テレワーク導入は都内企業の6割に
働き方改革を推し進める施策として、早くから注目を浴びていたテレワーク。新型コロナウイルスの感染拡大によって導入は加速し、東京都が行った調査によれば、テレワークを導入した企業は4月時点で全体の6割、前月と比べて2.6倍にもなっているという。
いわゆる“三密”を避けるため、やむなく在宅勤務で取り入れた企業も多いだろうが、その利便性やポテンシャルに気づいたビジネスパーソンも多いはずだ。交通費や人件費の削減につながるし、場合によってはオフィスを縮小して固定費を浮かすことも起きうる。テレワークをうまく使えるか否かが経営において大きな鍵となるのは自明だ。
特集「間違いだらけのテレワーク」では、テレワークを先んじて導入し、今では総勢5万人のテレワーカーを抱え、Googleや日本生命などのテレワークを支援するまでになっている、イマクリエの鈴木信吾社長にインタビュー。3回にわたって成功の秘訣や働き方の変化などについて見ていくことにする。第1回は、「テレワークが仕事を激変させる」だ。(取材・文/アケミン)
テレワークに発注した方が効率的
テレワークによって生産性の向上に成功した事例は枚挙にいとまがない。ある広告代理店の営業部門で行った取り組みは、示唆に富んでいると鈴木社長は指摘する。
「営業マンの“本分”は、クライアントを捕まえて受注すること。アポイントを取り、提案書を作ってプレゼンして、その内容が刺されば受注に至ります。多くの企業もそうだと思うのですが、この広告代理店の営業マンもこれを1人でこなしていました。
聞けば、提案書を作るのにかかる時間は少なく見積もっても3時間かかるという。そこで、思い切って外部のテレワーカーに提案書を作成する部分を発注し、営業マンを資料作りから開放して、1軒でも多くクライアントを回れるようにしたんです。営業マンが商談という『打席』に立つ回数が増えれば、おのずと受注確率も高まり、売り上げも上がるはずだという狙いです。実際、この試みを導入してから売上は3倍以上に伸びました。同時に、人件費で見ても正社員に3時間作業させるより、優秀なテレワーカーに時給3000円で外注したほうが安くつくというメリットもあります」(鈴木社長、以下同)