7月初旬、香港のハンセン指数がじわり戻りを試す展開が見られた。6月は24,000~25,000pt近辺で売り買いが交錯していたが、7月に入り26,000pt台を回復。同6日には一時26,453ptまで買われ、3月の大幅下落で開けたチャート上の窓(3/6安値:26,084~3/10高値:25,578pt)を埋め、約4カ月ぶりの高値を付けた。
その中で目立つのは、中国からの投資資金の増加。特に、6月30日に公布・施行された「香港国家安全維持法」の前後でその動きが顕著だ。
中国と香港市場の相互取引制度であるストックコネクト。このうち、通称“サウスバウンド”と呼ばれる「中国⇒香港」投資が注目されている。6月8日以降は売り越しの日がなく、資金が継続的に流入中。直近では買越額が50億香港ドルを超える日も珍しくない。香港市場(メインボード)の売買代金に占める比率は、今年4月以降は15~20%程度の日が多かったが、7月7日と13日は25%超。“チャイナマネー”の存在感が日に日に高まっている。
さて、これまでは「指数の下落局面でサウスバウンドの買越額が増える」ことが多かった(下部グラフ参照)。「下値をうまく拾う」という中国の投資家のしたたかな動きとでも言えようか。だが、7月初旬は買越額の増加と指数の上昇局面が一致していたように見える。これをもって「チャイナマネーが香港株を買い支えている」と言うのはいささか単純だが、状況証拠の一つにはなるだろう。
彼らの主な投資対象を売買代金で見ると、SMIC(00981)、テンセント(00700)、小米集団(シャオミ、01810)、美団点評(メイトゥアン、03690)など。7月15日は中国株の各指数が軒並み安となったが、ハンセン指数は0.01%高(3.69pt高)と小反発した。
その背景には、指数構成比率が大きいテンセントが3.43%上昇し、指数を約100pt押し上げたことがある。同銘柄の売買代金は約119億香港ドルだったが、そのうち約29%をサウスバウンドの投資資金が占めた。指数に影響力が大きい銘柄を中国の投資資金が買い進め、指数を後押しする――。意図的かどうかは分からないが、結果的にこのような流れとなった。
前述の法律施行を受け、香港の金融センターとしての地位低下やビジネス環境の悪化、海外への資産逃避など懸念の声が絶えない。中国側はそれらを一蹴しているものの、「海外勢の香港株売り」という万が一の事態に備えて、直接・間接的に中国の投資家に香港投資を促しているのではないか。
6月29日に唐突に明らかになった「越境理財通」(中国・香港・マカオでの金融商品の相互取引)構想も、香港住民の不満や金融市場の不安を和らげる狙いがあったのではないか。こんな見方も浮上するほどだ。様々な思惑がマーケットを動かしている。
奥山要一郎(おくやま・よういちろう)
東洋証券 上海駐在員事務所 所長
2007年入社。本社シニアストラテジスト等を経て、2015年より現職。
中国現地で株式動向のウォッチや上場企業取材などを行い、中国株情報の発信・レポート執筆を手がける。
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