米国ワシントン州に本拠地を構える多国籍企業Amazon社。その事業がビジネスや経済、社会に与える影響を表す造語として、「アマゾン・エフェクト(Amazon Effect)」という言葉がすでに生まれているが、ロックダウン(都市閉鎖)による売上高の爆発的な成長や自動運転車市場参入を機に、「アマゾン帝国(Amazon Empire)」の影響がますます色濃くなっている。

いずれ米国が、そして世界中が「アマゾン帝国」となる日は到来するのか?同社の動きとともに、現在までのアマゾン・エフェクトを振り返ってみよう。

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(画像=metamorworks/PIXTA/ZUU online)

ベゾス氏は設立当初から「テクノロジー企業」を目指していた

Amazonの歴史は、元ウォール街のヘッジファンド・エグゼクティブだったジェフ・ベゾス氏がオンライン書籍ショップを立ち上げた、1994年に遡る。当時の従業員数はわずか10人で、ベゾス氏自ら倉庫の出荷作業を手伝っていたという。

興味深いことに、同氏はその当時から、Amazonが単なる消費者製品の小売業者ではなく、テクノロジー企業だと主張していた。つまり同氏の戦略には、現在のAmazonの成功を予感させる野望があったものと推測される。

サービス開始1年足らずで顧客数が18万人を突破し、その後、市場規模を拡大する意図で様々なジャンルの商品を扱うサードセーラーを介入させたことが、「アマゾン帝国」の基盤構築に大きく貢献した。

同社の2019年の売上高は全米の小売販売の4%、eコマース販売の37.7%と圧倒的な市場シェアを確立し、2020年第1四半期の収益は前年比26%増の754億ドル(約8兆722億円)を記録した。

米国内総生産(GDP)に約18兆円の貢献 国内最大の雇用創出

Amazonの2020年1月の発表によると、2010年以来、企業・オフィス、顧客満足度の向上、クラウドインフラ、風力・太陽光発電所、環境に優しい設備・機械、およびチームへの報酬に投じた総額は2700億ドル(約28兆9063億円)を上回る。この中にはシアトルの本社、バージニア州アーリントンの第2本社、全米16カ所のテクノロジーハブでの技術開発への投資も含まれている。

投資規模は年々加速しており、現在までに米国のGDP(国内総生産)に1680億ドル(約17兆9861億円)相当貢献しているという。

Amazonは過去数十年間にわたり、米国で最も雇用を創出している企業でもある。自社の従業員やコミュニティの繁栄に貢献する間接雇用は、合計118万人に上る。

また同社がAmazon.comでの販売の機会を提供することで、設立および成長をサポートした中小企業(SMB)の雇用は83万人を超えている。

こうした雇用の拡大は、事業縮小によりリストラを余儀なくされている他の多くの小売業者とは対象的だ。さらにロックダウン下でオンラインセールスが急増したことを受け、2020年4月には7.5万人を超える新規雇用を発表した。

租税回避企業の汚名払拭?

Amazonは自社が「米経済に貢献する偉大な納税企業」である点を強調しているものの、この点に関しては多少疑問の余地がある。

Amazonは全面的に否定しているが、非営利、非党派の税政策組織ITEPの調査から、2018年の連邦所得税を納めなかった大企業の一つとして摘発されるなど、税法上の抜け穴を巧みに利用してきたことは間違いない。また「2018年に最も納税額が高かった企業」のトップ10にも入っていない。

こうした疑惑払拭を狙ってか、2019年は10億ドル(約1070億1787万円)以上の連邦法人所得税、24億ドル(約2568億4290万円)以上のその他の連邦税(給与税や関税)、16億ドル(約1712億2529万円)以上の州税および地方税(給与税、固定資産税、州所得税、総収入税など)、さらに90億ドル(約9631億4228万円)近くの売上税と使用税をサードパーティ・セーラー(Amazonを媒体にする販売業者)から徴収し、国内の州や地方に納税したことなどを自社のサイトで明らかにしている。

果てしなきAmazonの野望 eコマースから医療まで

すでにAmazonはフォーチュン500企業でWalmartに次ぐ2位の座に上り詰めているが、Walmart はもとより、GoogleやApple、FacebookなどライバルIT企業を差し置いて、「米国、ひいては世界を制する」と噂される要因は、その精力的な事業多角化戦略にある。

現在は主要ビジネスである「Amazon.com」を筆頭に、動画配信サービス「Amazon Prime Video」、クラウドコンピューティング・サービス「AWS(Amazon Web Services)」、2017年に137億ドルで買収した米グロサリー・ストアチェーン「Whole Foods Market」など、精力的に多角事業を展開している。

デジタル広告分野においても、eコマース広告を武器に、2大勢力であるGoogleとFacebookを着実に追い上げているほか、主要事業に比べると世間の認識度は低いものの、医療用品や医療機器の販売、自動車仲介サービスにも手を広げている。