“アジアのシリコンバレー”とも呼ばれる中国の深圳(深セン)は、世界から「イノベーションの都市」として注目度を急速に高めている。キャッシュレス化や無人コンビニなどテクノロジーを存分に生かした街作りが魅力的であるうえ、高い成長性も期待できる。そんな深センの今を紹介する。

深センとはどのような都市なのか

深圳
(画像=PIXTA)

深センは中国広東省南部に位置している港湾都市で、経済特区の指定を受けている。北京、上海、広州と並んで、中国本土の「4大都市」に含まれ、今や屈指の近代都市として知られている。

近郊に住む人を含めれば深セン都市圏の人口は1600万人規模になるといわれる。世界の都市に関する最新の国際調査によれば、深セン都市圏の人口規模は世界第18位となっており、大阪都市圏(1500万人規模)を上回る数字となっている。

かつての深センは近代都市という言葉とは無縁の農村地帯だった。しかし、1978年に中国政府が深センに改革開放路線を導入したことで、深センは大きな変貌を遂げることになる。

1980年には経済特区となって電子産業や機械産業などの集積が進み、その後、IT産業も大きな発展を遂げた。さらに、有望ベンチャーや有力スタートアップの誕生も相次いだことから資金流入も盛んになり、深センが「アジアのシリコンバレー」と呼ばれるようになった。

1990年に設立された深セン証券取引所も、すでに世界から注目される証券取引所となっている。

先端テクノロジーの街・深セン

ベンチャーやスタートアップを含むテック系の有力企業が多く集まる深センでは、先端技術や革新的なサービスが街のいたるところで導入されており、スマートシティ化のスピード感は他都市に比べて速いといわれている。

キャッシュレス化や無人コンビニ、顔認証、自動運転技術を活用した交通システムなど、従来のビジネスモデルやサービス体系にこだわらない街作りが進められており、中国における先端技術の「実証都市」としての役割も担っていると言える。

例えば無人コンビニでは「Well GO」や「百鮮Go」などの登場が印象的だ。無人コンビニは「Amazon Go」をはじめとして世界的に注目度が高まっており、カメラによる画像認識やスマートフォンなどを使った認証システムなど、先端技術が結集して実現している。

世界の主要都市の中でも、深センは自動運転技術の導入にも積極的だ。今年2月にはスタートアップ企業のAutoXが深センで自動運転タクシーの大規模実証をスタートさせることが発表されている。こうした実証実験は地元当局の協力なしには前に進まない。

また、新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される中で、5Gを活用した自動運転の消毒車が導入されたことも話題になった。

深センの有力企業・ベンチャーは?

深センにはユニコーン企業(時価総額10億ドル以上の非上場企業)も少なくない。その筆頭はDJI Innovationsだ。民間用ドローンなどを開発していることで知られ、2005年に創業してから15年間でめきめきと頭角を現し、今やドローンメーカーとしては世界最大手だ。

米調査会社CBインサイツによれば、DJI Innovationsの時価総額(2020年5月時点)は150億ドル(約1兆6000億円)で、シンガポールに拠点を構えるライドシェア大手グラブとほぼ同規模の時価総額となっている。

Royole Corporationも深センのユニコーンだ。CBインサイツによれば、時価総額は60億ドル(約6500億円)。同社は折りたたみ式デバイスなどを開発・販売しており、スマートフォンのほか、さまざまなヒューマンマシンインターフェイス(HMI)製品での活用が見込まれている。

また、深センには中国IT大手のテンセントが本社を構えていることで知られている。テンセントは自動運転の領域にも参入しており、「深センの自動運転タクシーといえばテンセント」と呼ばれる日がいずれやってくるかもしれない。

「市場」としても魅力ある深セン

人口の著しい増加は、そのエリアの内需を強くする。産業が集積していけば人材サービスなどを含めてさまざまなビジネスのチャンスも生まれる。こうしたことから深センは「市場」としても魅力的だ。

中国政府の強力な後押しをテコに、深センの発展はまだまだ止まらないと考えられる。一度は深センを訪れ、最先端のテクノロジーと街作りを視察してみてはいかがだろうか。わざわざ訪問する価値が今の深センにはある。

ちなみに、中国政府系のシンクタンクが2019年6月に発表した「中国都市・総合経済競争力ランキング(2018年版)」によれば、深センは前回調査と変わらずトップの座に居続けており、香港や上海よりも総合経済競争力はさらに上だと認識されている。

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