相手の言葉を否定せず、まずは同調から
――とはいえ、営業をされて、すぐに「契約します!」となる人は少ないだろう。
正木「確かに、『大丈夫です』と断られる方が多いですね。でもそれは、居酒屋のキャッチに声をかけられたら、ほとんどの方がとりあえず断るのと同じですから、メゲることはありません。ここからが本当の営業活動です。
お客様の言葉は否定せず、『そうですよね』『現状で満足していらっしゃると思いますが』と同調します。それから、メリットを具体的にお話しします。1カ月間契約していただけるといくら安くなって、1年契約だといくら、さらに複数年契約だといくら安くなります、というようなお話ですね。
それでも3回断られたら、本当に契約するつもりがないのだと判断しています」
――興味を持ってもらえても、資料の送付や訪問を求められることもあるのではないだろうか。
正木「そうしたことには、当社は対応していないんです。でも、まずは『そうですよね』と同調します。それから、『内容はとても簡単でして』と改めてシンプルに説明をして、資料の送付や訪問の必要はないと感じていただけるようにしています」
――「なぜ料金が安くなるのか?」と詳しい説明を求められることも多いという。
正木「質問をしていただけるということは、興味を持っていただけたということですから、しっかりと具体的なご説明をしています。
また、他社と比べたいと言われることも、しばしばあります。その場合も、『やはり悩まれますよね』と、まずは同調。そこから、再アプローチをします。『早くご契約いただいたほうがより安くなりますから、このお値段でご納得いただけるのであれば、今、ご契約いただいたほうがお得だと思います』というように、クロージングへと導きます。
基本的には1回の電話でクロージングまでするようにしていますが、検討する時間がほしいと言われた場合は、『いつ頃までにご回答いただけそうでしょうか?』と聞いて、その頃にまた電話をかけます。当社では見込み案件に優先順位をつけているのですが、最も優先順位が高い見込み案件ですね。
もし期限を設けていただけなければ、優先順位の低い見込み案件だと判断しています」
――そもそも電話営業では、どのくらいの確率で契約が取れれば、うまくいっていると言えるのだろうか?
正木「電話営業といっても様々なものがあるので業務によって違いますが、私の場合は、1日に30件電話をかけて、1件取れるかどうかです。電話に出た方が決裁権者ではなく、かけ直すことも多いですね。決裁権者との電話では、15~16件に1件くらいでしょうか。
『ガチャ切り』をされて、そもそもお話ができないことも多くあります。断られてばかりなので、新人は『自分は電話営業に向いていない』と思いがちなのですが、それが当たり前なんです。新人がガチャ切りされた相手に、私が電話をしても、やっぱりガチャ切りされます。
ですから、新人を指導する際には、どれだけの電話をかけたら、どれだけの契約を取れるのか、データを示しています。『優秀な人でも、こんな確率なんだ』ということがわかれば、落ち込むことはありません。
そして、『1日に〇件電話をかける』『〇件にこの話をする』というように目標を細かく設定して、一つずつクリアするたびに褒め、成功体験を積ませること。契約件数を目標にすると、あまりに遠すぎますから」
正木達朗(カスタマーリレーションテレマーケティング営業部スーパーバイザー)
(『THE21オンライン』2020年06月02日 公開)
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