世界中が5G(第5世代移動通信システム)に注目する中、一部の国ではすでに6G(第6世代移動通信システム)の研究・開発が始まっている。

早々と研究・開発競争の火蓋が切られた背景や進行中の取り組み、そして6Gの実現で予想される未来などに関する情報にアンテナを張っておくことで、いち早く市場のトレンドを予測することができるかもしれない。

Graphs/PIXTA/ZUU online
(画像=Graphs/PIXTA/ZUU online)

5Gの3つの特徴

1980年代の1G(第1世代移動通信システム)登場を機に、移動通信システムは約10年ごとに進化を遂げてきた。新世代モバイル通信システム委員会の報告書によると、過去30年間で最大通信速度はおよそ1万倍に高速化しているという。

5Gの特徴は、4Kや8Kなど高解像度の動画配信を可能にする「超高速通信」、IoT(モノのインターネット)の普及のカギを握る「超多数同時接続」、医療の遠隔治療や自動車運転の精度向上に欠かせない「超低延滞」だ。

4Gと比較すると20倍の通信速度、10分の1の延滞率、そして10倍のデバイスに接続可能となるため、公共の場からビジネス、家庭までの様々なシーンで、より多くのIoTデバイスを直接接続・利用できる。

そのため自動運転車の遠隔操作や3Dマップを含む、「大量のデータの通信に欠かせない技術」とされているほか、VR・AR・MR(仮想現実・拡張現実・複合現実)など、新たな技術を利用したサービスや商品の幅が広がると期待されている。

数年後には6Gが必要となる?

米ネットワークテスト企業Viavi Solutionsの調査によると、商用5Gの導入率は2020年1月の時点で世界34カ国378都市。まだまだ初期段階にあるにもかかわらず、次の6Gの開発に早々と着手する必要はあるのだろうか。

英Vodafoneのスコット・ペティ最高技術責任者(CTO)はこの点について、「5Gの導入でIoTの需要が高まれば、数年後にはさらに大量のIoTに対応可能なネットワークが必要になる」と説明している。

スウェーデンの通信機器メーカーEricssonの予想によると、5Gの世界的な導入拡大に伴い、2024年には契約数が19億件に達し、世界の人口の45~65%が5Gネットワークへのアクセスを得る。

歴代の世代移動通信システムが、時代の需要に合わせて進化してきたことを考慮すると、遅かれ早かれ、より高速でほぼリアルタイムの大容量のデータ通信に耐え得る、新たなネットワークが必要となることは疑う余地がない。

6Gで何が可能になるのか?

次世代移動通信システムが5Gからどのような進化を遂げるのか、現時点で正確に予想することは困難だが、例えばオーストラリアのシドニー大学IoT・電気通信センターのマイヤー・シルヴァニモガダム博士は、「毎秒1TB(テラバイト)、または8000Gbps(ギガビッツ)という驚異的な速度で驚異的な量のデータを送信できる」と主張している。

1TBは1000GB、1GBは1MB(メガバイト)の1000~1024倍に値する。ドコモの5G通信速度が2020年6月の時点で受信時最大4.1Gbps(毎秒4.1GB)であると考えると、その桁違いの威力が想像できる。

シルヴァニモガダム博士の説で算出すると、142時間分のNetflixの映画をわずか1秒でダウンロードできるということになる。また高解像度の3D映像のリアルタイム送信が可能になることで遠隔医療が著しく向上するほか、よりリアルなVR・AR・MR体験など、人間の生活そのものが全く異なる次元へと移行する流れも予想される。

「100%ワイヤレス」「エネルギー効率」6Gに秘められた可能性

しかし必ずしも6Gが、5Gの延長線上となるとは断言できない。通信速度や超多数同時接続、超低延滞は5Gと同等でも、過去の移動通信システムにはない、新しい機能や方向性を打ち出したものとなる可能性も考えられる。

例えば、5Gは光ファイバーネットワークを基盤とするが、米ワイヤレステクノロジー大手InterDigital Communications欧州部門のヴァイス・プレジデント、アラン・カールトン氏は、「柔軟性に欠ける」とファイバーの欠点を指摘し、6Gの構想として「100%ワイヤレス(完全無線)のネットワークの構築」を提案している。

また5Gの課題の一つである、「エネルギー効率の良いネットワーク」に焦点を当てたものとなるかもしれない。

5Gによってネットワークが高密度化するということは、エネルギーの消費量が大幅に増えるということだ。そこでエネルギー効率を改善することで、運用コストと環境を配慮するよう設計されたEricssonの「Radio System」のようなシステムが注目されている。

つまり6Gは、「5Gの課題を解決するためのネットワーク」となる要素も秘めているということだ。5G同様、最終的には国際電気通信連合(ITU)により、6Gネットワークの国際標準化がなされると予想される。