儲け第一のビジネスが通用しない時代へ

2019年8月にアメリカの主要企業の経営者でつくる団体、ビジネス・ラウンドテーブルは「株主第一主義」を見直すと宣言しました。今までは投資家の利益を最優先し、株価を上げたり配当を増やすことに腐心してきたアメリカの企業が、大きな転換期を迎えたようです。

今後は従業員や地域社会などの利益を尊重するとし、それが唯一の長期的に成功する道だとしています。

日本も近いうちに株主至上主義からの転換を迫られるだろうと推測します。

また、最近、SDGsという言葉をよく聞くようになりました。

SDGsとは持続可能な開発目標を意味し、2016年から2030年までの国際目標になっています。

貧困をなくそう、産業と技術革新の基礎をつくろう、海の豊かさを守ろうといった17の目標が掲げられています。地球の人口は75億人を超え、自分や自国さえ良ければいいという考えでは、いずれ行き詰まります。ビジネスもそれに基づいて、地球にとって意義があることなのか、多くの人々の役に立てるのかどうかを考えるステージに来ていると感じます。

なぜ情報を公開する企業ほど儲かるのか?

サンフランシスコを拠点とする、EVERLANE(エバーレーン)というオンラインストアでファッションアイテムを販売する企業があります。ここは「Radical Transparency(圧倒的な透明性)」を掲げていて、ベトナムの工場で働く従業員の様子をサイトで公開しています。

そこでは、作業の合間に仲間と楽しそうに遊んでいる従業員の写真が見られます。従業員の労働環境を整え、従業員全員にモペット(原付きバイクのようなエンジン付き自転車)用のヘルメットを無料で提供し、安全に通勤できるようにしました。

また、販売している洋服の材料費や縫製費、関税、輸送費などの具体的な金額も全て公開しています。

こういった透明性が、アメリカの若者を中心に絶大な人気を集めています。

日本では企業の社会的責任というと、有志でボランティア活動をするのがまだまだ主流ですが、それをEVERLANE のように企業活動の中心にしていくのが、これからの大きなテーマになっていきます。利益を生み出すビジネスプランではなく、自分たちの活動によって地球環境がどれだけよくなるのかを証明するようなビジネスプランが求められるはずです。

感性思考,佐々木康裕
(画像=webサイトより)

感性思考
佐々木康裕(Takramディレクター&ビジネスデザイナー)
発売日: 2020年04月18日。Airbnb共同創業者ブライアン・チェスキーとジョー・ゲビア。 画期的な製品で世界を動かすダイソン創業者ジェームズ・ダイソン。いま、世界を動かすビジネスエリートたちはなぜ、次々と革新を起こせるのか?その秘密は、アート的な感覚とビジネスを同時に学べる「デザインスクールのプログラム」にあった!本書は、いま世界のビジネスエリートたちが殺到する米国デザイン系大学院の1年間のプログラムのエッセンスを紹介した一冊。中でも、今回ご提案の記事では、なぜ従来のビジネススクールで学ぶ論理思考が限界と言われているのか、なぜデザインスクールで学ぶ思考法がこれを解決できるのかを解説していきます。(『THE21オンライン』2020年04月20日 公開)

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