五輪,チケット,争奪戦
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10個以上の金メダル獲得で五輪期間中の株価が上昇

三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト / 宅森 昭吉
週刊金融財政事情 2020年6月22日号

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2020年に予定されていた東京オリンピック・パラリンピックの21年への延期が3月24日に決まった。そして3月30日に国際オリンピック委員会(IOC)が、オリンピックは21年7月23日に、パラリンピックは8月24日に開幕することを決めたが、南米での感染拡大の状況などから見て、予定どおり開催されるか予断を許さない状況だ。

 オリンピック開催による経済効果は大きいが、景気にもたらす影響はそれだけではない。過去のオリンピックにおける日本のメダル獲得数と株価との間には、興味深い関係が見て取れる。

 日本の金メダル数が2桁に達したのは、東京(1964年)、メキシコ(68年)、ミュンヘン(72年)、ロサンゼルス(84年)、アテネ(04年)、リオ(16年)の6大会だ。このうち、建設投資の反動でオリンピック開催月の10月が景気の山となった64年の東京大会を除く5大会で、日経平均株価は大会期間中に上昇した(図表)。トップアスリートの活躍が人々を勇気付けるのだろう。

 反対に、モントリオール(76年)以降、10個に到達しなかった大会は、1大会を除いてすべてマイナスの変動率だ。唯一の例外は12年のロンドン。金メダルは7個と少なかったが、銀・銅を含めたメダル数が38と史上最多(当時)となり、消費者マインドに大きくプラスに働いたと考えられる。

 世界的にも、オリンピックでの金メダル数と経済との関係が見られる。16年のリオ大会で日本は金メダル12個を獲得し、獲得数では6位だった。金メダル数1~10位の国の金メダル数と、同じ10カ国がその時点の世界経済に占める名目GDPのシェアの相関係数は、0.868と高い。選手育成などにお金をかけられる国が強いともいえるし、金メダルを獲るとその国の人々が元気になって、景気が良くなるともいえ、相乗効果が生み出されているのかもしれない。

 21年の東京大会は、自国開催ということもあり、日本選手による多くの金メダル獲得が期待されている。日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長は今年2月3日、東京オリンピックで金メダルを30個獲得することを正式に目標に掲げた。過去最多の16個(東京、アテネ)を上回る数字だ。大会の延期が決まった翌日の記者会見で山下会長は、金メダル30個の目標に関して「変えることはないと思う」と述べている。

 オリンピック・パラリンピックが21年に、人類が新たな感染症を克服したことを象徴する世界的なイベントとして開催できることを願うとともに、日本のアスリートの活躍と、それが株価上昇につながることも期待したい。

きんざいOnline
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