不動産投資のインカムゲイン(賃料収入)は、「景気変動の影響を受けにくい」といわれています。今回起こったコロナショックは、「インカムゲインは不景気に強い」という定説が真実かそうでないかを確認する絶好の機会です。リアルな賃料データで確認してみましょう。

コロナショックによって経済は戦後最大の危機に直面

不動産,家賃
(画像=fotomek/stock.adobe.com)

コロナショックによる日本経済への影響は、安倍首相が2020年4月7日に行った記者会見で「経済は戦後最大の危機に直面している」と表現するほどすさまじいものです。2020年5月18日に内閣府が発表した2020年1~3月期四半期別GDP速報 (1次速報値)によると、日本の実質国内総生産(GDP)は、新型コロナウイルス感染症が本格化した1~3月期でマイナス0.9%(年率マイナス3.4%)となりました。

未曾有(みぞう)といえる経済状況のなか、株式市場はもとより、安全資産の代表といわれている金までもが一時大暴落の異常事態となりました。2020年5月8日時点における1グラムあたりの金の小売価格は、終値で5,918円と6,000円を超える勢いですが、2020年3月17日には最安値で5,000円を割り込んだのです。

同じく安全資産といわれてきた不動産投資のインカムゲイン(賃料収入)は、どのような動向を示したのでしょうか。

コロナショックが吹き荒れるなか、首都圏マンション賃料はプラス

コロナショックの影響が国内株価に最も色濃く現れたのは、2020年の2月下旬ごろからです。下落していった節目の様子を以下の表にまとめました。

年月日 終値 備考 2020年2月20日終値との差
2020年2月20日 2万3,479円15銭 2020年1月6日の終値は2万3,204円86銭
2020年2月28日 2万1,142円96銭 2万2,000円割れ ▲2,336円19銭
2020年3月9日 1万9,698円76銭 2万円割れ ▲3,780円39銭
2020年3月12日 1万8,559円63銭 1万9,000円割れ ▲4,919円52銭
2020年3月13日 1万7,431円05銭 1万8,000円割れ ▲6,048円10銭
2020年3月18日 1万6,726円55銭 1万7,000円割れ ▲6,752円60銭
2020年3月19日 1万6,522円83銭 年初来安値(場中:1万6,358円19銭) ▲6,926円32銭

2月20日終値で2万3,749円15銭だった日経平均株価は、2月28日には2万1,142円96銭、3月19日には1万6,358円19銭(場中)となり年初来安値をマークします。約1ヵ月の間に約30%も急落したのです。

このころの賃料の動向を見てみましょう。東京カンテイの「三大都市圏・主要都市別/分譲マンション賃料月別推移」によると2020年3月の首都圏・分譲マンションの賃料は前月比プラス2.4%。1平方メートルの賃料が3,050円と3,000円台の大台となりました。

このように、あらゆる経済指標が下がるような局面でも分譲マンションのインカムゲインは影響を受けないどころか、逆に値上がりの動きを見せたのです。賃料値上がりの要因として考えられるのは、首都圏で新しく流通する物件が増え、物件の平均築年数が21.7年から20.5年に若返ったことが影響したようです。

このことを割り引いても、2020年3月の首都圏分譲マンションの賃料推移は前月とほぼイーブン、またはやや上昇だったのではないかと考えられます。

2020年3月は、近畿圏・中部圏の賃料も安定していた

2020年3月における別エリアの分譲マンション賃料の動きは、どうだったのでしょうか。同調査によると、近畿圏の賃料は前月比プラス2.1%でこちらも安定しています。とはいえデータを細かく見ると、同じ近畿圏でも各都道府県で事情が違い、大阪府はプラス1.5%で3ヵ月連続の上昇トレンドです。兵庫県は前月比や前年同月比で見ても横ばいが続いています。

一方、2020年3月の賃料相場が値下がりしたエリアもあります。中部圏の分譲マンションの賃料は、前月比マイナス0.3%(1平方メートルあたり1,756円)という結果でした。ただ、この値下がりはコロナショックの影響というよりも、中部圏の賃料そのものが中期的に横ばいという影響が大きいでしょう。

賃料滞納リスクは「住居確保給付金」がカバー

コロナショック下の賃料データで見る限り「不動産投資のインカムゲインは不景気の影響を受けにくい」というのは事実といえるのではないでしょうか。ただ今後、日本の2020年4~6月期のGDPは前期比21.7%減と厳しい予測がされています(2020年4月30日付日本経済新聞)。そのためコロナショックの影響はこれからが本番ともいえるでしょう。

しかし「供給(賃貸物件数)と需要(入居者数)のバランスが大きく変わらない」「2020年後半以降はGDPが大幅プラスと見込まれる」などを考慮すれば、不動産投資のインカムゲインへの影響は限定的と考えられます。

また入居者の失業や収入減による賃料滞納リスクもありますが、2020年4月に「住居確保給付金」が拡充され、リスクが緩和されていることもオーナーにとっては朗報といえるでしょう。住居確保給付金は、離職や廃業(またはそれに近い状態)で収入が減少した人の賃料を一定額補助するものです。

このようにコロナショックとインカムゲインの関係を冷静に見ると、不動産投資においては必要以上にディフェンシブになる必要はないでしょう。不景気時、好景気時も変わらず資産運用を着実に進めていくスタンスが重要です。(提供:Incomepress


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