キャッシュレス・ポイント還元事業が終了し、続いて始まったのがマイナポイント事業だ。7月1日より、ユーザー登録が始まっている。ここでは、店舗経営者に向けてマイナポイント事業について解説し、消費者と事業者それぞれのメリット・デメリットについて紹介したい。

マイナポイント事業とは?

マイナポイント
(画像=崇正 魚谷/stock.adobe.com)

マイナポイント事業とは、マイナンバーカードを使った政府主導のポイント還元事業である。消費の活性化、マイナンバーカードの普及促進、官民キャッシュレス決済基盤の構築を目的としており、マイナポイント事業対象のキャッシュレス決済利用に応じて、利用額の25%(上限5,000円)のマイナポイントが消費者に付与される仕組みだ。

この仕組みを通して決済事業者から付与されるポイントなどを総称して「マイナポイント」と呼び、マイナポイントは2020年9月~2021年3月末の期間に行われたチャージや決済に対して付与される。

消費者側の利用フロー

まずは、消費者の利用フローをみていこう。

マイナンバーカードの取得

マイナポイント事業の登録には、マイナンバーカードが必要となる。マイナンバーカードは、スマートフォンやパソコンからの申請のほか、まちなかの証明写真機や郵送でも申請可能だ。事前に送られてきた交付申請書を持っていない人は、市町村窓口で交付申請書を受け取るか、手書き用の交付申請書と封筒をダウンロードして、郵便で申請することもできる。

キャッシュレス決済IDの連携

次に、マイナポイント事業の対象決済事業者のなかから、利用する決済サービスを選ぶ。ちなみに、一度利用登録したキャッシュレス決済サービスはあとから変更することができない。

決済サービスによってポイント付与の方法が異なるだけでなく、還元上限額である5,000円に上乗せして決済事業者独自のポイント付与を行う施策が続々と登場しているため、消費者にとっては最初の決済事業者選びが重要となりそうだ。

予約&申し込み

マイナンバーカードを手元に用意し、利用する決済サービスが決まったら、マイナポイントの「予約・申し込み」を済ませておく必要がある。

このとき、マイナンバーカードの申請時に設定した数字4桁のパスワードが必要だ。例えばスマートフォンで予約する場合、マイナポイントアプリを起動し、マイページからマイナンバーカードとパスワードを使ってログインする。

マイナポイントの予約が完了すると「マイキーID」が発行され、マイナポイントの申し込みに進むことができる。マイナポイントをもらう決済サービスを検索・選択し、申し込み情報の入力とマイナンバーカードの読み取りを済ませれば、予約・申し込みの完了だ。

なお、パソコンから申し込む場合は専用ソフトのダウンロードが必要となる。

消費者のメリット・デメリット

マイナポイントを利用する消費者側のメリットは、なんといっても「ポイント還元」だろう。25%の付与率なので、2万円分の決済で上限額の5,000円が還元される。

一方、マイナンバーカードの発行やマイナポイントの予約・申し込みに必要な手間をデメリットに感じる人もいるだろう。特に、これまでキャッシュレス決済を使っていない人にとっては、キャッシュレス決済IDを用意するところから始めなくてはならない。

とはいえ、付与率が25%と高いため、キャッシュレス決済を始めるのには好機だ。

対応しているキャッシュレス決済事業者

対象となるキャッシュレス決済サービスは、「マイナポイント事業」公式ホームページで公開されている。普段使っている決済サービスが対応しているかどうか、検索も可能だ。

例えば「manaca」「TOICA」「Kitaca」「PASMO」などの交通系決済や、「nanaco」「waon」「楽天Edy」といった電子マネー、「ゆうちょ銀行」「生活協同組合コープ(一部)」などのプリペイドカード、「Famipay」「メルペイ」「d払い」「paypay」「楽天ペイ」「LINE Pay」などのQRコード決済のほか、クレジットカードやデビットカードの一部が対象となっている。

店舗経営者のメリット・デメリット

次に店舗側のメリット・デメリットについて解説したい。

店舗経営者にとってのメリット

対象のキャッシュレス決済を導入している事業者であれば、特に事業者からの国への届け出などは必要なく、そのままマイナポイント事業の対象店舗となる。

還元を求める利用者に向けて、さらに独自のプロモーション施策などもあわせれば、集客手段のひとつとして期待ができるだろう。ポイントは店舗の負担ではないので、コストをおさえられるのもメリットだ。

店舗経営者にとってのデメリット

店舗経営者にとってデメリットとなるのが、キャッシュレス決済の導入にかかる費用だ。主に初期費用と決済手数料(加盟店手数料)が挙げられる。

初期費用とは、主に決済用端末の導入費用だ。最近では「Square」や「STORESターミナル」など、スマートフォンやタブレットにセットしたりアプリを入れたりすればすぐにカード決済を行うことができるものもあり、カードリーダー自体の端末導入費用を無料としているサービスも多いが、なかには年間での決済金額に応じて費用負担が発生するものもある。

また決済手数料とは、キャッシュレス決済によって得られた売上から、一定の率を決済事業者に店舗が支払う手数料のことだ。これは一律ではなく、店舗の業種や決済事業者によって変わる。クレジットカードの場合、これを一般的に加盟店手数料と呼び、この手数料を客に請求することは規約違反であり、商品代金に上乗せして請求することは禁じられている。

このほか、別途「月額手数料」などが発生するケースもある。このように、キャッシュレス決済の導入にはある程度の費用負担が発生することがデメリットではある。しかしながら、今後キャッシュレスがより一般的になると考えられることから、今回のマイナポイント事業に限らずキャッシュレス決済の導入メリットは十分あるといえるだろう。

マイナポイント事業を顧客獲得のきっかけに

対象決済サービスさえ導入していれば、今回のマイナポイント事業はすぐに集客施策に活用できそうだ。また、キャッシュレス決済においては、手持ちの現金以上の額の支払いが可能となるため、場合によっては顧客単価のアップにもつながるほか、消費者が決済方法に縛られず、安心して買い物ができるというメリットもある。

同業他社に後れをとらないよう、キャッシュレス決済を活用して新たな顧客獲得につなげてみてはいかがだろうか。(提供:THE OWNER

文・木村茉衣(ビジネスライター)