今回、フィデリティ退職・投資教育研究所のリサーチから、ビジネスパーソンの半分以上は「退職金1,000万円以下しかもらえない」「3割以上は退職金がない」という厳しい実態が分かりました。退職金をもらえず公的年金にも頼れない……、そんな時代を生き抜くには資産形成が必須です。その一つの選択肢が「不動産投資」。老後資金を意識した計画の組み立て方を紹介します。

退職金の平均額は1,983万円だが……

老婆
(画像=evrymmnt/Shutterstock.com)

ビジネスパーソンであれば将来の老後資金の柱になるのは、貯蓄・資産形成・公的年金・退職金が主でしょう。今回は、このうち「退職金」をクローズアップします。そもそもビジネスパーソンの退職金の平均額はどれくらいでしょうか。厚生労働省の企業調査によれば、退職者一人あたりの平均退職給付額(勤続20年以上かつ45歳以上の退職者)は次の通りです。

学歴など 退職給付額 月収換算
大学・大学院卒 1,983万円 38.6ヵ月分
高校卒(管理・事務・技術職) 1,618万円 40.6ヵ月分
高校卒(現業職) 1,159万円 36.3ヵ月分

出所:厚生労働省「平成30年就労条件総合調査」

ここで注意したいのは、上記の退職金の平均は「定年で退職したときのもの」ということです。早期優遇ではさらに上積みとなり、大学・大学院卒の場合2,326万円、逆に自己都合だと1,519万円となります。金額に差はあるものの、これだけの退職金をもらえれば、貯蓄や金融資産と合わせて老後資金の目安「約1,300万~2,000万円」をクリアできると考える人もいるかもしれません。

しかし次に紹介する民間機関のデータを見ると、厳しい退職金事情が浮き彫りになります。

退職金0~1,000万円以上の人が半分以上を占めている

図1
(画像=Incomepress)

退職金のリアルに迫るため、民間の退職金調査も見てみましょう。フィデリティ退職・投資教育研究所の65~79歳1万816人を対象にした調査では「退職金制度がない」と回答した人が25.5%、「退職金制度があったのに退職金が出なかった」と回答した人が6.3%でした。これらを合計すると約31.8%は「退職金がない」ということになります。

一方、退職金を受け取った人の金額は500万円未満15.5%、500~1,000万円未満7.8%でした。つまりビジネスパーソンのうち退職金0~1,000万円未満の人が約55.1%もいるのです。

退職金制度の前提になる終身雇用が崩れつつある

前項で紹介したデータによると、退職金は以下のように厳しい実態があることが分かりました。

・退職金を1,000万円以上もらえる人は約44.9%
・約31.8%の人は退職金がない

終身雇用が崩壊しつつあることを考えれば、今後も退職金制度は弱体化していく可能性が高いでしょう。2019年5月13日、日本自動車工業会の会長会見でトヨタ自動車の豊田章男社長が「終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と述べています。加えて、転職をするのが当たり前の時代となり、退職金制度の前提となる一つの会社に数十年以上勤める人の割合は減少傾向です。

リクナビNEXTが2017年1~6月に行った調査によると、転職経験者の割合は30代約53%、40代約62%、50代約66%でした。

“三重苦”時代を生き抜くには資産形成が必須

「退職金は期待できない」「公的年金も頼りにならない」「貯金をしても利回りが低い」といった“三重苦”時代をビジネスパーソンが生き抜くには、資産形成を検討することが必要です。資産形成の中でもビジネスパーソンと相性が良いといわれるのは投資信託の積み立てなどですが、あわせて不動産投資もポートフォリオに組み込むと十分な老後資金を確保しやすい環境が整います。

一口に「不動産投資」といってもさまざまなスタイルがあります。ビジネスパーソンに人気なのは、都心のワンルームマンションです。その理由は、ターゲットである「単身世帯」が増えているからです。また、安定的な収入が見込めるビジネスパーソンは、金融機関のローン審査で有利なこともプラス材料といえるでしょう。

ローンを活用することで実際に使う初期費用は、諸費用や頭金などだけに抑えることができるため、手持ち資金を確保しながら効率的な資産運用ができます。

退職時期と完済時期を合わせた計画が有効

老後資金を意識して不動産投資を始めるなら、「退職金が少ない」「退職金がまったくない」ということを前提にローンの返済計画を立てるのが賢明です。例えば、現在30歳で65歳での退職を想定している人は、35年ローンを組むとちょうどリタイアするころにローンを完済できます。ローン返済中は賃料収入でローンを相殺するのが不動産投資の基本です。

ローン完済後は賃料収入の大半が手元に残るため、それが老後資金の一部となります。仮に、月の手残りが6万円だとすれば年間72万円、20年だと約1,440万円が得られる計算です。ただ、注意したい点もあります。例えば、築年数の古いマンションを購入すると、ローン完済時には建物が傷んでいる可能性が高いでしょう。一般的にマンションの寿命は50~100年といわれます。

狙い目は新築や築浅のマンション

老後資金を重視するビジネスパーソンに合うのは、新築または限りになく新築に近い築浅マンションでしょう。なぜなら、ローン完済後も十分な建物寿命が残っていて、老後資金を稼ぎ続けてくれる可能性が高いからです。

「不動産投資は金額が大きくなるから怖い」と感じている人がいるかもしれません。もちろん不動産投資のリスクはゼロではありません。しかし、不動産投資でローンを組む際は団信(団体信用生命保険)に加入することで、死亡や高度障害といった万が一のリスクに備えることも可能です。退職時期を想定して丁寧に物件を選定すれば、不足する老後資金の不安を解消することが期待できます。(提供:Incomepress


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