本記事は、トリ・ダンラップ氏の著書『何があっても生き抜く わたしのお金の教科書』(かんき出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

何があっても生き抜く わたしのお金の教科書
(画像=Asimabbas/stock.adobe.com)

予算組みは、お金を使うための通行手形

「予算」という言葉は、制約と関連づけられることが多い。保守的なお金の専門家が「予算を設定しなきゃダメ」と言うとき、それは常に、浪費だと思われるようなお金の使い方に対する言葉だった。「浪費」とは、あなたを辱めるための女性嫌悪的な言葉にすぎない。

予算組みといっても、切り詰めるわけではない。こんな暮らしはイヤだと思わせるものでもない。むしろ実際は、解放感を味わえる。本当だよ! 罪悪感を抱きながらお金を使うのではなく、言いわけや正当化などせずに大好きなものにお金を使うことに集中できるようになる。予算組みとは、お金を使っていいという許可証なのだ

予算とは、車の燃料計のようなものだ。ガソリンがどれだけ入っているか確認せずに、車を運転することはないだろう。同様に、口座にいくら入っているかを知らずに、お金を使いたくはないはずだ。きちんと帰宅できると分かったうえで、ドライブを楽しみたい。お金を使い果たしたり借金したりしないと分かったうえで、楽しんでお金を使いたい。解放感を味わえるし、不確かさから来るストレスや不安が減るので、お金を使うのがもっと楽しくなる。お金の面で自分を大切にしていないという罪悪感を回避する役にも立つ。月末に銀行口座を見て、貯金に回すだけのお金が残っていないと気づいたときの落ち込みをもう感じなくてもすむ。金銭的な健やかさと心を満たしてくれるモノ、そのどちらもきちんと考慮するということだ。

予算を組むと考えるだけで吐き気がしてしまうなら、次を思い出してほしい。

  1. いかなる意味においても、私は切り詰めることがいいこととは思わない。
  2. 私が独自の予算システムを作ったのには理由がある。他の方法ではうまくいかなかったからだ。

なぜ私が独自の予算システムを考えたか、説明しよう。予算アプリだ。アプリは必要以上に細かくカテゴリー分けをさせ、お金をつぶさに記録するよう求めてくる。映画を観に行かない月が3カ月続いた翌月に3回観に行ったら、このカテゴリーの上限を超えたとアプリに叱られる。「好きなように生きさせてよ!」と思ってしまう。

使ったお金をいちいちすべて記録したくもなかった。他にやりたいことはもっとあるから(ユーチューブでコメディ番組を見るとか…… 同じ番組、これで12回目だけど)。それに、予算を組むのにアプリやスプレッドシートに頼りたいなんて絶対に思わなかったから(もしあなたがしたいならそれでいいと思う。パーソナルファイナンスは個人的なものだから)

そこで私は、ずぼらな予算組みの方法を思いついた。その名も、「3つのバケツ予算」(ここで、水分補給ができるゲームをしよう。私が“予算”と言うたびに水を一口飲むこと。水の代わりにお酒にしてもいいけど、恐らくこのページを読み終わる前に酔いつぶれてしまうので、お酒バージョンはおすすめしない)。「3つのバケツ予算」が目指すところは、金銭面でまずは自分の面倒をしっかり見つつ、罪悪感を抱かずにお金を使えるようになること。フレキシブルで調整可能なうえ、すべてうまく収まるために必要なタスクはたった1つだ

バケツその1
最低限の必需品

バケツその1は、あなたにとっての必要経費だ

食べて、寝て、息をし、動き、生きるために必要なすべてだ

バケツその1は、「現在の自分」が毎月必要なものであり、家賃/住宅ローン、保険料、食費、ローンの支払い、水道光熱費など、失業した場合でも外すことができない、生活に絶対必要なものがすべて含まれる。そう、スポティファイのサブスクをキャンセルするくらいなら左手を切り落とした方がましなくらいだけど、私の人生に絶対必要なものではないので、これはバケツその1には入らない。

「欲しいもの」と「必要なもの」の境界線の曖昧さについて触れた。そのため現時点では、あなたがこのバケツに入れるものは、人生に必要だと自信を持って言えるものであると、私は信じている。バケツその1は、これを払わなかったら「手数料を請求されたり、大変なことになる」ものだ。例えば、毎月の自動車ローンや学生ローン、住宅ローン(または家賃)といった借金の返済が含まれる。クレジットカードを持っているなら、カードの請求額をすべて支払うことも含まれる。もしそれが不可能で、今は前の借金を返済しているところであるなら、少なくとも「最低支払額」が含まれる(でも本当のところは、残高のうち可能な限り返済できる額)

お金の優先リストのうち、こうした支払いは「お金の優先事項その0」になる。請求書の金額を支払うことと生きながらえることは、常に優先させるべきだ。自分を支えることにまずはお金を使わないと、貯金や借金の返済などできない。

バケツその2
目標

バケツその2は、お金に関する目標だ

これには、「ファイナンス戦略」の目標に向けて貯めるお金が含まれる。つまり、非常用の資金、通常の支払いより優先しての借金の返済、老後に向けた投資、ライフイベントに備える貯金だ

バケツその2のお金は、あなたが「ファイナンス戦略」のどこにいるかに応じて、普通預金口座、投資、借金勘定のどこかにあることになる。

バケツその1の毎月の借金返済に加え、バケツその2のお金も、借金を早く完済するために使うことができる

バケツその2では、「過去の自分」と「未来の自分」の面倒を見る。人生にすてきなものを取り入れたので借金を抱えた「過去の自分」と、人生にすてきなものを取り入れるために貯金をしている「未来の自分」。バケツその2は、お金の面でセルフケアをするためのバケツなのだ。

バケツその3
自分にご褒美

前述以外はすべて、バケツその3に入る。

これは、お楽しみのカテゴリーだ。外食、バカンス、新しい服、スポティファイのサブスク、観葉植物を生き返らせる(私が夢中になっているもの)、コーヒー、その他、人生に必要ではないものの、生きる価値を与えてくれるものだ

前章で、価値カテゴリーについて話したのを覚えているだろうか? 最大の喜びをもたらしてくれ、楽しいことに使えるお金のほとんどを費やしたい、人生における3つのカテゴリーだ。バケツその3は主に、あなた自身の3つの価値カテゴリーからなるべきだ。繰り返すが、お金は意識しながら使おう。そのため、バケツその3のお金の大部分は、自分が大切にする価値やモノに沿うべきだ

ということで、私の3つの価値カテゴリーは、旅行、外食、住環境であり、バケツその3のお金は主に、この3つに費やされることになる。またそのお金は、仕事が大変だった日にはコンサートのチケット、新しい靴、センスのいいシャンパンに使われることもある。

何があっても生き抜く わたしのお金の教科書
トリ・ダンラップ(TORI DUNLAP)
世界的な知名度を誇るお金の専門家であり、ビジネス・ポッドキャスト人気ナンバー1の「ファイナンシャル・フェミニスト」の司会を務めている。
25歳で10万ドルを貯めたところで、マーケティング担当者として働いていた会社を退職。女性が家父長制から自由になり、自分の手で公正なお金を稼げるようサポートするプラットフォーム「Her First $100K」を立ち上げる(10万ドルの貯金で会社を辞める勇気を得た経験が名前の由来)。
グッドモーニングアメリカ、トゥデイショー、ニューヨークタイムズ紙、ビジネス誌「アントレプレナー」、バズフィード、CNNなど多くのメディアに登場。CNBCに「金銭的な自信を女性に与える声」と称され、これまでに300万人以上の女性たちを、給与の交渉、借金の完済、貯蓄の構築、投資でサポートしてきた。
現在は、女性のパーソナルファイナンスや起業、自信について、世界中で執筆や講演を行っている。シアトル在住。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます。
何があっても生き抜く わたしのお金の教科書
  1. 銀行口座を見るのが怖い人へ、お金の不安を消す“現実直視”のファイナンス習慣
  2. 予算は“我慢”ではなく自由の通行手形、お金を解放する「3つのバケツ戦略」
  3. 借金は“応急処置”では消えない、三種の神器を正しく使うためのファイナンス戦略
  4. 投資先を見極める人が必ず押さえる“3つの視点”、迷わず選ぶための思考法
  5. お金と向き合う人がしている“3つの対話術”、マネーデートが人生を変える理由
ZUU online library
(※画像をクリックするとZUU online libraryに飛びます)