日本で2012年に制定された固定価格買取制度(FIT)は、欧州の再生可能エネルギー先進国で1990年代から導入されていました。2020年現在、日本では13円(税抜・10kW以上50kW未満の場合)、ドイツやイタリアでは7円前後の買取価格となっています。

海外の先進国ではFITからFIPに移行する国が多くなってきていますが、日本ではどのように変わっていくのでしょうか。今回は、海外の太陽光発電事情や制度の変遷、電力の買取価格などについて見ていきます。まずは、太陽光発電が発明された経緯や発祥の地から紐解いていきましょう。

太陽光発電の発祥の地は?

太陽光発電
(画像=ipopba/stock.adobe.com)

1839年、フランスの物理学者が物質に光を当てることで電力が発生する「光起電力効果」という現象を発見しました。その「光起電力効果」を応用し、アメリカの発明家チャールズ・フリッツが1883年にセレンという元素に薄い金の膜を接合した「セレン光起電力セル」を製作。しかし太陽光の変換効率が1%程度であったため実現化にはいたりませんでした。

1954年には、電話を発明したことで有名なアメリカのアレクサンダー・グラハム・ベルの研究所で「ピアソン」「フラー」「シャピン」という3人の研究者が太陽光電池を発明。変換効率は約6%に達しましたが、コストが高く大量生産も厳しかったため実用化にはいたりませんでした。

日本では1973年の第一次オイルショックの際、石油などの化石燃料が枯渇することによるエネルギー不足問題が浮き彫りになり大きな混乱が起こります。その後1974年に実施された省エネルギーの必要性を提言した政策「サンシャイン計画」では、石油の代替エネルギー開発が推進され次世代エネルギーとして太陽光発電が注目を浴びるようになりました。

2012年には、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーを国が固定価格で買い取る制度(FIT)がスタート。固定価格買取制度は、電力会社が買い取る費用の一部を電気利用者から賦課金という形で集め再生可能エネルギーの導入を支えていく仕組みです。

再生可能エネルギー導入が盛んな主要国の電力買取価格

資源エネルギー庁の資料によると世界の再生エネルギー発電設備のストックは年々伸び続けており、年間導入量も世界各国で増加の一途をたどっています。以下は主要先進国の再生エネルギー導入状況です。

導入率はドイツ・イギリス・スペイン・イタリアが特に高く、例えばイタリアでは8.3%のエネルギーを太陽光発電で賄っています。続いて太陽光発電をはじめとした、再生可能エネルギーでの発電に関する取り組みが盛んな主要国の電力価格を見てみましょう。

2019年における日本の太陽光発電1kWhあたりの買取価格は、住宅用(10kW未満)が24円、事業用(10kW以上500kW未満)が14円でした。これは海外の買取価格と比べて高い傾向です。上記のデータで再生エネルギーの導入率が高かったドイツ・イギリス・スペイン・イタリアは軒並み買取価格が10円以下となっています。

特にドイツでは、20年前に比べて約10分の1まで買取価格が下がっています。電力の買取価格は各国の規定により定められていますが、法改正や新たな法律の制定により設定の基準は変遷を遂げてきました。再生エネルギーの買取費用が電気を利用している人からの賦課金という固定価格買取制度の仕組み上、買取価格の設定には法的根拠や国民に負担をかけない算定が必要となります。

なお、2020年度における日本での太陽光エネルギー買取価格は以下の通りです。

太陽光発電設備1kWあたりの買取価格(税抜き)
10kW以上50kW未満13円
50kW以上250kW未満12円
250kW以上入札により決定
(2019年は250kW以上500kW未満で14円)

ドイツ、スペイン、イギリスの太陽光発電事情と制度の変遷

再生可能エネルギーの先進国であるドイツ・スペイン・イタリアにおける太陽光発電の歴史や事情、制度の変遷について見ていってみましょう。

ドイツ

ドイツは2018年に総発電量のうち40%以上を再生可能エネルギー由来の電力にすることを実現した、再生可能エネルギーの先進国です。再生可能エネルギーの発電量1位は風力発電、2位が太陽光発電となっています。ドイツは2000年からFIT制度を採用していましたが、2004年の法改正によって買取価格が値上がりしたことから太陽光発電の普及が急速に拡大しました。

しかしFITを支える「賦課金」が増大し国民の電気料金負担が重くなっていきます。これに伴い2014年にFIT制度を原則廃止、FIP制度へ移行しました。FIP制度とは、電気を市場で売却し売電量に応じてプレミアム分を上乗せする仕組みです。FIT制度の目的は「再生可能エネルギーの普及・促進」となっている一方で、FIP制度は「再生可能エネルギーの自立や自由競争」を目的としています。

そのため再生可能エネルギーの普及具合によってFIT制度からFIP制度に移行する国が多いのが実情です。さらに入札制度の導入やFIPの義務化範囲拡大などの政策が実施されています。

スペイン

スペインは1994年にFIT制度を導入し再生可能エネルギーの電力量が急速に増加しました。1998年にはFIT制度とFIP制度の両方が選択可能となりましたが、2013年にFIT制度を全面的に廃止。新たな制度への移行がうまくいかず投資家の反発を呼び訴訟問題が多数起こる結果となりました。

そして2015年に「太陽税」という投資家に不利な政策が実施され市場は停滞。2018年10月にこの太陽税も廃止されました。その後、2019年4月に自家消費用太陽光発電に対する支援策が定められ、同年6月にはエネルギー業界大手の企業が大規模ソーラープロジェクトを建設すると発表し、今後回復が期待されています。

イタリア

イタリアは1999年に電力自由化法のもと、RPS制度という市場のメカニズムを利用した独自の制度を導入しました。その後RPS制度と並行して固定価格買取(FIT・FIP)制度がスタートしましたが、2011年にRPS制度が廃止されることが決定。2014年には既存太陽光発電を対象とした買取価格引き下げ関連法令が可決されます。

その後、2017年に固定価格買取(FIT・FIP)制度は終了しましたが、太陽光発電の電力量は現在も高い水準を維持しています。

日本では2030年に買取価格が1kWあたり5.1円に?

日本はFITの導入が欧州より遅かったこともあり、買取価格はまだ高水準を保っています。しかし経済産業省は、今後日本ではさらに売電価格が下がり2030年には1kWあたり5.1円まで低減する見通しであると発表しています。

「こんなに売電価格が低くなって大丈夫なの?」と感じる人もいるかもしれませんが、設備コストも年々下がっているため利回りはあまり変わらないでしょう。

まとめ

今回は、海外の太陽光発電事情や買取価格、日本の将来の買取価格予測などについて解説しました。再生可能エネルギー先進国のドイツやスペイン、イタリアではFIT制度が国民の負担となり制度を移行するケースが多い傾向ですが、日本では250kW以上の太陽光発電は2020年より「卒FIT」となり、入札で価格が決定する制度が採用されています。

各国のこうした動きや買取価格に注目しながら、今後の太陽光発電投資の戦略を考えていきましょう。(提供:Renergy Online