様々なメディアの広告枠は、オークションによって売買されています。

これまでオークションを行う取引所はほぼGoogleの独壇場でした。

メディアは、Googleにリクエストを流して、もっとも高い値段で広告枠を買ってくれる広告主に枠を売っていました。

一方で、最近主流となっているのは「ヘッダービディング」というシステムです。

文字通り「先頭(ヘッダー)に入札(ビッド)する」という意味で、Googleに広告主を探すリクエストを送る前に、ヘッダービディング取引所にリクエストを送り、オークションにかけます。

その後、Googleにリクエストを送り、両者を比べて高い広告主を選びます。

ヘッダービディングはオークション方式がこれまでとは根本的に異なり、より高くお金を出す広告主を選びやすくなっています。

これまでの方式は、順番に広告主に出せる価格を聞き、最低価格を上回った広告主に広告枠を売ります。

広告価格は常に変動しているため、順番に聞いていると、最も高い値段を挙げた人に到達しない可能性がありました。

一方でヘッダービディングは、オークション会場さながら同時に値段を挙げさせ、最も高い値段を出した広告主を選びます。

ヘッダービディングを導入することで広告枠の収益性は2倍~3倍になるケースも珍しくないようです。

Googleと並行導入

このヘッダービディングの分野でも強いのは相変わらずGoogleですが、ルビコン・プロジェクトも負けていません。

マーケティング情報サイトのDIGIDAYによると、ルビコン・プロジェクトのトム・カーショー最高技術責任者(CTO)は「ヘッダービディングはGoogleのエクスチェンジビディングと、(ルビコン・プロジェクトの提供する)プレビッドの二陣営に集約されつつある」と話しています。

プレビッドは、オープンソースのヘッダービディング方式で、ルビコン・プロジェクトも開発に参加しています。

独立系アドエクスチェンジ最大手として、プレビッド開発では主導的な役割を担っているとみられます。

ルビコン・プロジェクトは、このプレビッドが使いやすいインターフェースを備えたソフトを一体的に顧客(メディアなど広告枠の販売者)に提供しているSaaS企業です。

広告枠の売主は、Googleに生殺与奪を決められたくないため、Googleのヘッダービディングとプレビッドを並行して導入するケースが多いようです。

ルビコンの顧客にはCNNやFOX、スポティファイなどそうそうたるメディアが並んでいます。

100万以上のウェブサイト、6万以上のアプリが顧客になっているとのことで、ルビコンでは1ヵ月に12兆回もの入札が行われ、1秒間に50万回もの広告が表示され、その広告を見ている人は世界で10億人いるそうです。

広告の取捨選択もルビコンのサービスの1つで、200億もの不適切広告がブロックされています。

デジタル広告分野の伏兵「ルビコン・プロジェクト」コロナ相場で株価はコンセンサスの半分に
(画像=ルビコン・プロジェクト公式サイトより)
ルビコン・プロジェクトの顧客(一部)

利益、キャッシュフローとも黒字

2020年10月~12月期(第4四半期)の売上高は前年同期比17%増の4850万ドル。

調整EBITDAは1530万ドルと黒字を確保し、EBITDAマージンは32%と高い利益率を誇っています。

1株利益は0.03ドルと、前年同期の0.04ドルの赤字から黒字転換しました。

事業はブレークスルーしつつあります。フリーキャッシュフローは890万ドルの黒字を確保しました。

SaaS企業を評価する1つの基準が「40%ルール」です。

売上高の成長率と売上高フリーキャッシュフローマージンを足した合計が40%を超えていると、その企業は成長する蓋然性が高いという経験則です。

2020年10~12月のみでみると、売上高成長率17%+売上高フリーキャッシュフローマージン18%=35%と、基準には達していません。

コロナショックの影響も含め、投資するにはもう少し、この先の決算を見極める必要がありそうです。

NASDAQによると、ルビコン・プロジェクトをウオッチするアナリストの目標株価は最高が14ドル、ボトムが10ドル。

コンセンサス(平均)では12.5ドルです。現在、株価はコンセンサスの半分以下で取引されていて「ストロング・バイ」の投資評価となっています。

デジタル広告分野の伏兵「ルビコン・プロジェクト」コロナ相場で株価はコンセンサスの半分に
(画像=NASDAQ公式サイトより)

合併で技術取り込み

ルビコンは、動画広告関連企業のテラリアと早ければ2020年4月初旬に合併することを発表しました。

eMarketerの「US Connected TV Advertising 2019」によると、CTV(インターネットと繋がったコネクティッドテレビ)に対する広告支出は米国だけで2023年に141億ドル(1兆5000億円)になる見込みで、2019年比で倍増します。

ルビコンは、もともと動画広告に強く、同社の動画部門は2019年通年で43%増収です。

テラリアはCTV上の広告収益を最大化するツールを提供するアドテク企業です。

ルビコン・プロジェクトがテラリアの技術を手に入れることによる相乗効果に期待が持てます。

コロナウイルスによる外出禁止・自粛で動画視聴の習慣はむしろ世界的に広がっており、長期的には業績にプラスに寄与する可能性もあります。

テラリアについては、別の機会で紹介したいと思っています。

コネクティッドテレビ向け広告市場は2023年に141億2000万ドルに。(提供: The Motley Fool Japan

デジタル広告分野の伏兵「ルビコン・プロジェクト」コロナ相場で株価はコンセンサスの半分に
(画像=eMarketer.com” US Connected TV Advertising 2019”より)

免責事項と開示事項 記事の作者、大竹典は記事内で言及されている銘柄を保有してはいません。記事は、一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスではありません。