新型コロナウイルスの感染拡大によって、テレワークが一気に普及しました。これにより今後、オフィスビルのニーズが大きく変わることが予想されます。具体的に、どのようなニーズの変化が起こる可能性が高いのでしょうか。
テレワークの普及でオフィスビルのニーズが変わる
新型コロナウイルスの感染拡大によって、テレワーク(リモートワーク・自宅勤務)が浸透しました。現在のテレワーク普及率は、どれくらいなのでしょうか。
経団連が会員企業1,470社を対象に2020年4月中旬に行なった調査によると、テレワーク・在宅勤務の実施率は97.8%でした。ちなみに、2月28日から3月4日に行った同じ調査では68.6%でした。新型コロナウイルスの感染拡大によって、テレワークの普及率が約30%も伸びたことになります。
また、全従業員に対するテレワークや在宅勤務者の割合については、「7割以上」という回答が半数以上を占めており、テレワークが広く浸透していることがわかります。
テレワークが本格化しているデータから、以前の「みんなで同じオフィスに集まって働くワークスタイル」に戻るのは難しいと考えられます。富士通や日立をはじめ、多くの大手企業がテレワークと相性の良い「ジョブ型(職務主義の働き方)」の採用や人事考課を発表しており、この流れは中小企業にも広がっていくでしょう。
テレワークの普及によってオフィスの需要が低下するという意見も聞かれますが、それほど単純な話ではなさそうです。企業のニーズが変化し、それに応えられるオフィスビルと淘汰されるオフィスビルの二極化が進むと考えられます。
オフィスのニーズ変化:郊外のサテライトオフィスの増加
テレワークの普及によって予想されるオフィスニーズの最大の変化は、「サテライトオフィス」の増加です。新型コロナ前は、ある程度の規模を要する企業であれば、好立地の本社ビルに人員を集めて働くスタイルがスタンダードでした。
新型コロナ後は、コンパクトな本社と各拠点のサテライトオフィスという体制に変更する企業が増えるでしょう。これにより、主要駅のある郊外エリアのオフィスニーズが高まりそうです。
郊外のオフィスニーズへの対応は、民間だけでなく政府もすでに始めています。例えば、2020年7月に東京都が民間のサテライトオフィスが少ない多摩地域(府中、東久留米、国立など)にサテライトモデルオフィスを開設します。このようなサテライトオフィスのニーズに、官民がどこまで対応するかに注目すべきでしょう。
オフィスビルのニーズ変化:より広いオフィスへの転換
テレワークの実施が難しい企業でも、「より広いオフィスにしたい」という新たなニーズが生まれる可能性があります。広いオフィスを望む理由は、従業員同士のソーシャルディスタンスを保つためです。
特に、これまで従業員がすし詰め状態で働いてきた企業は、ソーシャルディスタンスを保つために、広いオフィスへの転換が急務です。では、ソーシャルディスタンスを保つためには、従業員1人当たりの面積はどれくらい必要になるのでしょうか。
経団連が発表した『オフィスにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン』によると、従業員同士の距離の目安は2メートルで、これに基づいて「人員配置について最大限の見直しを行う」と述べています。2メートルを基準にすると、従業員1人に必要な面積は「4平方メートル以上」ということになります(正方形で考えた場合)。
「従業員1人あたり4平方メートル」を確保するために生じる、「広いオフィスに移転したい」「もう1フロア借りたい」「近隣のビルを借りたい」といったニーズをいかに取り込むかが、今後のビル経営のカギになりそうです。(提供:ビルオーナーズアイ)
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