不動産投資を検討する上で、やはり少子化問題が気になるという方も多いと思います。不動産投資は1つの建物で40~50年間に渡り収入を得ることになるため、長期的な動向をしっかりと意識していくことが重要です。
少子化問題は、今後も長期的に続く日本の動向となります。では、少子化問題は不動産投資市場にどのような影響を与えるのでしょうか。
そこでこの記事では「少子化問題と不動産投資市場」について解説します。
少子化で鮮明になる東京の優位性
少子化によって、日本全体の人口は2008年をピークに減少傾向が続いています。人口減少は、実は東京一極集中を加速させる原因となっています。
少子化問題と東京一極集中は、別の問題のような気がしますが、実は切っても切れない関係にあります。
東京への人口集中は今に始まったことではありません。明治時代になって以降、人の移動が自由になってからは東京への人口移動は続いています。
ただし、国内の人口が増加していた時代では、地方には人口の自然増がありました。そのため、人口移動による人口の社会減があっても、人口の自然増が補っていたため、東京一極集中の問題は顕在化しませんでした。
ところが、現代、地方では人口の自然減と社会減が二重に発生しています。加えて、東京には圧倒的な人口の社会増が生じているため、地方と東京の差は年々開いてきているのです。
そのため、少子化問題と東京一極集中は別の問題ではなく、同時に発生している同じ問題となっています。
国立社会保障・人口問題研究所によると、東京都の人口と国内に占める東京都の人口割合の予測は以下の通りです。
東京都の人口は2030年にはピークを迎え、その後減少していくことが予想されています。東京でもあと10年程度でピークアウトしてしまうので、東京の人口減少も意外と早く訪れます。
一方で、日本全体の人口の中で東京都民の占める割合は2045年になっても増加し続けていくことが予想されています。絶対数は2030年に縮小しても、東京一極集中は続くため、日本人における東京都民の割合は増え続けていくのです。
そのため、東京の優位性は今後もますます鮮明になっていくことが予想されます。
東京都は、世帯数も家族構成によって異なる変化が予想されています。同じく国立社会保障・人口問題研究所によると、東京都の「夫婦と子から成る世帯」と「単独世帯」の予測は以下の通りです。
東京都は、ファミリー世帯に関しては2025年にはピークを迎え、その後は減少していきます。それに対して単身世帯は2035年まで増加していく見込みです。東京都の全体の人口は2030年がピークでしたが、単身世帯を見ると2035年にピークがあります。
東京は今後も一人勝ちが続くため、「東京都の単身世帯」は不動産投資の中で最も有望な市場といえます。
立地が絞られることで広がる価格差
東京の一人勝ちが鮮明になるほど、ある意味、「投資すべきエリアは東京」というわかりやすい構造が生まれます。不動産投資のプロはもちろん、初心者や海外投資家までが東京の不動産に投資をするようになっていきます。
以前なら、国内でも大阪や福岡といった投資の選択肢も十分に考えられました。しかしながら、少子化でも東京一極集中が加速しているため、地方都市の不動産投資は以前よりもリスクが高くなっています。
東京以外へのエリアの投資リスクが高まれば、投資マネーが東京に集中していきます。すると、東京の物件に対する需要がひっ迫するため、都内の不動産価格はますます上昇していくことが予想されます。
ここで、地価公示の平均価格より東京の地価の大阪地価に対する倍率の推移を示します。
過去20年の推移を見ると、東京地価の大阪地価に対する倍率は上昇傾向にあります。2000年当時は、東京地価は大阪地価の1.97倍でした。ところが2020年には、東京地価は大阪地価の3.45倍にもなっています。
既に東京と地方の土地の価格差は広がり始めており、今後も東京は多くの投資家から注目される都市となっていくのです。
相続税対策はますます東京が有利となる
東京一極集中によって東京の地価上昇が続くと、相続税対策はますます東京が有利となっていきます。
相続税対策は、時価と相続税評価額とのギャップが大きな資産を持つほど効果的です。相続税は、相続時に被相続人が保有していた財産の相続税評価額を元に計算されるため、相続税評価額が低いほど節税ができます。
例えば、現金は1億円を持っていたらそのまま相続税評価額が1億円となるため、特に相続税の節税効果がありません。一方で、不動産は時価が1億円でも相続税評価額が3,000万円とか、5,000万円といった小さな評価額となるため、相続税の節税効果があります。
不動産の中でも、賃貸マンションのような収益物件は、時価よりも相続税評価額が低いため、相続税の大きな節税効果があります。
ただし、同じ収益物件であっても、実は都内の物件と地方の物件では、都内の物件の方が節税効果は高くなります。その理由は、地方の物件よりも都内の物件の方が時価と相続税評価額のギャップが大きいからです。
東京と地方において、時価と相続税評価額のギャップに差が現れるのは、地価公示と時価との価格差にカラクリがあるためです。
土地の相続税評価額を決める相続税路線価は、全国どこでも地価公示価格の80%程度となっています。
地価公示価格は、建前上、時価という扱いになっていますが、実際には時価よりも低いことが一般的です。その差は、地方では時価の地価公示の100%~110%程度です。それに対して、都内では時価は地価公示の150%~200%程度となることもあります。
時価と地価公示価格との差は都市部ほど大きいというのが特徴です。地価公示価格は、固定資産税等の地方税の税収を決める重要な価格であるため、やたらと変動させるわけにはいきません。
地方の場合、地価公示価格を大きく下げると税収が減ってしまうため、下げにくいという事情があります。一方で、都内の場合、地価公示価格を大きく上げると納税者からの反発が大きくなるため、上げにくいという事情があります。
地方の地価公示価格は下げにくく、東京の地価公示価格は上げにくいことから、時価と相続税路線価とのギャップは東京の方が大きくなっており、結果的に東京の物件は相続対策として有利になっているのです。
おすすめの物件の選び方
今後、不動産投資をするなら、やはり都内の単身者向け賃貸住宅がおすすめです。少子化でも東京一極集中が加速しますので、東京の人口の社会増は当面続きます。中でも単身世帯の増加傾向は長期に続きますので、単身世帯向けの賃貸住宅が底堅いといえます。
時価と相続税路線価とのギャップは、都市部ほど高くなりますので、東京23区内でも住宅地として人気の高いエリアを選ぶべきです。例えば、23区内でも城南地区の方が城東地区よりも地価が高く、結果的に時価と相続税路線価とのギャップが広がっています。
相続対策も鑑みるなら、都内でもエリアを細かく分けて、なるべく人気の住宅街を選ぶようにしましょう。
まとめ
以上、少子化問題と不動産投資市場について解説してきました。
少子化問題と東京一極集中は、切っても切れない関係です。少子化によって東京の一人勝ちは鮮明になってきており、東京の地価と地方の地価との差は開きつつあります。
東京の地価上昇は、時価と相続税評価額のギャップを広げているため、東京は相続対策においても有利なエリアです。
これからの不動産投資は、少子化問題があるからこそ東京に投資すべきといえます。
都内の単身者向け賃貸住宅を中心に、物件を選んでいくことをおすすめします。(提供:税理士が教える相続税の知識)