新型コロナウイルスが日本のみならず、世界中で猛威を振るっている。緊急事態宣言に伴う外出自粛などの影響で需要が蒸発。外食や流通・小売業を中心に大きなダメージを受けているのは、読者の方々も実感していることだろう。そこでZUU onlineでは新型コロナに伴う銀行の融資姿勢に焦点を当て、3回に渡って特集「新型コロナで変貌する銀行」をお届けする。第2回は、大企業融資に焦点を当て、メガバンクの動向について見ていくことにしよう。

不良債権処理チームを立ち上げ

新型コロナで変貌する銀行#2
(画像=KazuA / pixta, ZUU online)

三井住友銀行では、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言発出される中、行内でこんな号令がかかった。

「不良債権時代に大口融資先の処理や企業再建に携わった行員を集めろ」

1990年代、バブル崩壊が日本経済を直撃。不良債権が膨らんで金融システム不安に発展し、「失われた20年」に突入した。その過程で銀行が支えられなくなったダイエーやカネボウ、大京といった大企業が相次いで破綻した。産業再生機構が設立され、その支援の下で企業再建を進めた歴史がある。

しかしそれから20年以上が経過、不良債権処理などを経験した行員の多くはすでに銀行を去っている。にもかかわらず、改めてその頃を知る人材を集めろと言っているのだ。

背景にあるのは、「多くの企業は国を挙げての資金繰り支援で一息ついているかのように見える。しかし需要はコロナ前の水準までは戻らず、今後も苦しい状況が続くと予想されるため」(メガバンク幹部)という。

その上で、「コロナ前から問題を抱えていた企業も少なくなく、コロナ禍の長期化で持ちこたえられなくなる企業が増えてくる。その結果、大口融資先問題が再来するのではないかと危機感を抱いている」(メガバンク幹部)というのだ。

くすぶる大口融資先問題

事実、水面下では大口融資先問題がくすぶり始めている。その一つが自動車メーカー大手の日産だ。

5月28日、日産自動車の内田誠社長は決算発表会見で、「未使用のコミットメントライン(融資枠)1.3兆円に加え、新型コロナウイルス対応のために4~5月にかけて7126億円の資金調達を実行した」とし、「危機に対応するためには十分な資金を保有している」と胸を張った。

ところがこの時点で、三菱UFJ銀行がその融資規模に難色を示しており、実際には実行されていなかった。関係者によれば、日産は当初、メガバンク3行と政策投資銀行(政投銀)に対し、均等に2000億〜3000億円の融資を要請していた。通常であればメインバンク、日産でいれば歴史的な経緯もあってみずほ銀行にバックアップをお願いするところなのにもかかわらずだ。

確かに三菱UFJも、「ゴーン元会長と日産の信用力を頼りに貸し込んでいた」(三菱UFJ関係者)ため、両行の融資額はほぼ一緒の並行メイン状態。そのため日産は均等に要請してきたのだが、三菱UFJから見れば、「それでもメインはみずほ。みずほが支えるべき」との意識が強い。

しかも日産は、ゴーンショックの混乱が長引く中で、稼ぎ頭だった米国事業が不振に陥っているところに新型コロナが直撃し、「貸倒れリスクが高まっている」(メガバンク幹部)。そのため、三菱UFJは難色を示していたというわけだ。

1カ月間に渡る交渉の結果、みずほが融資額の半分程度負担する線で話し合いはまとまった。とはいえ今回はあくまでもつなぎ融資。日産の構造改革計画については「甘すぎる」との声も少なくない。メガバンク幹部は、「構造改革の結果が出なかった際の対応について既にシミュレーションが始まっている」と明かす。