緊急事態宣言に基づく外出自粛要請を受けて、在宅勤務などのテレワークを導入した企業が増えています。テレワークを導入した企業では、新型コロナウイルスの感染リスクを軽減しただけでなく、「通勤のストレスがなくなった」「家事・育児に充てる時間が増えた」などのメリットを感じた人が多くいました。一方で、「紙や押印を前提とした業務慣行」「テレワーク環境の整備が不十分」などの課題も浮き彫りとなりました。緊急事態宣言はいったん全面解除されましたが、今後も新型コロナウイルス感染防止や働き方改革の一環としてテレワークを導入する企業は増えていくと考えられます。テレワークの進め方や留意点について4回に分けて紹介していきます。
著者プロフィール
外資系コンピュータウイルス対策ベンダー、総合ITベンダーにて情報セキュリティ事業に従事した後、2013年に同社設立。セキュリティ人材育成サービスを提供する傍ら、セミナーでの講演や執筆活動を行う。また、独立行政法人情報処理推進機構にて「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」の改訂や「SECURITY ACTION」制度の創設に携わる。情報処理安全確保支援士実践講習講師。法政大学大学院特任講師。中小企業診断士。MBA。
業種を問わず、テレワーク導入企業が急増中
東京都が実施した4月の調査によると、従業員30人以上の都内企業のテレワーク導入率は62.7%でした。3月時点では24.0%だったので、わずか1カ月で2.6倍に大きく上昇したことになります。従業員規模別に見ると、規模が大きくなるにつれて、導入率も高くなる傾向があります。300人以上の企業の導入率は79.4%。一方、30~99人の企業は54.3%でしたが、3月と比較すると2.8倍に上昇しており、規模の小さな企業でも導入が進んだことがわかります。また、業種別に見ると、事務・営業職が中心の情報通信業、金融業などの導入率は76.2%。現場作業や対人サービスが中心の小売業、医療・福祉業などの導入率は55%でしたが、こちらも3月と比較すると3.7倍となっており、業種を問わず導入が拡大している状況です。
自宅や外出先での柔軟な働き方を実現するテレワーク
テレワークとは、ICT(情報通信技術)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことです。自宅で仕事をする「在宅勤務」をイメージする方が多いかもしれませんが、外出先で空き時間に仕事をする「モバイルワーク」や、本来の勤務先以外のオフィスで仕事をする「サテライトオフィス勤務」なども含まれます。テレワークの効果について、厚生労働省による調査では以下の通り報告されています。
企業が感じる効果
・優秀な人材の確保や雇用継続につながった
・資料の電子化や業務改善の機会になった
・通勤費やオフィス維持費などを削減できた
・非常時でも事業継続でき、早期復旧もしやすかった
・顧客との連携強化、従業員の連携強化になった
・離職率が改善し、従業員の定着が図れた
・企業のブランドやイメージを向上させることができた
従業員の感じる効果
・家族と過ごす時間や趣味の時間が増えた
・集中力が増して、仕事の効率が良くなった
・自律的に仕事を進めることができる能力が強化された
・職場と密に連携を図るようになり、これまで以上に信頼感が強くなった
・仕事の満足度があがり、仕事に対する意欲が増した
テレワークは、人口減少時代における労働力人口の確保やワークライフバランスを実現する「働き方改革」実現の切り札として、政府では企業に対するさまざまな支援策を用意して普及促進に努めています。
テレワーク導入の3つのステップ
いざ自社にテレワークを導入しようとした場合、どのように進めていけばよいのでしょうか。簡単にまとめると次の3ステップになります。