景気,支える,目的
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64年度にゼロだった新規国債発行額、20年度は過去最高へ

三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト / 宅森 昭吉
週刊金融財政事情 2020年6月15日号

 戦後日本の景気の第5循環(1962年10月~65年10月)は、「オリンピック景気と昭和40年不況」である。64年の東京オリンピック開催を控え、建設投資が盛り上がった。64年度の国債発行額はゼロであり、それまでは均衡財政が保たれていた。

 景気の山はオリンピック開催月である64年10月で、その後は企業部門を中心に景気が悪化、大型倒産が続出した。昭和40年不況は証券不況とも呼ばれ、株式市場が低迷する。65年5月には、山一証券に株式などの払い戻しを求める個人客が行列をつくる取り付け騒ぎが起こったが、日銀特融が実施されて騒ぎは沈静化した。

 そうしたなか、65年度の補正予算で、赤字国債が戦後初めて発行された。補正予算ベースで2,590億円。実績は1,972億円で、公債依存度は5.3%だった。翌66年度は建設国債が6,656億円発行され、国債はその後、恒常的に発行されている。

 新規国債発行額や公債依存度は経済危機の度に高まってきた。75年度には第一次石油危機を背景に、再び赤字国債2兆905億円が発行された。全体の新規国債発行額は5兆2,805億円、公債依存度は25.3%と初の20%台に上昇した。近年では、リーマンショックの影響で、2009年度に新規国債発行額が51兆9,550億円と初の50兆円台となった。公債依存度は51.5%と、初の50%超えを記録した。

 アベノミクスによる景気回復局面では、そうした状況の改善が見られていた。13年度の新規国債発行額は40兆8,510億円。公債依存度は40.8%と前年度の48.9%から低下した。14年度から19年度まで、新規国債発行額は30兆円台、公債依存度は30%台で推移してきた。

 20年度当初予算での新規国債発行額は32兆5,562億円、公債依存度は31.7%であった。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で様相が一変した。経済的に大きな打撃を受ける人々に対して、雇用、資金繰り、所得などの面で十分な支援をすることが求められている。このため、20年度の新規国債発行額は、第1次補正予算段階で58兆2,476億円になった。さらに、一般会計の追加歳出の財源すべてを国債で賄った第2次補正予算政府案段階で、20年度の新規国債発行額は90兆1,590億円(建設国債18兆7,380億円、赤字国債71兆4,210億円)、公債依存度は56.3%と過去最高を更新した。

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