(本記事は、横山光昭氏の著書『ゼロからわかる!フリーランス、自営業のためのお金の超基本』=アスコム、2020年4月18日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
「保障」がほとんどない、フリーランス、自営業の人の相談先とは
- 平成27年4月から、生活困窮者の支援制度が始まっています。地域の相談窓口、地元の自立支援機関などで相談ができますが、もしわからなければ自治体に問い合わせをしてください。資金が不足したり生活が困窮したりした場合は、まず第一に相談するべきです。
代表的な支援の紹介
◎自立相談支援事業
支援員が相談を受けて、どのような支援が必要かを相談者と一緒に考え自立に向けた支援を行う。
◎住居確保給付金の支給
離職などにより住居を失った、または失うおそれの高い人に、就職に向けた活動をするなどを条件に、一定期間、家賃相当額を支給。
◎家計相談支援
事業相談者が自ら家計を管理できるように、支援計画の作成、相談支援、必要に応じて貸付のあっせんなどを行い、早期の生活再生を支援。
◎生活困窮世帯の子どもの学習支援
子どもの学習支援をはじめ、日常的な生活習慣、居場所づくり、進学に関する支援など子どもと保護者の双方に必要な支援を行う。
◎一時生活支援事業
住居をもたない方、またはネットカフェ等の不安定な住居形態にある方に、一定期間、宿泊場所や衣食を提供。就労支援などの自立支援も行う。
◎そのほか、就労準備支援事業・就労訓練事業など
これまで、フリーランス、自営業の人のためのお金の管理の仕方、青色申告や小規模企業共済を利用した節税の仕方や老後の資金の作り方、つみたてNISAを利用した資産の増やし方についてお話ししてきました。
会社によっていろいろと守られているサラリーマンに比べ、フリーランス、自営業の人には、「保障」がほとんどありません。
2020年、新型コロナウイルスの影響により、客足が落ちたり、活動の自粛を余儀なくされたりしたため、飲食業やエンタテイメント関係者が苦境に陥り、話題となりましたが、災害などによって仕事がなくなったとき、フリーランス、自営業の人の生活を保障してくれるものはありません。
あるいは、病気やケガをして働けなくなったり、何らかの理由で仕事が減ったりしたとき、サラリーマンなら支給される傷病・休職手当金や雇用保険(失業給付金)などが、フリーランス、自営業の人にはありません。
生活費1年分以上の貯金や小規模企業共済、つみたてNISAでの資金形成などにより、いざというときの対策を自分自身でとらなければならないのです。
ただ、人生には何が起こるかわかりません。
どれほど自衛の手段をとっていても、病気やケガが長引いたり、不況などにより仕事が減ったりして、たくわえた資金だけではやっていけなくなるかもしれません。
そんなとき、フリーランス、自営業の人が利用できるセーフティネットにはどのようなものがあるのか、2015年につくられた生活困窮者自立支援制度などを参考にし、私なりに考えてみました。
これらの制度は、 要件がわかりにくく、自分が該当するかどうか判断できないという声が非常に多いのですが、せっかく制度として存在するのですから、もし使えるものがあるなら、利用するべきだと思います。
フリーランス、自営業の人が利用できるセーフティネット
ここではまず、フリーランス、自営業の人の状況を大きく3つに分け、それぞれにとることのできる手段をご紹介しましょう。
①フリーランス、自営業を続ける意思がない人、または続けられる状況にない人
税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出し(青色申告をしていた人は「青色申告の取りやめ届出書」、消費税を納めていた人は「事業廃止届出書」も一緒に提出)、小規模企業共済に入っている人は、共済金Aを受け取る手続きをし、当面の資金を準備します。
そのうえで、お住まいの市区町村の役所の生活支援窓口に相談してみましょう。
ハローワークとの連携(れんけい)による就労支援を受けられるほか、貯金額や収入などにもよりますが、再就職を考えている人には、以下のような制度が用意されています。
・家賃の支払いが困難になった人は、「働く能力と再就職の意欲があり、ハローワークへ求職申し込みを行う」など一定の条件を満たせば、家賃に相当する金額を原則として3か月間支給してもらえる「住宅確保給付金」を受けられる可能性がある。
・雇用保険(失業手当)を受給できない人が、ハローワークの支援により職業訓練を受講する場合、一定の条件を満たせば、月々10万円の職業訓練受講給付金を受けることができる。
なお、会社員の人が失業した場合には、雇用保険をもらうことができますが、フリーランス、自営業の人は、雇用保険の適用外のため、基本的にはもらえません。
ただし、事業を開始する前に、会社勤めなどをしていて雇用保険の受給資格を持っており、所定の雇用保険給付日数が残っている場合は、廃業届を出すことにより、基本手当の受給を受けられる場合があります。
念のため、ハローワークで確認してみましょう。
②フリーランス、自営業を続ける意思があり、小規模企業共済に入っている人
現在、フリーランス、自営業としての仕事がない人は、やはり税務署に個人事業の廃業届を提出し、いったん共済金Aを受け取って、当面の資金を準備しましょう。
生活を立て直し、事業再開のめどが立てば、事業届を再提出することもできますし、年齢によりますが、小規模企業共済に再加入することも可能です。
何らかの事情で廃業届を出したくない人は、元本割れのおそれはありますが、小規模企業共済の解約手続きをし、当面の資金を準備しましょう。
そのうえで、いったんお住まいの市区町村の役所の生活支援窓口へ行き、受けられる支援がないか、確認しましょう。
③フリーランス、自営業を続ける意思があり、小規模企業共済に入っていない人
すぐ市区町村の役所の生活支援窓口へ相談し、生活福祉資金の貸付を受けるなり、生活保護の申請をするなりしましょう。
どのような生活支援制度があるかは、自治体によって異なりますが、医療費などの支払いが困難な人への資金の貸付制度や、ひとり親のご家庭を対象とした、お子さんの進学に必要な資金の貸付制度などが用意されていることもあります。
いずれの場合も、
完全ににっちもさっちもいかなくなる前に、早めにお住まいの地域の役所や社会福祉協議会などの窓口に相談することが大事です。
まずは一度、生活を立て直すことを考えましょう。
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