これからビル経営をお考えの方にとって、「ビルオーナーになると、どれくらいの収入を見込めるのか?」というのは、最大の関心事でしょう。またそれとは別に、すでにビル経営を行っている方にとっては「自分の収入レベルは標準と比べて多いのか、少ないのか?」といった疑問もおありだと思います。
この両方に共通しているのは、ビルオーナーの収入について正しい情報の必要性です。この記事ではビルオーナーはどんな収入を得ることができるのか、そして支出にはどんなものがあるのかといったビル経営のリアルな部分を解説し、ビルオーナーとしての成功モデルについてもご紹介したいと思います。
ビルオーナーになりたい方、すでにビルオーナーになっている方のそれぞれにとってとても重要な情報なので、ぜひ最後までお読みください。
- <目次>
1.ビルオーナーの主な収入源
1-1.家賃
1-2.更新料
1-3.共益費・管理費
1-4.敷金・礼金・保証金
1-5.基地局設置料
1-6.自動販売機設置料金
2.ビル経営で発生する支出
2-1.ビル経営の初期費用
2-2.ランニングコスト
2-3.租税公課
2-4.ファイナンスコスト
2-5.必要に応じて発生する都度費用
3.成功しているビルオーナーの収入事例
3-1.(収入事例1)東京・池袋のRC5階建て商業ビル
3-2.(収入事例2)大阪・心斎橋の鉄骨6階建て商業ビル
3-3.(収入事例3)東京・渋谷区内の鉄骨造3階建て商業ビル
4.収益を安定的に上げ続けるために
4-1.ビル経営を成功に導くポイント4つ
4-2.ビル経営において注意すべきこと3つ
5.さらなる収入アップを目指してやっておきたいこと
5-1.ビル経営に精通した専門家のパートナーを持つ
5-2.ビルオーナー自身が愛着を持つ
6.まとめ
1.ビルオーナーの主な収入源
ビルオーナーにとっての収入源は、実は賃料収入だけではありません。主な収入源を以下にリストアップしました。
1-1.家賃
賃貸物件として貸し出している部屋の使用料です。ビルオーナーにはさまざまな収入源があるとはいえ、やはり中心になるのは家賃収入です。
1-2.更新料
賃貸契約には契約期間があります。契約期間満了後も引き続き部屋を使用する場合は契約の更新をするため、その際に発生する更新料もビルオーナーの収入となります。
1-3.共益費・管理費
建物全体や建物内の設備、共用部分などの維持管理費です。通常は賃料に付加する形で徴収します。
1-4.敷金・礼金・保証金
地域によって呼び方や取り扱いが異なるものの、テナント物件に入居する際には入居者がビルオーナーに対して敷金もしくは礼金、保証金といった金銭を支払います。これは賃料滞納や室内の破損、汚損といったリスクに対応するためのものですが、ビルオーナーの「取り分」も含まれているため、入居時に一度だけある収入源となります。
1-5.基地局設置料
携帯電話の普及に伴い、携帯電話会社は電波品質向上を目的に基地局の設置を進めています。近年ではビルの屋上に間借りする形で基地局を設置するケースが多くなっており、この場合は携帯電話会社から設置料が支払われます。大手携帯電話会社が顧客となるため、手堅い収入源となります。
1-6.自動販売機設置料金
自らが所有する建物や土地などに自動販売機を設置すると、協賛金が得られるビジネスモデルがあります。ビルオーナーとしては収入源を多様化しておくことがリスク削減にもなるので、自販機を設置できそうなスペースあるのであれば、検討の余地があると思います。
2.ビル経営で発生する支出
収入の次は、ビル経営に伴う支出についても見てみましょう。支出については固定費として必ず発生するものと、必要に応じて発生するものに大きく分けられます。
2-1.ビル経営の初期費用
ビル経営を始めるにあたって必要になる初期費用は、以下の通りです。
①ビルの取得費用
②ビルの取得に伴う諸経費
③仲介手数料
この場合、①の取得費用が数千万円から億単位の規模になるため、初期費用の大半を占めることになります。②の諸経費とは印紙税、登録免許税、司法書士報酬、ローンを利用する場合はローン手数料や保証料などです。
仲介手数料は物件購入の仲介をした不動産会社に支払うコストです。ほとんどの物件は400万円以上の価格になり、事前に定められた仲介手数料率にあてはめて計算すると「物件価格×3%+6万円」に消費税を上乗せした金額になります。
2-2.ランニングコスト
ビル経営で必要になるランニングコストは、以下の通りです。これらは確実に発生するコストで、必要に応じて発生する費用については後述します。
①管理委託費
②メンテナンス費
③損害保険料
④警備費
⑤共用部分の光熱費
ビル経営においては管理が必要になりますが、ほとんどのビルオーナーは専門の業者である管理会社に管理を委託することになります。①はそのためのコストで、これには清掃や入居者からの対応なども含まれます。②のメンテナンス費は点検や消耗品の交換、補充といった定期的なものを指します。
2-3.租税公課
租税公課とは、税金のことです。ビル経営には実に多くの税金が関わってくるため、税金もコストとしてしっかり認識しておく必要があります。
①固定資産税、都市計画税
②所得税、住民税
③個人事業税(規模による)
これらの税金は、それぞれ課税する主体や課税の考え方が異なるため、3つに分類しました。①の固定資産税と都市計画税は総称して「固都税」とも呼ばれ、不動産を保有していることによって課税されるものです。
固定資産税は固定資産課税台帳に登録されている所有者に対して、固定資産税評価額の1.4%を標準税率として課税されます(税率は自治体によって異なります)。都市計画税は同じく固定資産税評価額の0.3%を上限として、こちらも各自治体が設定した税率で課税されます。
②の所得税、住民税についてはビル経営の利益に対して発生する税金です。利益に対して課税されるため、年間のビル経営収入額によって税率が異なります。それぞれの税率は、以下の通りです。
住民税も年間の所得に対して課税されますが、こちらは自治体によって税率が異なります。
③の個人事業税は、一定規模以上の不動産経営をしている人が「不動産貸付業」に該当すると課税される税金です。控除額が290万円なので、290万円以上の事業所得がある人で次に挙げる要件を満たしていると課税対象になります。ビル経営の場合の要件は、「独立家屋5棟以上」「独立家屋以外の建物10室以上」です。
2-4.ファイナンスコスト
ビルを購入するための費用をローンで調達した場合は、そのためのファイナンスコストとして利息返済の支出があります。
2-5.必要に応じて発生する都度費用
定期的に必ず発生することはありませんが、必要に応じて発生する費用もあります。一般的なビル経営で考えられるのは、以下のような支出です。
①修繕費(建物、内装)
②広告費
③メンテナンス、設備更新
④消耗品
定期的なメンテナンスとは別に、消耗品の取り替えが必要になったり、故障や不具合による更新や修理などの費用が都度発生します。②の広告費は、空室が発生した時に広告を出稿するのであれば、その費用が必要になります。
3.成功しているビルオーナーの収入事例
ビル経営に成功しているオーナーの収支がどうなっているのか、気になる方は多いと思います。実際に成功しているビルオーナーの収入事例を3パターンご紹介します。
3-1.(収入事例1)東京・池袋のRC5階建て商業ビル
1つ目の事例は、東京都豊島区内、池袋駅から徒歩圏にある5階建て商業ビルです。このビルの概要は、以下の通りです。
購入価格:2億円
年間賃料収入:1900万円
満室時表面利回り:9.5%
経費支出後実質利回り:7.6%
年間実質収入:1,520万円
この物件は立地条にも恵まれており、ほぼ満室経営がほぼ実現しており上記の年間実質収入が得られている成功例です。
3-2.(収入事例2)大阪・心斎橋の鉄骨6階建て商業ビル
2つ目の事例は大阪市中央区内、心斎橋駅から徒歩すぐの鉄骨6階建て商業ビルです。繁華街にあるビルのため、1階、2階部分は店舗、3階以上がオフィス物件です。
購入価格:3億9,000万円
年間賃料収入:2,076万円
満室時表面利回り:5.32%
経費支出後実質利回り:4.26%
年間実質収入:1,606万円
店舗兼オフィスとして利用できる商業ビルなので価格は高くなりますが、用途が多様であることから入居率が安定、経費支出後であっても4%を超える利回りが確保されています。
3-3.(収入事例3)東京・渋谷区内の鉄骨造3階建て商業ビル
3つ目は、東京都渋谷区内にある鉄骨造3階建ての商業ビルです。1階部分はオフィスとして利用されており、2階と3階は住居としても利用可能なビルです。こちらは、家賃保証があるため空室リスクと無縁のビル経営が可能となるサブリースを利用した場合の成功事例です。
購入価格:9,900円
サブリース賃料収入:約361万円
利回り:約3.64%
サブリースなので若干利回りが低下しますが、家賃保証がついているため空室リスクを考慮する必要がなく、安全性を重視したビル経営が実現しています。
4.収益を安定的に上げ続けるために
ビル経営を成功に導くには、安定的かつ長期的に収益を上げ続けることがとても重要です。そのために必要なことと、注意点についてまとめました。
4-1.ビル経営を成功に導くポイント4つ
あくまでも概念上の話が中心になりますが、ビル経営を成功させているオーナーに共通するポイントから、ビル経営を成功に導くポイントを箇条書きに整理しました。
①長方形主体の利用しやすい形状である
入居するテナントは室内で業務をするために、さまざまな物品を設置します。そのほとんどが正方形または長方形なので、部屋の形状も四角形であるほうが収まりが良く使い勝手の良いオフィス空間になります。そのため、ビルの形状はもちろんのこと、各室も長方形であること(長辺コアといいます)であることが集客力アップにつながります。
②無柱空間の広さを重視する
ビルには必ず柱があるものですが、専有部分に柱が飛び出していたり、部屋の中に何本も柱があるような形状だと、どうしても使い勝手が悪くなります。部屋の全体を無柱にするのは難しいですが、外側に配置するなど、できるだけ柱が邪魔にならない空間であることを重視すべきでしょう。
③洗練された印象を与える外観とエントランス
ビルの顔となる部分といえば、外観とエントランス部分です。商業ビルは住居向け物件ではないため、入居者の多くは事業者です。事業者にとっては企業イメージも大切なので、ビルの外観やエントランス部分が洗練された印象かどうかが重視されます。ビルの外観全体を美化することはコスト的に難しいという場合であってもエントランス部分の印象を改善することで、集客力アップが期待できます。
④ブルーオーシャンを目指すビルづくり
商業ビルは立地条件が限られているため、どうしても近隣に類似物件が並んでしまいがちです。そのため、差別化がとても重要になります。区別がつかないほど似たり寄ったりの商業ビルだと価格競争に陥ってしまうため、競合の少ない個性を持ったビルづくりの思想が求められます。具体的なアイデアは専門業者などに意見を求めるのが良いと思いますが、「ブルーオーシャンであること」を常に意識するのはとても重要です。
4-2.ビル経営において注意すべきこと3つ
ビル経営において注意したいことを、実際にビル経営に取り組んでいるオーナーからの意見をもとにまとめました。
①専有部分と共用部分の定義を明確にする
入居者が事業者であるため、商業ビルでは入居者が独自に室内に受付を設けたり、セキュリティの観点から間仕切りをして入退室管理システムを導入することがあります。こうした専有部分の取り扱いについてどこまで許容するのかといった取り決めや、原状回復についての定義を契約時に明確化しておくことが重要です。
また、共用部分に看板や植栽などを設置したいという要望が出ることもあるでしょう。この場合も許容する大きさや内容など明確な定義を契約時にしておくことでトラブルを未然に防ぐことができます。
②又貸しや追加入居についての定義を明確にする
事業者が入居する場合、その企業の関連会社や子会社などが追加で入居してくることや、使用しているスペースの一部を又貸しするような形になることがあります。入居者の立場で考えると自社グループ内のことなので問題はないと考えがちですが、こういった部分を曖昧にすると退去時などにトラブルのもとになる可能性があります。
基本的には、又貸しや追加入居は禁止することを契約時に明確化しておくのが無難です。もし別会社が追加入居するのであれば、別室をオーナーと直接契約する形をとるのがセオリーです。
③今後、オフィスビルの空室率上昇が懸念されている
商業ビルの多くは都心やそれに近い場所、主要駅の駅前など、立地条件の良い場所にあるのが一般的です。こうした場所は不特定多数の人が出入りするには良い立地条件なのですが、一般的に地価が高く、都心の場合は住宅地から遠いことも多く、時間をかけて通勤が必要になる場所でもあります。
2020年2月頃から影響が深刻化した新型コロナウイルスの感染拡大を受け、企業では国からの要請もあってリモートワーク(テレワーク)の普及が進みました。当初は窮余の策として通勤や人との接触を減らす目的で導入されたものですが、今後は働き方の多様化や通勤負担の軽減などを目的に「出勤しない働き方」のウェイトが高くなると見られています。これはオフィス物件の需要減少につながるため、今後空室率の上昇や競争の激化が懸念されています。
すでにビルを所有しているオーナーの方々にとっては収入確保のための競争力強化や満足度の向上など、企業努力が求められる時代になることを留意しておく必要があります。
5.さらなる収入アップを目指してやっておきたいこと
ビル経営の収益力を高め、ビルオーナーの収入をさらに高めるためにできることを、3つご紹介します。
5-1.ビル経営に精通した専門家のパートナーを持つ
長年ビル経営に取り組んでいるオーナーであれば自分なりの知見を多くお持ちだと思いますが、ビル経営には実に多くのノウハウがあり、しかもそれは多岐にわたります。
そこで大切にしたいのが、ビル経営の専門家が持っている知見やノウハウです。管理会社に物件の管理や清掃だけを任せるのではなく、もっと大きな枠組みでビル経営全般にわたって相談ができるパートナー、幅広い業務でビル経営をサポートしてくれるパートナーの存在が大きな意味を持ちます。
イデアルはこうしたビルオーナーのニーズに応えるため、賃貸管理やサブリースといった業務に加えてオフィス・店舗仲介やビルメンテナンスなど、不動産のトータルソリューションを提供しています。
5-2.ビルオーナー自身が愛着を持つ
ビルオーナーにとって、所有しているビルは大切な資産であり、収入源でもあります。この大切な資産をどこまで大切にしているかも、ビル経営の成否に大きく影響を及ぼします。例えばオーナー自身が頻繁に見回りに来ていて入居者の要望にきめ細かく対応してくれるビルであれば入居者の満足度は高くなり、長く入居し続けたいと思えるはずです。
これがビル経営の面白い部分で、たとえビルオーナーの事業規模が大きくなくても、きめ細かい対応を心掛けることで、大手不動産会社が経営するビルと十分遜色のない競争力を持つことができます。ビルオーナー自身が愛着を持ち、入居者も大切な顧客であるという姿勢で対応することで、ビル経営はより安定かつ健全なものになるのです。
6.まとめ
ビルオーナーの収入はどれくらいある?という大きなテーマについて、ビルオーナーの収入源と主な支出、そして成功事例から見る収入モデルについて解説してきました。
ビル経営を取り巻く状況は常に変化を続けていますが、依然として有望な投資である事実は変わりません。ビル経営は「買うまで」よりも「買ってから」が重要なので、当記事の情報も参考にしつつ成功するビル経営モデルを構築してください。(提供:ビルオーナーズアイ)
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