長期投資が老後の資産形成に極めて重要であることはここまでの話でご理解頂けたのではないでしょうか。そして、老後資金確保のための自助努力を後押しするための投資優遇制度が「iDeCo(個人型確定拠出年金)」と「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」です。

税制優遇の仕組みとして「NISA」、もありますが、 老後資金確保という観点では、「NISA」は非課税期間が5年間しかないため、あまり適切ではないかもしれません。そのため、今回は「iDeCo」と「つみたてNISA」の違い、メリット・デメリットを確認しどのような視点から選択すれば良いかを届けします。

iDeCoとつみたてNISAは「老後に備えて自助努力しよう」という国のメッセージ

資産管理
(画像=tierney/stock.adobe.com)

2019年に話題になった「老後資金2,000万円問題」について振り返りましょう。「人生100年時代」を見据えて金融庁がまとめた報告書では、会社を定年退職した夫婦が95歳までに生きるためには公的年金制度の他に定年時に約2,000万円が必要だと述べられました。公的年金だけに頼るのは限界があり、若いうちから長期の積み立てなどで「老後に備える自助努力」で「自分年金」を準備しておくことを奨めたのです。

つみたてNISAとiDeCo、どちらも投資などで出た利益には一切税金がかからないというメリットがあります。どちらも投資初心者にやさしい、お得になる制度なのです。これらの制度拡充は国からの、「公的年金だけでは不足な国民は、自助努力で老後に備えて下さい」というメッセージと言えるのではないでしょうか。

iDeCoとつみたてNISAの制度概要、メリット・デメリット

iDeCoの制度概要を説明する前に、2階建てで構成されている日本の公的年金制度の仕組みをおさらいしましょう。

国民の加入が義務づけられているのが1階部分の「国民年金」です。この部分は会社を転職しても、失業中でも基本的には払わなければなりません。20歳から60歳までの40年間(480ヶ月)、国民年金保険料を支払うことで、老後に年間定められた金額を受給できる制度です。未払期間があれば満額から減額されることになります。これは日本年金機構から送られてくる「ねんきん定期便」で確認することができます。

2階部分は会社員や公務員には「厚生年金」、自営業者等には「国民年金基金」があります。ここまでが「公的年金」です。「厚生年金」は会社員や公務員であった期間だけ加入するものです。支払額は所得に比例し、半分を会社が負担しています。

そして2階建ての公的年金制度を補うため、企業や個人が任意加入できる制度が3階部分の「私的年金」です。会社にお勤めの方であれば「確定給付企業年金(DB)」や「企業型確定拠出年金(DC)」という制度を耳にしたこともあるはずです。勤務先が企業年金制度を取り入れていれば、会社員は加入できます。

そして、勤務先に「企業型年金」が存在しない個人のための自助努力の制度として国が準備した年金制度が「iDeCo」なのです。今では企業型と個人型は条件によっては併用できます。

「iDeCo」と「つみたてNISA」の違いをざっくり整理

【iDeCo】
運用期間: 加入から60歳まで(10年間延長可能)
利用可能資格: 20 歳以上 60 歳未満で、日本在住の国民年金保険料を払っている人(未納や免除、猶予は除く)

運用商品: iDeCo口座取扱金融機関が決めた投資信託もしくは元本確保型の定期預金・保険
投資上限: 公的年金加入状況によって異なり 年額6万円~81万6,000円
解約:   原則不可
優遇税制: 掛金の全額所得控除、運用収益非課税、退職所得控除/公的年金等の控除

【つみたてNISA】
運用期間: 20年間(現在の2037年までの期限は延長される見込み)
利用可能資格:日本在住の20歳以上の人

運用商品: 金融庁で認可された投資信託とETF
投資上限: 年間40万円、最大800万円
解約:   いつでも可能
優遇税制: 運用収益非課税

iDeCoのメリット・デメリット

「iDeCo」は、税制効果が大きいのが最大のメリットです。「拠出時」「運用時」「受取時」の3段階で税制優遇効果を享受できます。

「拠出時」は、年間掛金の拠出額の全額を所得から控除出来ます。課税所得から控除することで翌年の所得税や住民税が安くなります。例えば、企業年金が存在しない年収800万円の人が年間24万円を拠出した場合、年間7万2,000円の税軽減効果が期待できます(拠出額や所得によって異なります)。

「運用時」は、キャピタルゲイン(保有資産の値段が変動することによって得られる収益)やインカムゲイン(株主が企業から受け取る配当金)といった運用益に対して通常課税される20.315%が非課税です。

「受取時」は、60歳以降に「一時金」か、毎月支払いの「年金形式」で受け取ることが出来ますが、一時金として受け取る場合は退職金と合算して「退職所得控除」、年金として月々受け取る場合は公的年金と合算して「公的年金等控除」が受けられます。

デメリットは、基本的には解約が出来ないことです。そして金融機関を選ぶのも運用商品を選ぶのも「自己責任」なのがメリットでもあり、デメリットでもあるとも言えるでしょう。自分に合った金融商品を選択する「金融リテラシー」が必要なのです。もちろん、運用後に運用商品を変更することは可能です。

つみたてNISAのメリット・デメリット

NISAは国民の資産を「貯蓄から投資」へ加速させるために導入された制度です。2018年から「つみたてNISA」が始まりました。

つみたてNISAは、年金制度ではありません。国が国民に老後資金の自助努力をしてもらうため、「貯蓄から投資」の流れを作るために設けられた制度です。税制で優遇されるのは運用収益に対する譲渡所得税20.315%が非課税になるという1点です。iDeCoのような、住民税と所得税の軽減といった税制メリットはありません。20年経過後の分は非課税ではなくなりますが、通常の投信信託として継続運用が可能です。そのまま定年まで継続し、定年時に一時金、もしくは年金的に月次受け取りにして「自分年金」替わりにできます。

デメリットは、通常の株式投資や投資信託などの投資は損失が出た場合、年間の「損益合算」で税金を低減出来る制度がありますが、NISAは損益合算が出来ないことです。iDeCoと同様に、金融機関を選ぶのも運用商品を選ぶのも「自己責任」なのがメリットでもあり、デメリットでもあります。

iDeCoとつみたてNISA、どう選べばいい?

iDeCoもつみたてNISAも私的年金を意識した制度のため、制度メリットを最大限に活かせるのは中長期投資です。つみたてNISAだからといって短期的な運用を狙わず、分散投資・中長期投資で運用することが大前提です。そのため長期運用にふさわしいトラックレコード(実績)があり、コストの安いファンドが、選択肢の金融商品として選ばれています。

老後資金の準備を視野にいれるのであれば税制効果が高いiDeCoを最大限に利用したいですね。しかし、iDeCo は60歳まで積み立てているお金を引き下ろせません。老後資金の準備ももちろん大切ですが、多くの人が老後よりも前に、結婚、出産、住宅購入資金や教育資金などを準備しなくてはらならないでしょう。その点、つみたてNISAの場合は売却代金や配当金をいつでも引き出すことが可能です。また、非課税期間は最長20年間ですが、20年間積み立てなければいけないわけではありません。お金を貯める目的に合わせて10年間、15年間など、積立期間を選んでライフイベントに備えたい人は、つみたてNISAで運用するのが好ましいでしょう。

金融リテラシーは一長一短では身につかない

金融リテラシーは自分の老後のためにも大事なスキルですが、一朝一夕で身につくものではありません。iDeCoとつみたてNISAを実際に運用しながら金融商品や資産運用、投資の基礎を学ぶいいチャンスだと言えるのではないでしょうか。

iDeCoやつみたてNISAの運用商品は「分散投資」を意識し、全資産のバランスを考えながら選択しましょう。運用成果を狙う上でもリスク管理が重要になります。次回連載では、リスク管理の肝となる、資産の振り分け(アセットアロケーション)の考え方についてお届けします。(提供:Wealth Road