東京五輪
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コロナ禍で急低下したオリンピック関連DI

三井住友DSアセットマネジメント理事・チーフエコノミスト / 宅森 昭吉
週刊金融財政事情 2020年6月29日号

 景気ウォッチャー調査では、2,050名の回答者(景気ウォッチャー)が、景況判断を「良」「やや良」「不変」「やや悪」「悪」の5段階で回答する(回答率は約9割で、毎月25日~月末に調査)。DI作成時には、「良」が1、「悪」を0として0.25刻みで点数化し、各区分の構成比(%)に乗じてDIを算出する。50が景気判断の分岐点だ。

 回答者は判断理由を明記するので、オリンピックに言及したコメントから「オリンピック関連DI」が計算できる。2019年以降でオリンピックに関するコメント数が一番多かったのは20年1月調査で、152名が言及した。オリンピック関連先行き判断DIは50.0と、4カ月連続の50台だった(図表)。

 1月調査では、「東京オリンピックなどのビッグイベントは地方の景気とほとんど関係なく、景気が良くなる要素はない」(中国地方、その他専門店[時計]・経営者)というコメントがある一方で、「東京オリンピックを前にして、テレビ関連の買い換え需要が今後も期待できる」(北海道、家電量販店・経営者)、「東京オリンピックを迎え、物流が多く動くことを期待している」(南関東、輸送業・経理担当)など前向きなコメントが多かった。

 しかし、今年開催予定だった東京オリンピックは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、21年7月23日開幕(予定)に延期された。延期が決まった3月調査において、先行き判断でオリンピックに言及したウォッチャーは108人だが、関連先行き判断DIは15.4まで低下。緊急事態宣言発出中の4月調査では、現状判断で0人、先行き判断でも4人しか言及せず、関連先行き判断DIは0になった。

 緊急事態宣言が解除された5月調査では、関連先行き判断DIは16.7と若干戻ったが、コメント数は、現状判断で2人、先行き判断で6人と依然少ない。厳しい見方では、「新型コロナウイルス感染症の影響はまだ長引く見込みである。それに加えて、近隣の大型コンベンション施設が、東京オリンピックが延期になったこともあり、9月まで全く稼働していないという状況で、我々としては非常に困窮している」(南関東、都市型ホテル・経営者)というコメントがある。その一方で、「特別定額給付金や猛暑予報、さらに東京オリンピック需要もあるので、現状の良い状況のまま、変わらない」(北関東、家電量販店・店長)という見方もある。

 東京オリンピックが21年に開催できるかは微妙な状況だが、景況感に大きな影響を及ぼすオリンピックの動向を、冷静に注視していきたい。

きんざいOnline
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