ビジネスのあらゆる場面でAIの効果的な活用が模索される中、金融業界においてもAI を活用したサービスが登場している。それが、SMBC日興証券が提供する「AI株式ポートフォリオ診断」だ。

開発に携わったHEROZ株式会社の取締役CFO・浅原大輔氏とサービスを提供しているSMBC日興証券のダイレクトチャネル事業部長・丸山真志氏が、「AI株式ポートフォリオ診断」の活用法とその強みについて語り合った。

AIがあなたのポートフォリオのリスクを可視化

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(HEROZ株式会社の取締役CFO・浅原大輔氏(右)とSMBC日興証券のダイレクトチャネル事業部長・丸山真志氏(左))

―SMBC日興証券とHEROZがタッグを組んで開発した「AI株式ポートフォリオ診断」とはどのようなサービスなのでしょうか?

浅原大輔氏(以下、浅原):我々が開発した「AI株式ポートフォリオ診断」は、資産運用をされている方のポートフォリオのリスクを分析し、より効率的な運用を提案することができます。

多くの方は、自分のポートフォリオのリスクの度合いを実際に確認したことはないと思います。

例えば「自分ではリスクをとっていない」と思っていても、自動車関連企業に銘柄が偏っていれば、ポートフォリオ理論上、リスクが高くなってしまいます。

これは株式投資について一定の知識を持っている人であれば当たり前のことかもしれません。しかし、一定の知識を持った人が、「リスクを抑えよう」と考えて購入した銘柄であっても、実際に分析してみると、「実はリスクを高めている」というケースもあるのです。

このようにポートフォリオのリスクを可視化してくれるのが「AI株式ポートフォリオ診断」のメリットのひとつです。

本診断では可視化されたリスクに基づいて、リスクを低減し、期待収益率を向上させる銘柄の入れ替えをAIが提案してくれます。したがって、リスクを減らしながら、期待収益率を高めていけるというのが、このサービスの強みです。

このサービスに使われているAIには、3700を超える上場後一年を経過した全上場企業のデータが入っています。人間の目で3700銘柄を毎日チェックするのは現実的ではありません。なので、皆さんが知らないけれど、良い銘柄も必ずあります。きっと皆さんのポートフォリオにも好影響があるでしょう。

丸山真志氏(以下、丸山):これまでの株式投資は、営業員が対面で、どの銘柄を買うべきか、売るべきかを、人間の知見と洞察力に基づいてお客様に提案してきました。

しかし、ネット取引が一般的になり、株式投資のすそのが広がっていく中で、対面のお客様でも自分の判断でネットを使って取引したいというお客様も出てきました。

そこで足りなくなるのがアドバイス機能、特に個々のお客様にカスタマイズされた機能です。これまでのインターネット上における株取引の多くは、口座開設をしていただいて、あとは「自己責任でどうぞ」という状態でした。

しかし、AI株式ポートフォリオ診断を利用していただくことで、AIがお客様のデータを分析し、お客様により良い提案をするということが可能になりました。

非対面チャネルのビジネスモデルを変える

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(「口座数だけではわからない課題があった」と語る丸山氏)

―なぜAI株式ポートフォリオ診断のようなサービスが必要だと考えたのでしょうか?

丸山:現在、個人金融資産の合計は1900兆円あると言われていますが、53%が預貯金で、なかなか投資にお金が回ってこない状態です。

1999年頃にインターネット証券ビジネスが立ち上がり、私も2001年〜2004年に日興ビーンズ証券という証券会社で、その黎明期を見てきました。ネット証券のビジネスモデルは、先ほども申し上げたように、「口座開設をしていただいた後は、自己責任でやってください」というモデルで、これは今も変わりません。

確かに、マーケットにおけるインターネット取引のシェアは高くなってきていますが、個人金融資産の基本的な構造は変わっていないんです。

我々は元々ネットビジネスにはかなり注力していて、2008年に「ダイレクトコース」というインターネット証券に対抗できるようなサービスをリリースしています。これは、ネット取引を中心に利用する方向けのサービスで、手数料は安いのですが、他のネット証券とビジネスモデルは変わらないので、新たに投資を始めた方、若い方にも使っていただいているというわけではありませんでした。

当社で、そういった投資初心者の方に対してアンケート調査を行った結果、せっかく口座を開設していただいても、「投資は難しい」「何を買っていいのかがわからない」「自分は投資に向いていない」といった理由で、投資から離れてしまっていることがわかりました。

証券口座を持っていても使われていない口座が5割から6割ほどあるなど、表に見えている口座数だけではわからない課題があったのです。

浅原:AIはビッグデータを読み込み、パターンを抽出して認識する能力があります。株の世界に置き換えると、3700を超える上場後一年を経過した全企業をすべて分析することができるのです。そもそもAIにとっては上場企業の株式データは「ビッグ」ですらなく簡単に扱える程度のデータ量なのです。

AIはすべての銘柄を同じ深さで分析することができるので、様々な業界、銘柄に興味がある方のニーズにも瞬時に対応できます。これまで一部の人しか受けられなかったプロからのアドバイスというサービスを多くの人に提供することができるようになったのです。

実際の取引でも好パフォーマンス

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(パフォーマンスの結果について語る浅原氏)

−実際に、AI株式ポートフォリオ診断を使用した場合のパフォーマンスはどのようになっているのでしょうか?

浅原: AIを投資に活用する場合、過去のバックテストでは効果が出ていても、実際に運用すると、期待した成果が上がらないということがよくあります。しかし、AI株式ポートフォリオ診断は、サービス開始後に実際にお客様が診断したデータログを元にシミュレーションを行っても、良い実績を示していることが大きなポイントです。バックテストでいい値を見せたAIはたくさんありますが、結果を残せるものは極めて少ないと思います。

分析は二つのやり方を組み合わせて行なっています。

ひとつめの分析は、AIが推奨した銘柄だけを買ったポートフォリオと、AIが売却を推奨した銘柄だけを買ったポートフォリオを比較するというやり方です。この分析は、AI株式ポートフォリオ診断がリリースされた2019年3月末から実際にAIが推奨してきた銘柄のデータを利用しており、バックテストではありません。実際にお客様が診断したデータログを集めたものです。

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(提供:SMBC日興証券)

AIが実際に推奨した銘柄だけを購入したデータを見ると、昨年末時点でのリターンが+1.78%になっています。これに対して日経平均は0%付近です。各月で両者を比較してみると、AIが提案した銘柄群が上回っている月がほとんどで、下回ったのは5月だけでした。スタートしてからの9カ月を通して、ほとんどの月でAIが推奨する銘柄を買った方がパフォーマンスが良かったということになります。

逆に、AIが売却を推奨した銘柄のみのパフォーマンスを見ると、日経平均を下回っている月がほとんどであることもわかります。

また、スタートしてからの9カ月を通して見てみると、AIが言う通りに銘柄の入れ替えをしていけば14 .1%のパフォーマンスの改善が見られるという結果が出ています。通常のインデックス投資と比較しても好パフォーマンスと言えるでしょう。

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(提供:SMBC日興証券)

丸山:これは非常にいい結果だと思います。このデータを見れば、AI株式ポートフォリオ診断が、上がり局面でも下がり局面でも機能していることがわかります。

浅原:もう一つの分析では、お客様がAIの提案に基づいて銘柄の入れ替えを行った場合と、何もせずに持ち続けた場合の比較です。

2019年4月と7月以外は、AIの推奨通りに運用した群は、何もせずに運用し続けた群に対して、50%以上の勝率となっています。2019年6月だと6割、9月は7割ほどの人がAIの推奨に従っていれば、勝っていました。最も低い勝率でも46.2%なので、これも悪くない結果だと思います。

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(提供:SMBC日興証券)

現在、SMBC日興証券さんで、ダイレクトコースの口座を開設していただくと、このAI株式ポートフォリオ診断を無料で使うことができます。診断は何回行なっても無料なので、非常にお得だと思いますね。

市場で勝ち続けられるのは「ぶれない人」

撮影:森口新太郎
(撮影:森口新太郎)

―現在、新型コロナウイルスの影響で、株式市場が大きく動いています。こうした状況の中で投資家の人たちはどんな情報を求めているとお考えでしょうか。

丸山:先を見通せない不透明な状況の中で株取引を行うのは誰であっても困難です。現在のような難しい状況を乗り切るのは、AIであっても簡単ではないでしょう。

しかし、AIは何らかの明確な「答え」を出すことができます。状況が不透明な時に、「これは売りです」といったように一つの指針を示してくれることはメリットだと思います。また、AIはこれまで自分が知らなかった様々な銘柄を提案してくれます。最終的に売買の判断をするのは自分自身ですが、AIが指針を示し、可能性を広げてくれるのです。

浅原:売りたくない銘柄の指定やリスクの許容度もコントロールできるので、自分の志向にあったポートフォリオを実現できるのも強みだと思います。

また、AIは人間のように判断がぶれることはありません。以前、運用パフォーマンスのよい人間の投資家と悪い人間の投資家を比較したことがあるのですが、AIの分類によると、パフォーマンスの良い投資家には「一貫性がある」という共通点があることがわかりました。

一方で、パフォーマンスが悪い人はトータルで見ると逆張り傾向にあるにもかかわらず、ところどころで順張りしているというように判断がぶれているのです。こうしたことを考えると、AIの利点として「感情がない」「一貫している」こともあると思います。それによって損切りの時などにパフォーマンスが出やすいのではないでしょうか。

―今後どのような方にこのサービスを利用して欲しいと思いますか?

丸山:株式投資を始めたばかりの方は、何を買っていいかもわかりませんし、ひとつの銘柄を買っておしまいにしてしまうことも多いのです。そうなれば分散もできないし、その銘柄が暴落すれば、「投資を楽しむ」という段階にまでいたりません。

だからこそAI株式ポートフォリオ診断のようなサービスが必要だと思いますし、投資を始めたばかりの方には、是非利用していただきたいです。これまで株式投資に取り組んでこなかった方々の参入のハードルを下げるには、手数料を抑えることももちろんですが、AI株式ポートフォリオ診断のようなアドバイス機能のあるサービスが必要だと思います。

AIはこのサービスだけでなく、当たり前に使うものとして普及していくと思います。HEROZさんと連携して、これまではなかったアプローチで、証券業界をリードしていきたいと思っています。

浅原:私が取締役を務めるHEROZ株式会社は、創業者の1人である林隆弘が将棋のアマチュア名人だったことから、元々は将棋のAIを開発しているエンジニア集団で、2013年には史上初めて現役プロ棋士に勝利する将棋AIを完成させました。これは現在、多くの人の棋力向上に役立っております。

今回、SMBC日興証券さんと連携してAI株式ポートフォリオ診断やAI株価見守りサービスというサービスを開発しましたが、その根底には将棋AIを作った時と同じように、「人間を助けたい」という思いがあります。

将棋AIの開発時当初は「人間に勝つこと」が目標でした。しかし、現在ではプロ棋士がAIから指し手を学ぶといったように、AIが人間をサポートしているのです。

これと同じような世界観を金融業界でも作りたいと思っています。投資の世界では、まだ「人間よりAIが優れている」と断言できる段階にはありません。

しかし、弊社のAIは人々の投資活動をサポートすることができます。プロの投資家で投資に100%集中しているのであればAIは必要ないかもしれません。しかし、空いた時間で投資に取り組んでいるという方々はAIにサポートしてもらうことで、運用のパフォーマンスを高めることができると思います。

※SMBC日興証券株式会社がご案内する商品等へのご投資には、各商品等に所定の手数料等をご負担いただく場合があります。
例えば、総合コースで現物株式をオンライントレードで注文する場合は約定代金に対して最大手数料率0.8855%(ただし、最低手数料1,925円)、ダイレクトコースの場合は最大27,500円の委託手数料をお支払いいただきます。投資信託の場合は銘柄ごとに設定された各種手数料等(最大4.40%の申込手数料、最大4.5%の換金手数料または信託財産留保額、最大年率3.70%の信託報酬およびその他の費用等)をお支払いいただきます。

各商品等には株式相場等の価格の変動等を直接の原因として損失が生ずるおそれがあります。上記の手数料等及びリスク等は商品毎に異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面や目論見書又はお客様向け資料等をよくお読みください。

AI株式ポートフォリオ診断はHEROZ株式会社と共同開発したAIを用いた情報提供サービスであり、有価証券の売買その他の取引等の申し込みまたは勧誘を目的とするものではありません。また、SMBC日興証券株式会社およびHEROZ株式会社が収益を確約するものではありません。AI株式ポートフォリオ診断の情報は、その内容および正確性、完全性または適時性について、SMBC日興証券株式会社およびHEROZ株式会社は保証を行っておらず、また、いかなる責任を持つものではありません。

商号等 SMBC日興証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第2251 号 加入協会 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会