本記事は、トリ・ダンラップ氏の著書『何があっても生き抜く わたしのお金の教科書』(かんき出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
実際、投資先はどう選ぶのか?
情報をしっかりと理解したうえで、揺るぎない決断を自信を持って下すことが大切だ。とはいえ正直に言うと、ほとんどの証券会社のサイトには、投資を始めるには必要のない情報が溢れ返っている。
簡単に始められるよう、投資するファンド候補を調べる際に私が個人的に考慮するトップ3をお伝えする。もっと調べようと思ったらいくらでも調べられるが(私の父のような人は、株式市場を趣味のように捉えている)、今まさにお伝えしたとおり、儲けを出すためにそこまでする必要はない。脳の過負荷や分析麻痺を避け、とにかく始めよう。混乱しつつ泣きながらヤフーファイナンスを読む必要はない。
1.パフォーマンス
最初に見るべきは点は、その投資商品の過去数年、あるいは過去数十年のパフォーマンスだ。全体的に見て、その株式またはファンドのチャートは上昇トレンドを示しているだろうか(2008年3月〔リーマンショックへ続く金融危機〕や2020年3月〔パンデミック〕など説明可能な下落はあるにせよ)? それとも、常に価値を失っているように見えるだろうか? パフォーマンスを評価する際に、長期的に上昇傾向にあるファンドを探したい。日々の値動きは気にしない(長期投資だ、覚えているかな?)。個人的には、可能な限りの長い期間を調べる。通常はファンドの設定時にまでさかのぼって調べるが、5年以上の期間なら、一般的に有効な測定基準となる。
2.手数料
次に見るべきは、ファンドを買うのにかかる費用、とりわけ「経費率」と呼ばれるもの。昔は、ポートフォリオを自力で多様化させ、自分でファンドを作る必要があった。自分で自分のフライドチキンを作らなければいけなかったのだ。でも今では、インデックスファンドやETFが存在するので、手数料を払ってこの作業を他の人にしてもらえる。この手数料は、1口ごとの価格に織り込まれて請求されるため、請求書にわずらわされることはない。
さて、ここがちょっとやっかいな点だ。多くのファンドは、手数料として1%がかかる〔日本で投資信託を購入する場合、①購入時手数料(販売手数料:購入時に支払う)、②信託報酬(運用管理費用:保有期間中に支払う)、③信託財産留保額(解約時に支払う)などの手数料がかかる。長期投資を考える場合は特に信託報酬の低い商品選択が重要。近年はネット証券を中心に購入時手数料の無料化が進んでおり、口座を開設する証券会社の選択も重要になる〕。たいした額ではないと感じるかもしれないが、100万ドルの1%は1万ドル。かなりまとまったお金になる。
また、投資対象物を買ったり売ったりするたびに、手数料を払う必要がある可能性もある。とはいえ、この手数料を免除する投資プラットフォームは増えている。
3.保有銘柄/企業
見るべき点の3つ目は、そのファンドの保有銘柄、つまりそのファンドがどの企業に投資しているかだ。ファンドは株式のほか、さまざまな資産(債券、不動産、コモディティなど)の集まりだという話を覚えているだろうか。つまりファンドを探す際は、そのファンドを構成しているそれぞれの企業を確認したい。ポートフォリオがきちんと多様化されているようにする、つまりたった1社、あるいはテック(テクノロジー関連)、ヘルスケア、農業などたった1つの業界だけに投資しないようにする必要がある。
もしファンドの保有銘柄が1つの業界に偏っているとしても、そのファンドには手を出さない方がいいというわけでは必ずしもない。長期的なパフォーマンスが良かったり、経費率が低かったりするかもしれないからだ。この2つの要素を忘れないように! というのも、投資の際は、たった1つのファンドを選んでおしまいというわけではないからだ。多様化されたファンドを、株式市場全体から複数選ぶこともできる。そのため、テック・ファンドを買いたいなら、ポートフォリオにはテックのみの別のファンドを含めないようにすればいい。
フライドチキンがあまりにもおいしいので、またフライドチキンでたとえよう。チキンテンダーを24本、スパイシーとマイルドを半分ずつ注文したいとする。1箱に12本のスパイシー、もう1箱に12本のマイルドを入れてもらうこともできる。でももしもう1人の誰かと一緒に食べるために注文しているのなら、いちいち箱を交換し合ったり、どちらのフレーバーを何本食べたか数えたりするのは避けたい。
そこで、例えばマイルドとスパイシーを同じ本数ずつ食べたいなら、スパイシーが6本とマイルドが6本入った箱を2箱注文した方がいいかもしれない。スパイシー12本とマイルド12本を手に入れることには変わりないが、先ほどより少し多様化させたのだ。
結論:投資先を選ぶ際に私が見るのは、
- グラフは上昇傾向か。
- 手数料は低いか(たいてい0.1%未満)。
- 1つのファンド内かポートフォリオ全体で見たときに、しっかり多様化されているか。
あなたに伝えられる一番のアドバイスは何かって? 充分な情報を得たうえで迅速に判断を下し、投資を始めること(または毎月の積立額を引き上げること)。市場にお金を投じずに1日経つごとに、1日損をすることになる。恐れずに質問しよう。
何よりも、投資という名のゲームは長丁場であることを忘れてはいけない。株式市場が下落しても、売却さえしなければお金を損失したことにはならない。繰り返す。現金化さえしなければ、損はしていないのだ(得もしていないが!)。ある火曜日に株式市場に何が起きようが、30年間という枠組みにおいては意味をなさない。そのままやり遂げよう。「ファイナンス戦略」よりも大きな戦略のなかでこれがどう作用するかを知るには、ジェシカの例を見てみよう。次のような予算を立てて、2枚目のクレジットカードの借金を返済していた。
- バケツその1:必要経費に2,500ドル
- バケツその2:クレジットカードの借金返済に675ドル
- バケツその3:趣味や娯楽に825ドル
ジェシカは、クレジットカードの借金をすべて返済できたが、金利5%の学生ローンがまだ残っている。彼女は次に何をすべきだろうか? ジェシカの学生ローンの金利は、株式市場の平均的なリターンである7%より低いため、401(k)やIRAなどにできる限りたくさん積み立てることに注力した方がいい〔日本の場合なら、税制優遇が受けられるiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)への投資が該当する〕。
ここでの疑問は当然、老後に向けていくら割り当てるべきか、ということだ。
よくある誤解は、大金持ちになれば誰だって引退できるというものだ。しかしこれはまったくの間違い。引退できる数字は、人によって異なる。毎年4%を生活費として引き出すことを前提とすると、専門家がすすめる数字は、自分の1年間の生活費を合計し、25をかけたものとなる。つまり、年間3万ドルを使う場合、あなたが退職届を出し、嫌いな同僚に水をぶっかけ、二輪馬車にまたがってオフィスから陽の光の中へと飛び出していくには、75万ドルが必要ということだ。「生活費/年×25」のルールは、その年に必要なお金だけを引き出すことと、残高は引き続き利益を上げることを前提としている。また、年間インフレ率は約4%であること(残念なことにインフレ率は上がり続けている)と、年間の生活費は変わらないことも前提としている。
リマインダー:投資対象物の価値は上がる。そのため、目標額の全額をすべて自力でまかなう必要はない。リターンによって達成できるのだ。つまり、私が25歳のときに手にした10万ドルは、その後一切、積立金を入れなかったとしても、引退時には160万ドル以上の価値になっている。
この数字(25×年間生活費)が今のあなたにとってどんな意味を持つかを理解するには、「老後資金シミュレーター」を活用できる。キーワードを使ってグーグルで簡単に見つけられるが、恐らく、あなたが使っている証券口座や退職口座の業者のサイトにもあるだろう。シミュレーターを使えば、快適な老後を暮らすためには、給与から毎月何%を投資する必要があるかが分かる。毎月の積立額を引き上げると、いかに早く引退できるようになるか、驚くだろう。例えば、毎月わずか50ドル増やしただけで、予定よりも1〜2年早く引退できる。
つまり、ジェシカが学生ローンをもっと積極的に返済し始める前に取り組むべき目標としては、IRAの上限まで積み立てることだ。IRAの年間上限は6,000ドルなので、ジェシカは月500ドル、積み立てる必要がある。
忘れてはいけないのが、お金の優先リストによると、老後に向けた投資と並行して、低金利の借金も完済するべきだということ。そこでジェシカは、クレジットカードの最後の借金を完済し、退職口座の上限まで拠出したら、バケツその2の残りのお金を使って、学生ローンを早めに完済することにする。現在のバケツの配分はこんな感じだ。
- バケツその1:必要経費2,500ドル
- バケツその2:ロスIRAに500ドル、学生ローンの返済に175ドルを追加
- バケツその3:趣味や娯楽に825ドル
当面の間は、ジェシカにとってこれがちょうどいい。そこまで切り詰めずに、お金の目標を達成できる見込みだ。
当然ながら、これまで百万回ほどお伝えしてきたとおり、パーソナルファイナンスは、個人的なものだ。もしかしたらあなたにとっては、引退に備えた目標額に早く到達することが、バケツその3の金額が大きいことよりも大切かもしれない。実際に、投資額を引き上げてそこからの収入で生活することで、早期退職を目指す人たちのコミュニティもある。Financial Independence,Retire Early(経済的自立および早期リタイア)の略語から、FIREムーブメントと呼ばれている。個人的に私は、このムーブメントの前半部分である「経済的自立」により高い関心を寄せている。というのも、私は自分の会社そのものや、会社が持つ影響力が好きだし、近いうちに引退するつもりもないからだ。とはいえ、私にとって仕事は今や任意のものになっている。どういうことかというと、私は27歳にして、もし働きたくなければ、もう二度と働かなくていい状態なのだ。つまり…… 最高!
25歳で10万ドルを貯めたところで、マーケティング担当者として働いていた会社を退職。女性が家父長制から自由になり、自分の手で公正なお金を稼げるようサポートするプラットフォーム「Her First $100K」を立ち上げる(10万ドルの貯金で会社を辞める勇気を得た経験が名前の由来)。
グッドモーニングアメリカ、トゥデイショー、ニューヨークタイムズ紙、ビジネス誌「アントレプレナー」、バズフィード、CNNなど多くのメディアに登場。CNBCに「金銭的な自信を女性に与える声」と称され、これまでに300万人以上の女性たちを、給与の交渉、借金の完済、貯蓄の構築、投資でサポートしてきた。
現在は、女性のパーソナルファイナンスや起業、自信について、世界中で執筆や講演を行っている。シアトル在住。
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