本記事は、トリ・ダンラップ氏の著書『何があっても生き抜く わたしのお金の教科書』(かんき出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

何があっても生き抜く わたしのお金の教科書
(画像=beeboys/stock.adobe.com)

「借金の応急処置」三種の神器

「借金の応急処置」の三種の神器について話そう。残高の移動、ゼロ金利、借金の一本化だ。これらはどれも、破滅の道へと至る危険性を秘めている。効果を発揮するのは、①計算が合い、②借金の返済計画があるときだけ。それぞれについて情報を提供するが、個人の状況によるので、自力で詳しく調べてほしい。

残高の移動とは、借金を今より低い金利のところへ移動させること。例えば、1万ドルの借金を金利25%のクレジットカードから18%のクレジットカードへ移動させて、借金が膨らむスピードを抑える。別の戦略としては、「最初の○カ月はゼロ金利を提供」といって新規顧客を呼び込んでいる新しいカードにお金を移動させることだ。これは借金にとってありがたい「一時停止ボタン」となる可能性もあるのだが、効果があるのはやはり返済計画があればの話だ。借金を完済する戦略もなく、金利が発生するときまで単に返済を遅らせる(または、本来は手が出ないものをゼロ金利を口実に買う)のは、賢明な判断とは言えない。とはいえ、時間稼ぎのためにこのツールを使うことは可能だ。その間に借金完済の計画を練り、実行に移そう

最後に、借金の一本化がある。読んで字のごとく、複数の借金を一つにまとめて一つの金利にすることだ(通常は、今払っているものよりも低金利のものにまとめる)。ただしこれもまた、借金を完済するための計画が実際にあり、計算が合う場合にのみ効果を発揮する。例えば今、借金を3つ抱えているとしよう。各借金の金利は平均で15%だが、それをすべて、金利12%の借金にまとめる。その方がいいように聞こえるかもしれないが、前述のとおり、金利は方程式の一部でしかない。ローン期間が長くなったら? 2年ローンだったものが今や5年ローンになったら? 低い金利のおかげで利息は一時的に減るかもしれないが、期間が延びた場合、長い目で見たら結局支払額は多くなる可能性がある。

これを念頭に、一緒に計画を立てよう。

ステップその1
「金利は実際どれくらいか」を知ること

利息が何かをきちんと理解していないからにせよ、現実逃避をして見て見ぬふりをしたいからにせよ(どちらの反応も理解できるしまったく正常)、このステップを避ける人は多い。しかしそれが何かを知らずして、先に進むことはできない。

金利を確認する一番簡単な方法は、毎月の明細書を見るか、ローン会社のオンラインプラットフォームにログインして、そこで確認することだ。カスタマーサービスに電話をかけて聞いてもいい。

自分の借金の金利は知っていると思っていても、確認することをおすすめする。なぜなら、クレジットカードの申し込み時は、将来的に支払うことになる金利よりも好意的な数字で誘われることが多いからだ。

ステップその2
すべての借金について残高を確認する

2つ目のステップは、絆創膏をはがすのに少し似ている。まずはワインでも用意して、残高を確認しよう。すべての借金についてだ。その数字をスプレッドシートかノート、あるいは好きなアプリがあればそこに記録するのもいいだろう。

ではここから、借金を2つの方法で整理していく。1つ目は金利、2つ目は現在の残高だ。

チェイス・フリーダム・カード:金利22%、残高6,275.92ドル
バンク・オブ・アメリカ・カード:金利16%、残高4,679.00ドル
学生ローン:金利4.5%、残高45,670.00ドル


できたかな? これで現状が分かったので、先へ進めよう。

これから私たちは借金を積極的に返済していくが、さらなる借金、特にクレジットカードのものを抱えないことはとても・・・重要だ。言い換えれば、非常用の資金は非常時のためであり、クレジットカードはそうではないということ。だからこそ、万が一何かが起きたときのために、最初に非常用の資金を蓄えた。穴から脱出しようとしているのに、同時にその穴に自分で砂を入れているのなら、脱出はとんでもなく困難になる。支払えないものにクレジットカードを使わないよう、できる限りの手を尽くすべきだ。今日からあなたは、「期日に全額」クラブの会長だ

このリストができたら、金利が高い借金から返し始める(アメリカに住んでいる場合は7%を超えるものすべて)〔日本に住んでいる場合は自分が運用できると思うリターンを超える金利の借入すべて〕。前述の例でいうと、チェイス・フリーダム・カードとバンク・オブ・アメリカ・カードだ。

「待って、トリ。金利7%を超える借金が複数あったらどうするの?」

いい質問だ。

先ほどの例を見てみよう。1つのカードは金利22%で6,000ドル以上を借りていて、もう1つのカードは金利16%で残高は4,000ドル超だ。どちらを先に返済すべきだろうか? 単純計算で考えると、一番利率が高いものから返済していくべきだ。つまり、チェイス・フリーダム・カードだ。

ただし、モチベーションを持ち続けて前進するために進捗を目にしたいと思うのなら、結果を手にしやすいものにしよう。つまり、残高の少ないバンク・オブ・アメリカ・カードだ。パーソナルファイナンスは、そう、個人的なものだから、自分にとって正しいと感じるものを選ぼう。

エネルギーを注ぐためどれか1つを選ぶ必要があるが、どうか、どのクレジットカードの借金でも、少なくとも最低支払額だけは絶対に払うのを忘れないようにしてほしい。また、どちらも同時に積極的に返済しようとか、2つの借金の返済に全財産を割り振るなんてことがないようにしてほしい。これだといっぱいいっぱいになってしまうし、カードの返済に余計うんざりしかねない。

ステップその3
非常用の資金を高金利の借金返済に充てる

お金の優先リストに従い、非常用の積立預金口座には今、しっかりと3カ月分の生活費が入っている。そこで、非常用の資金に配分していたお金を、今度は高金利の借金の返済に充てる。非常用資金を貯めたときと同じように、月に100万ドルも充てる必要はない。「塵も積もれば山となる」だ。

完済までにどのくらいの期間がかかるかを割り出すには、借金返済計算機を使おう。金利、残高、毎月の返済予定額を入力するだけでいい。支払額を増やすことで、返済期間を短縮できるか、簡単に数字をいじって割り出せる。見つけるには、「返済シミュレーション」などでググってみよう。

ジェシカを覚えているだろうか? 手取り(税引き後)の月給が4,000ドルで、予算はこんな感じだった。

  • バケツその1:必要経費2,500ドル
  • バケツその2:積立預金口座に非常用資金として送金する625ドル
  • バケツその3:趣味や娯楽に875ドル

1年後、ジェシカの積立預金口座には、非常用の資金として必要な8,100ドルが入っている。ということで、今度は借金の返済に取り組むときだ。残高は、1つのクレジットカードが金利22%で6,275.92ドル、もう1つが金利16%で4,679ドルだ。

ジェシカはここでどうするだろうか? 借金返済シミュレーションを使い、バケツその2に充てる額を月150ドル増やせば、6,275.92ドルのクレジットカードを9カ月ほどで完済できると知り、その価値があると判断した。ということでジェシカは、今後9カ月の予算を次のように組み立てる。

  • バケツその1:2,500ドル
  • バケツその2:クレジットカードの借金返済に775ドル
  • バケツその3:725ドル

1枚目のカードが完済できたら次は、借金返済シミュレーションを使い、金利16%の4,679ドルを完済するための計画を立てる。775ドルの支払いをそのままにして早めに完済することもできるが、1枚目のカードの返済でがんばったので、少し楽しいことにお金を回してもいいだろうとジェシカは判断する。今度は毎月100ドルをバケツその3に入れれば、返済期間は若干長くなるが、それでもいいと思えた。ということで、アクセルを少しだけ緩めることにする。

  • バケツその1:2500ドル
  • バケツその2:675ドル
  • バケツその3:825ドル

借金は、こうして完済する。最初の借金がなくなったら、次の借金へと移る。そしてそれが終わったら次へ。すべて完済するまでこれを繰り返す。

繰り返すが、方法そのものは複雑ではない(元金に向けて払う)。つまずく可能性があり、実際につまずくであろう点は、「一貫して払い続ける」ことだ。だからこそ、自分にぴったりの戦略を見つけて、必要なら調整することが大切となる。

借金をすべて消し去ってくれる魔法の杖など存在しない。大変な努力が必要なのだ。だからこそ、自動化する。そうすれば、「えっ、もう支払う期日?」と思うときでさえ、自動で行われる。

借金の返済は、孤独に感じるかもしれない。でもあなたはひとりではないし、私があなたをサポートし、応援していることを忘れないでほしい。

何があっても生き抜く わたしのお金の教科書
トリ・ダンラップ(TORI DUNLAP)
世界的な知名度を誇るお金の専門家であり、ビジネス・ポッドキャスト人気ナンバー1の「ファイナンシャル・フェミニスト」の司会を務めている。
25歳で10万ドルを貯めたところで、マーケティング担当者として働いていた会社を退職。女性が家父長制から自由になり、自分の手で公正なお金を稼げるようサポートするプラットフォーム「Her First $100K」を立ち上げる(10万ドルの貯金で会社を辞める勇気を得た経験が名前の由来)。
グッドモーニングアメリカ、トゥデイショー、ニューヨークタイムズ紙、ビジネス誌「アントレプレナー」、バズフィード、CNNなど多くのメディアに登場。CNBCに「金銭的な自信を女性に与える声」と称され、これまでに300万人以上の女性たちを、給与の交渉、借金の完済、貯蓄の構築、投資でサポートしてきた。
現在は、女性のパーソナルファイナンスや起業、自信について、世界中で執筆や講演を行っている。シアトル在住。

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