住宅ローンを組むのであれば事前に返済シミュレーションを行い、問題なく返済していけるのかを確認したい。住宅ローンの返済シミュレーションは金融機関や不動産業者でも行ってくれるが、自分で返済シミュレーションができればより柔軟に返済計画を立てられる。

住宅ローンの返済方法は「元利均等返済」と「元金均等返済」の2つ

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(画像=Room's Studio/Shutterstock.com)

住宅ローン返済方法には毎月の返済額が一定の「元利均等返済」と、毎月返済する元金が一定の「元金均等返済」がある。借り入れ金額と借り入れ期間が同じでも、返済方法が違えば住宅ローン返済額や金利(利息)の計算方法も違う。

住宅ローンの「元利均等返済」の仕組みとメリット・デメリット

住宅ローンの元利均等返済では毎月の返済額は変わらず、返済額に占める元金と利息の割合が変わる。借り入れ残高が大きい返済当初は、返済額に占める利息の割合が大きく、返済が進むにつれ元金の割合が大きくなっていく。

住宅ローンの変動金利型の場合は、一般的に毎月の返済額は5年ごとに見直される。5年の間に金利変動があれば利息返済額は変動するが、元金返済額の割合を変えて調整されるため毎月の返済額は変わらない。

住宅ローンの全期間固定金利型の場合は、借り入れ時点で毎月の返済額が確定する。

【元利均等返済のメリット】
・毎月の返済額が一定であり返済計画を立てやすい

【元利均等返済のデメリット】
・元金均等返済に比べ返済総額が多い
・元金均等返済に比べ元金の減りが遅い

住宅ローンの「元金均等返済」の仕組みとメリット・デメリット

住宅ローンの元金均等返済では毎月一定の元金に利息を加えた金額を返済していく。借り入れ残高の大きい返済当初は利息が多く、毎月の返済額は元利均等返済に比べかなり多くなる。

【元金均等返済のメリット】
・元利均等返済に比べ元金が早く減り、総返済額が少ない

【元金均等返済のデメリット】
・元利均等返済に比べ返済当初の返済額はかなり大きい
・変動金利の場合、金利変動による毎月の返済額への影響が大きく返済計画を立てにくい(5年ルールや125%ルールが適用されない※1)

※1 金利が変動した場合であっても返済額は5年間据え置かれ(元金と利息の割合を変えて調整される)、変更後の返済額は直前の返済額の1.25倍を上限とする。

住宅ローンの「元利均等返済」「元金均等返済」の返済額をシミュレーション

では実際に元利均等返済と元金均等返済では返済額と利息額がどう違うのかシミュレーションしてみよう。借り入れ条件は借り入れ金額3,000万円、借り入れ期間30年(返済回数360回)、金利(利率)年1.2%・毎月返済(ボーナス返済なし)とする。なお、実際の初回利息は融資実行日と初回返済日まで日数で日割計算されるが、今回の計算では便宜上、月利で試算している。

住宅ローンの元利均等返済の毎月返済額は9万9,272円

住宅ローンの元利均等返済のシミュレーションでは、まず毎月の返済額を計算する。次に直前の元金残高に利率をかけて利息を計算し、毎月の返済額から利息返済額を差し引いて元金返済額が決まる。具体的には以下の式で求められる。

毎月返済額={借り入れ金額×利率×(1+利率)^返済回数}÷(1+利率)^(返済回数-1)
利息返済額=元金残高×利率
元金返済額=毎月返済額-利息返済額

利率は月利(=年利÷12)で計算する。実際に元利均等返済による返済額を計算すると次のようになる。

毎月返済額
={3,000万円×(1.2%÷12)×(1+1.2%÷12)^360}÷(1+1.2%÷12)^(360-1)
=9万9,272円

利息返済額(初回)
=3,000万円×(1.2%÷12)
=3万円

元金返済額(初回)
=9万9,272円(毎月返済額)-3万円(利息)
=6万9,272円

2回目の返済額計算では、3,000万円から元金返済額6万9,272円を差し引いた2,993万728円を借り入れ金額(元金残高)として利息返済額を計算し、毎月返済額から利息返済額を差し引いて元金返済額を計算する。以後、返済ごとにこの計算を繰り返していく。

住宅ローンの元金均等返済の毎月返済額は11万3,333円

住宅ローンの元金均等返済では、元金返済額と利息返済額の合計が毎月の返済額になる。毎月の元金返済額は住宅ローンの借り入れ金額を返済回数で割って計算され、返済期間中一定だ。利息は直前の元金残高に金利利率をかけて計算する。利率は元利均等返済と同様に月利を用いる。具体的には以下の式で求められる。

元金返済額=借り入れ金額÷返済回数
利息返済額=元金残高×利率
毎月返済額=元金返済額+利息返済額

上述した元利均等返済による返済額シミュレーションと同じ借り入れ条件で、元金均等返済による返済額を計算すると次のようになる。コメ条件は借り入れ金額3,000万円、借り入れ期間30年(返済回数360回)、金利(利率)年1.2%・毎月返済(ボーナス返済なし)

元金返済額
=3,000万円÷360
=8万3,333円(1円未満切り捨て)

利息返済額(初回)
=3,000万円×(1.2%÷12)
=3万円

毎月返済額(初回)
=8万3,333円(元金)+3万円(利息)
=11万3,333円

2回目の返済では、3,000万円から元金返済額8万3,333円を差し引いた2,991万6,667円を借り入れ残高(元金残高)として利息返済額を計算する。これに元金返済額(一定)とあわせた金額が2回目の返済額となる。以後、返済ごとにこの計算を繰り返していく。

金融機関のシミュレータで住宅ローンの返済シミュレーションを行う方法

住宅ローンを取り扱う金融機関の多くは住宅ローンのシミュレータを提供している。住宅ローンのシミュレータを使えば、借り入れ条件を入力するだけで毎月の返済額やその内訳(元金・利息)、借り入れ残高の推移などを簡単に試算できる。

住宅金融支援機構が提供する住宅ローンの返済シミュレータ

住宅ローン「フラット35」を取り扱う住宅金融支援機構のサイトでは様々なシミュレータが提供されている。同サイトでは簡易的なシミュレーションから返済期間中の金利変化やボーナス返済、諸費用(手数料・団信保険料等)まで含めたもの、借り換えシミュレーションなどもできる。条件を自由に入力できるため、フラット35以外の住宅ローンのシミュレーションも可能だ。

住宅ローンの返済シミュレーションをエクセルで行う方法

エクセルを使って住宅ローンの返済シミュレーションを行う方法を紹介しよう。シミュレーションの条件は、上述と同じ借り入れ金額3,000万円、借り入れ期間30年(返済回数360回)、金利(利率)年1.2%、毎月返済(ボーナス返済なし)とする。

住宅ローンの元利均等返済の返済額は「PMT関数」で計算できる

元利均等返済の返済額はエクセルの「PMT関数」を使って以下のように計算する。

返済額=PMT(利率, 期間, 現在価値, [将来価値], [支払期日])

【毎月の返済額を計算する場合の入力項目】
・利率
1.2%/12
毎月返済の場合は月利に換算して入力する。年1回返済であれば年利、年4回返済であれば年利/4など、住宅ローンの返済間隔にあわせて設定する。

・期間
30*12
返済回数を入力する。30年×12ヵ月。

・現在価値
-30000000
借り入れ残高にマイナスをつけて入力。

・将来価値・支払期日
ローン計算の場合、入力不要

・計算結果(毎月の返済額)
PMT(1.2%/12,30*12,-30000000)=99,273
3,000万円を30年かけ元利均等返済で返済する場合、毎月の返済額は9万9,273円になる。

元利均等返済の場合のエクセルを使った返済シミュレーション(償還表の作成)方法

PMT関数を使えば元利均等返済による償還表(返済予定表)を作成できる。償還表を作成する手順は次の通りだ。 ※筆者作成

(1)項目名・借り入れ条件の入力
項目名(1行目、返済回数など)、返済回数(A列・B列、3行目以降はオートフィルを利用)、金利(C2セル)、当初借り入れ残高(G2セル)を直接手入力する。

(2)返済残回数(B列)
「B2セル」に「=30*12−A2」と入力する。

(3)毎月返済額(D列)
PMT関数で計算する。「D3セル」に「=PMT(C$2/12,B$2,-G$2)」と入力する。

入力の際は借り入れ残高(G$2)の前にマイナスをつけるのを忘れないようにしよう。忘れると計算結果がマイナスになってしまう。

一般的な変動金利型住宅ローンでは、5年ルールにより金利が変動しても5年間は返済額が変わらない。5年ルールを反映するため、ここではPMT関数の項目を「C$2」「B$2」「G$2」としている。「$」を数字の前につけることで、後で行うオートフィルの計算にもすべてC2セル、B2セル、G2セルの値が使われ返済額が一定になる。

住宅ローンの5年ごとの返済額見直しを償還表に反映する場合、見直し時点の金利、返済残回数、借り入れ残高で毎月返済額を再計算するため、「C$2、B$2、G$2」の部分を変更する必要がある。

住宅ローンの見直し後の返済額が直前の返済額の1.25倍を超えるようなら、125%ルールにより次の変更までの毎月返済額は直前返済額の1.25倍の金額を直接入力して対応する。

(4)利息分(E列)
利息計算を行うエクセル関数(IPMT関数)もあるが、ここでは直前の借り入れ残高に金利をかけて利息を計算する。「E3セル」に「=G2*C3/12」と入力する。

(5)元金分(F列) 元金返済額は毎月返済額から利息分を引いて計算する。「F3セル」に「=D3−E3」と入力する。

(6)借り入れ残高(G列) 返済後の借り入れ残高は、直前の借り入れ残高から今回の元金返済分を引いて計算する。「G3セル」に「=G2−F3」と入力する。

A~G列の3行目まで入力すれば、後はそれぞれ下へオートフィル(右下の四角にポインタをあわせ十字に変わった状態で下方向へドラッグ)することで償還表が作成できる。

元金均等返済の場合のエクセルを使った返済シミュレーション(償還表の作成)方法

住宅ローンの元金均等返済の返済額は、元金返済額と利息を計算して合計するだけなので、元利均等返済よりも計算はシンプルだ。元金均等返済の償還表は次のような手順で作成する。

(1)項目名・借り入れ条件の入力
項目名(1行目、返済回数など)、返済回数(A列・B列、3行目以降はオートフィルを利用)、金利(C2セル)、当初借り入れ残高(G2セル)を直接手入力する。

(2)返済残回数(B列)
「B2セル」に「=30*12−A2」と入力する。

(3)利息分(E列)
利息返済額は直前の借り入れ残高に金利(月利)をかけて計算する。初回分の返済利息である「E3セル」には、「=G2*C2/12」(当初借り入れ残高(G2セル)×月利換算の金利(C2セル/12))と入力する。

(4)元金分(F列)
元金返済額は当初借り入れ残高を総返済回数で割って計算する(3,000万円÷360回≒83,333円 ※1円未満切り捨て)。繰り上げ返済がない場合、元金返済額は返済期間中一定だ。

(5)毎月返済額(D列)
毎月返済額は元金分と利息分の合計。「D3セル」には「=E3+F3」と入力する。

(6)借り入れ残高(G列) 返済後の借り入れ残高は、直前の借り入れ残高から元金返済分を引いて計算する。「G3セル」には「=G2−F3」と入力する。

A~G列の3行目まで入力が終われば、A3セルからG3セルをそれぞれ下へオートフィル(右下の四角にポインタをあわせ十字に変わった状態で下方向へドラッグ)することで償還表を作成できる。

住宅ローンの返済シミュレーションに利用できるそのほかのエクセル関数

エクセルには「PMT関数」以外にも住宅ローンの返済シミュレーションに利用できる便利な関数がある。ここで試算する借り入れ条件も、借り入れ金額3,000万円、毎月返済額10万円、金利(利率)年1.2%、元利均等返済・毎月返済(ボーナス返済なし)とする。

毎月の返済額からローンの返済回数(月数)を計算できる「NPER関数」

「NPER関数」を使えば毎月の返済額から、返済回数(毎月返済の場合、月数)を計算できる。毎月の返済額をもとに返済計画を立てる場合に便利な関数だ。

返済回数=NPER(利率,定期支払額,現在価値,[将来価値],[支払期日])

【総返済回数を計算する場合の入力項目】
・利率
1.2%/12
毎月返済の場合は月利に換算して入力。年1回返済であれば年利、年4回返済であれば年利/4など、返済間隔にあわせて設定する。

・定期支払額
100000
毎回の返済額を入力。

・現在価値
-30000000
借り入れ残高にマイナスをつけて入力。

・将来価値・支払期日
ローン計算の場合、入力不要

・計算結果(返済回数)
NPER(1.2%/12,100000,-30000000)≒356.8532(回)
3,000万円を月10万円ずつ返済する場合、約29年8ヵ月(総返済回数357回)かかる。

一定期間経過後の借り入れ残高を計算できる「FV関数」

FV関数を使えば、一定期間経過後の住宅ローンの借り入れ残高が計算できる。固定期間選択型ローンの金利固定期間終了時の借り入れ残高や、将来借り換えを行う時点での借り入れ残高を確認するために使える関数だ。

将来価値(将来の借り入れ残高)=FV(利率,期間内支払回数,定期支払額,[現在価値],[支払期日])

【5年後の借り入れ残高を計算する場合の入力項目】
・利率
1.2%/12
毎月返済の場合は月利に換算して入力。年1回返済であれば年利、年4回返済であれば年利/4など、返済間隔にあわせて設定する。

・期間(期間内支払回数)
5*12
残高を知りたい時までの返済回数を入力。5年×12ヵ月。

・定期支払額
100000
毎回の返済額入力。

・現在価値
-30000000
借り入れ残高にマイナスをつけて入力。

・支払期日
ローン計算の場合、入力不要

・計算結果(5年後の借り入れ残高)
FV(1.2%/12,5*12,100000,-30000000)≒25,673,670(円)
5年後の借り入れ残高は約2,564万円である。

住宅ローンの返済シミュレーションでマネープランを

住宅ローンの計算方法を理解し、自分で返済シミュレーションを行うことは、今後の自分自身や家族のマネープランを考えるよいきっかけになる。住宅購入を検討するのを機に、今後の自分自身や家族のお金の問題についても考えてみるとよいだろう。

文・竹国弘城(ファイナンシャル・プランナー)