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(画像=Patrick Poendl/Shutterstock.com)

経済活動の年内復元は困難

信金中央金庫 地域・中小企業研究所 上席主任研究員 / 角田 匠
週刊金融財政事情 2020年6月15日号

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、米国では3月13日に国家非常事態宣言が発令された。各地で外出が禁止され、店舗や工場は閉鎖に追い込まれた。特に、月間を通して行動が制限された4月の経済活動への影響は大きく、同月の実質個人消費は前月比13.2%減と過去最大の減少率を記録した。

 行動制限の期限(4月30日)が明けた5月からは、飲食・小売店や娯楽施設などの営業が順次再開されているが、感染再拡大への不安が残っていることもあって、経済活動の回復ペースは緩やかだ。6月末にかけて、個人消費を中心に経済活動はもう一段水準を切り上げるだろうが、4~6月の経済指標は歴史的な落ち込みになるとみられる。

 仮に、6月の個人消費がコロナ禍の落ち込みの2分の1を取り戻した場合でも、4~6月の実質個人消費は前期比年率40.8%減となる(図表)。GDPの7割弱を占める個人消費の下振れで、同期の実質成長率も年率40%を超えるマイナス成長を余儀なくされよう。

 夏場以降も景気回復の足取りは重いとみている。5月の雇用統計は事前の予想に反して改善を示したとはいえ、3~5月の雇用減少数は累計で1,955万人に達するなど、家計を取り巻く環境が依然として厳しいためだ。また、失業者の生活の支えとなっている失業給付の加算が7月末に期限切れとなるため、今後は経済的に困窮する家計が増えてくるとみられる。米議会予算局(CBO)の経済予測によると、実質成長率(年率)は4~6月にマイナス37.7%に落ち込んだ後、7~9月からはプラス成長に転じるとしている。しかし、10~12月のGDPは、前年同期を5.6%下回る水準までしか戻らないと想定している。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長も、「経済が完全に復元するためにはワクチンが必要で、年内に経済活動が元の状態に戻ると考えるのは難しい」と懸念を示している。

 経済停滞の長期化リスクが払拭できないことから、FRBは今後も金融緩和政策を維持・強化していくと考えられる。もっとも、市場が注目するマイナス金利政策の導入は当面見送られる公算が大きい。米国では、投資資金の退避先や家計の預金としてマネー・マーケット・ファンド(MMF)が広く利用されており、マイナス金利政策の導入による副作用が大きくなるためだ。パウエル議長も「現時点では魅力的な政策手段とは考えていない」と否定的だ。

 ただ、パウエル議長は「感染第2波のリスクは明白にあり、それが起きれば米国経済の試練になる」とも述べている。感染第2波に見舞われた場合、FRBはマイナス金利政策を含む異次元の金融政策に踏み切らざるを得ないと考えられる。

きんざいOnline
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(提供:きんざいOnlineより