本記事は、トリ・ダンラップ氏の著書『何があっても生き抜く わたしのお金の教科書』(かんき出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
お金との対話「マネーデート」のすすめ
私の親友のクリスティーンは、彼氏と一緒に2人の関係について話し合う時間をスケジュールに組んでいる。どちらかが出勤する5分前にいきなり感情的な問題をぶちまけたり、解決しないまま悪化させたりする代わりに、事前に決めておいた時間に腰を落ち着けて、2人の関係の現状について気軽に言葉を交わすのだ。ちょうど、(愛情の)人事考課のようなもので、今後も続けたいのは何か、どうすればお互いをもっと支え合えるのかを話し合う。全身全霊で相手に意識を向け、相手を大切にするパートナーでいるための、すばらしい習慣だ。どんなぶつかり合いも解決し、自分たちの関係を称えるべく、一緒に取り組む。そもそもこの時間をわざわざスケジュールに組むという事実だけで、2人がオープンなコミュニケーションを通じて、関係を向上させることにいかに真剣であるかが分かる。
私たちはこれを、お金に対して行う。
マネーデートとは、お金のセルフケアを実践するための絶対に譲れない時間だ。人との付き合いとまったく同じように、私はお金を相手に腰を落ち着けて対話をする。お金に、こう尋ねる。「この関係において、私が改善すべきことは何? お金の目標を達成するために、私がうまくやっていることと改善すべきことは何? 私はお金の使い方を、よく考えたうえで意識して決断している? 成功(そして昇給)に向けて、私は一生懸命働き、正当な報酬を受け取っている? “現在の自分”と同じくらいに、“未来の自分”にも投資している? 今の私の習慣は、私が望むライフスタイルに沿ったものになっている?」
そして、お金にも同じことを求める。お金は、私のために一生懸命働いてくれている? どこかのクレジットカードが、お得な新規契約特典のキャンペーンをしていない? 値下げの交渉ができる請求書はある? キャンセルした方がいいサブスクは?
マネーデートは、確実に目標を達成したり、ときには目標を設定し直したりするために活用する。また、お金と親密に過ごす時間を作るのは、目標に向けた進捗を確認するためでもある。自分に拍手を送り、「先月は借金を1,000ドルも返した!」とか「投資が500ドルも上がった!」などと言うためだ。
お金のことをいったん整理整頓すること自体、かなりの成果だ。とはいえ、お金が整理された状態を長く保つには、一貫して続けること。たった1回ランニングしたり、たった1個のブロッコリーを食べたからといって、急に今後ずっと健康でいられるわけではないのと同じで、お金の健康は真剣に取り組んでこそ実現できる。
自分のお金を批判的に見直すという考えが怖いと感じたとしても、それは決してあなただけではない。そのため、マネーデートはできるだけ取り組みやすいものにしたいと思う。楽しみにするような何かにしよう。私の場合、ウイスキーをグラスに注ぎ、布団にくるまり、ご褒美の先取りとして大好物のカレーのテイクアウトを用意する。どのセルフケアとも同様に、これは自分への愛の行為であり、心地のいい「デート」っぽい感じにしよう。そう、私はよくキャンドルに火を灯しもする。セクシーにいこう!
もしパートナーと一緒にお金を管理しているなら、この時間を文字どおりデートにしよう。腰を落ち着け、振り返り、目標を定めるための時間だ。2人が望む人生を一緒に築き上げるためのツールとして、お金を使おう。
マネーデート中にやること
マネーデート中には、いくつかやることがある。
第一に、支出を確認する。そのため、クレジットカードやデビットカードの明細書を準備しよう。確認する点は、ほとんど使わずに忘れていたサブスク、詐欺、見覚えのない請求、二重請求。マネーデートの一部は、使わないサブスクをキャンセルし、詐欺を通報し、買ったのに使わないものの返品手配に充てることになる。
この時間はまた、自分が買ったもののチェックにも使う。マネーダイアリーを覚えているだろうか。そこでは、買ったものが自分に喜びをもたらしているか否かを分析し、ライフスタイルやお金の目標についてじっくりと考えた。マネーデートでは、マネーダイアリーのミニ版に取り組むが、ここでは過去に買ったものを振り返る。クレジットカードの明細書の項目を一つひとつ確認しながら、それぞれに対して今はどう感じるのかを自問するのだ。「あのレストランでの食事、最高だったな」かもしれないし、「このコート、買って以来ほぼ毎日着ているな」かもしれない。一方で、「これ何だったか覚えてすらないよ」とか「イヤなことがあった日のコスメの爆買い、ダメだなぁ」と思うものもあるかもしれない。いつもと同じように、この作業は自分を批判したり恥に思ったりせずに行おう。淡々と支出を分析し、よく考えたうえで支出を決めた自分を褒め、必要であれば後悔から学ぶ。
マネーデートでやるべきことの2つ目は、目標に対する進捗の確認だ。お金の面ですべてが実現したら、どれだけ違う人生になるかを思い描くようお願いした。そして、「お金の優先リスト」を使い、気分が良くなる、お金に関する具体的な目標を設定した。
- 第一歩としての非常用資金(生活費3カ月分を高利回り貯蓄口座に貯金〔日本の場合、普通預金または積立預金口座を活用したり、個人向け国債の購入を検討する選択肢もあるだろう〕)。
- 高金利の借金を返済。
- 低金利の借金を返済しつつ、老後に向けて投資。
- 大きなライフイベントに向けて貯金。
ここで、自分が目標の道のりのどこにいるかを知るために、口座すべての残高を確認する。預金口座、貯蓄口座、借金などの情報を準備しよう。もし会社の確定拠出年金に入っているなら、退職口座の積立金をよりきちんと理解するために、明細書を確認するといいだろう。
もしあなたが今、非常用の資金を貯める努力をしている段階なら、毎月の積立額を設定しているだろうか? あるいはすでに非常用の資金を貯めたなら、確定拠出年金に充分な金額を拠出しているだろうか? 高金利の借金はどうだろうか? 完済に向けた計画はあるだろうか? その他、例えば家の購入、子どもを持つ、事業の立ち上げなど、大きなライフイベントの目標についてはどうだろうか?
目標の進捗を確認する最初の部分は、数字をベースにする。それぞれの目標にいくら割り当てたかを確認するのだ。ただしここは、自分の目標に改めて感情面でつながる時間でもある。やる気になったり、ワクワクしたりするかもしれない。その感情はどう保つ? あるいはもっと可能性として高いのは、目標と距離を感じるかもしれない。借金の額がまだこんなにあるのかと挫折感を味わい、しかも株式市場が下落し、積立金は果たして価値があるのだろうか? と思うかもしれない。そもそも非常用の資金がなぜ必要なのかもよく分からないし、ここを飛ばして、パリ旅行の貯金をさっさと始めたらなぜダメなの? と思うかもしれない。
25歳で10万ドルを貯めるという私の目標で大切だったのは、そう、10万ドルという数字を見ることだった。私はかなり数字を重視する人なのだ。とはいえ、次の仕事が決まっていないのに有害な職場を去らなければならなかったとき、10万ドルの目標を諦めることを考えた。収入が一切ないばかりか、非常用の資金を切り崩し、まったく貯金もできていなかった。でも、10万ドルが私にとって、私の人生にとって、私が手に入れたいものにとって、どんな意味を持つかを考えた。答えは、リスクがあると思える決意をあえて選べるだけの経済的な柔軟性だった。その決意とは、会社員を辞めて自分のビジネスを本業にすること。そして、自分が情熱を持って取り組め、どこかの会社の純利益ではなく自分の成功に直接的な影響をもたらす仕事をすることだ。好きなときに好きなところへ旅行できるようになる。人の人生を変え、人に仕事を与え、世界的なムーブメントを起こせるようになる。これらは、数字よりもっとずっと私にとって大切だった。
つらくなって、ストレスや不安を感じたり、落胆や敗北を感じたりしたときには、自分なりの「理由」とつながることが必要だ。自分の目標(プラスして、より重要である、その目標を作り出した理由)に立ち返り、前進するためのモチベーションとしてそれを使おう。
月の目標額が達成できなくてもいい。お金を使いすぎる日や、まったく貯金ができない月だってある。借金を抱えなければならないときもある。私の名前をののしりながら、このまま続けられるのだろうかと思い悩む時期も、人生にはあるだろう。普通のことだし、大丈夫。私たちは完璧を目指しているわけではない。前進を目指しているのだ。目標は、常に上向きに動くことではなく、一貫して進むこと。そして、思うようにならなくても理解を持って受け入れ、学べることを学び、前進を続けることだ。
たとえ着実に進んでいたとしても、目標について自分がどう感じているか、正直にじっくり考えるといい。クレジットカードの借金を年内に完済すると決めたものの、あまりにも生活を切り詰めているように感じたら、緩めるべきときかもしれない。短期間で完済しようとして、惨めになって燃え尽きてしまい諦めるくらいなら、3カ月長くかかった方がいい。着実に進んでいて、毎日の支出にも満足なら、ハードルを少し高くし、バケツその2に充てる額を増額してはどうだろうか?
マネーデートの3つ目であり最後のパートは、計画と最適化だ。自分の目標を振り返り、改めてつながった今、どこを微調整したらいいだろうか? お金の目標にもっと資金を回せるとか、積立預金への自動振込額やクレジットカードへの支払い、あるいは投資額を増やせるタイミングだと思ったかもしれない。または、自分と同程度の経験を持った同僚が、自分より多く稼いでいることを最近知ったので、給与の幅について調査する時期なのかもしれない。あるいは、お金の優先リストの1つを達成したので、今こそ次のチャレンジに向かうときだろうか。
また、このタイミングを使って、これまでずっと後回しにしてきたけれど、もういい加減とっととやるべきお金のタスクを片づけよう。例えば20分を使って、積立預金口座や証券口座をようやく開設するとか、確定申告を済ませる(面倒!)などだ。
次は、最適化。あなたのニーズには、別の銀行口座の方が適しているだろうか? フリーランスの仕事の単価を引き上げる必要はあるだろうか? 確定拠出年金への毎月の拠出額を、数%ポイントだけ増やせるだろうか?
最後に、来月の計画をはっきりさせよう。このマネーデートで得た知見に基づき、何を変える? 新しい予算はいくら? 支出についての考えは? 次回のマネーデートまでに実行できる、3つのアクションを自分に課そう。
マネーデートが終わったら、大切なのは、次回のデートを予定に入れることだ。私の場合、マネーデートは土曜の夜にしたい。冗談抜きで、カレンダーに書き込んでほしい。絶対に変更できない予定にしよう。少なくとも毎月行うべきだが、特定の目標を追いかけていたり、金銭的に厳しい状況にいたりするのなら、もっと頻繁にしよう。事業主として常にベストな状態でいなければならない私は、個人のお金と事業のお金を毎週確認しつつ、目標を設定するためのもっと大がかりなマネーデート(こちらも個人と事業の両方)を月1回行っている。
人生は、とんでもなく忙しくなるときもある。独身にせよパートナーがいるにせよ、そんなときは腰を落ち着けてお金をきちんと確認する暇などないと感じてしまうかもしれない。これに抗うために、具体的な時間と日付を設定しよう。マネーデートを義務にするのだ。
25歳で10万ドルを貯めたところで、マーケティング担当者として働いていた会社を退職。女性が家父長制から自由になり、自分の手で公正なお金を稼げるようサポートするプラットフォーム「Her First $100K」を立ち上げる(10万ドルの貯金で会社を辞める勇気を得た経験が名前の由来)。
グッドモーニングアメリカ、トゥデイショー、ニューヨークタイムズ紙、ビジネス誌「アントレプレナー」、バズフィード、CNNなど多くのメディアに登場。CNBCに「金銭的な自信を女性に与える声」と称され、これまでに300万人以上の女性たちを、給与の交渉、借金の完済、貯蓄の構築、投資でサポートしてきた。
現在は、女性のパーソナルファイナンスや起業、自信について、世界中で執筆や講演を行っている。シアトル在住。
※画像をクリックするとAmazonに飛びます。
