イノベーションの鍵は「性善説」にあり

では、これからの時代のマネジメントは、どうなるべきか。それが、「オープン型」です。

GAFAや急成長中のスタートアップのようなイノベーション企業は、すべてオープン型マネジメントを行なっています。

イノベーションとは、既存の物事の掛け合わせから新しい価値を生み出したり、問題を解決したりすること。それには、社内で異なる部署同士がつながったり、他の業界や職種と協業したりする必要があります。よって、この「イノベーションモデル」は、トップダウンではなく、コラボレーション型の組織体制になります。

オープン型マネジメントでは、個性が尊重されます。一人ひとりの違いを大事にし、それぞれが自分にとって最適なやり方で仕事をしながら、生産性や価値創出力を高めていく。それがイノベーションを生み出す大前提です。

そのためには、性善説に基づいて相手を信頼し、個人に裁量と権限を与え、働き方の選択肢を与えることが必要です。コミュニケーションは、報連相から「雑相(ザッソウ)」に変わります。これはソニックガーデンの倉貫義人社長が使っている言葉で、二つの意味があります。

一つは、「雑談と相談」です。組織内外の多様な人たちと協業するには、相互理解を深めることが不可欠です。それには、上下関係を前提とした堅苦しい報連相より、フラットで気軽な雑談や相談が有効です。

もう一つは、「雑に相談する」。「まだアイデアの段階ですが、ちょっと相談に乗ってもらえませんか」と言える関係が重要なのです。時間をかけて完璧に仕上げてから相談するのではなく、ラフな段階から相手の力を借りれば、アイデアをスピーディに形にできたり、思わぬ協力者が見つかったりします。

外部とコラボレーションするには、情報共有もオープンでなければいけません。

統制型のクローズな情報共有では、限られた人だけにメールや口頭で伝達する方法が主流でしたが、これからはグループウェアやチャットツールなどの活用が必須です。時間と場所を選ばないので情報共有の範囲が広がりますし、各自が都合の良いタイミングで気軽に気づきや悩みを書き込めるので、雑相が活性化されます。

仕事の進め方も、迅速かつ柔軟な「アジャイル型」になります。100点を目指すより、20点や30点でいいから素早く動いて、トライ&エラーを繰り返しながら、組織も個人も成長していく。それにより、イノベーションが加速されます。

日本の管理職が苦手とするマネジメント

マネジメント,沢渡あまね
(画像=THE21オンライン)

日本の組織がオープン型マネジメントへ切り替わらなければ、価値を生み出せない人材が量産され、いずれ組織と個人が共倒れします。とはいえ、現場を率いるマネージャーは、「マネジメントを変えろと言われても、具体的にどうすればいいのか……」と悩むでしょう。そこで、これから重要となる「五つのマネジメント」を表2にまとめました。

5つのうち、日本の管理職が特に苦手なのが「コミュニケーションマネジメント」です。自分のチームがコミュニケーション不全に陥っていたら、マネージャーがやるべきことは二つあります。

一つは、「このチームで求められるコミュニケーションとは何か」という要件定義。クレームが多い現場なら、「クレームを減らすために何をするか」を具体的に示すだけでも、メンバーの意識が変わります。

例えば「お客様から問い合わせがあったら、必ず部内で共有して解決策を話し合う」と決めるだけで、「こんなことを上司に報告していいのかな」「メンバーも忙しいから自分で解決するしかない」などと考えて、情報を隠したり、一人で抱え込んだりすることがなくなります。

二つ目は、コミュニケーションの方法を変えること。働き方の多様化が進めば、働く時間と場所が異なる者同士での「雑相」を促進しなくてはいけません。しかも、解決策やヒントを持っている人が想定外の場所にいることも少なくありません。

よって、前述のようにチャットツールなどを使いながら、個人がオープンかつ自由に発信できる場を作ることがマネージャーの重要な役割です。あるいは「気づいたことがあったら、付箋に書いてこのホワイトボードに貼ってください」と呼びかけるだけでも、情報発信の場を作れます。