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新政権の経済政策維持で日経平均は底上げへ

野村証券 投資情報部 エクイティ・マーケット・ストラテジスト / 若生 寿一
週刊金融財政事情 2020年9月7日号

 安倍晋三首相が辞任を表明し、市場では先行き不透明感が強まっている。

 第2次安倍政権下における株式市場は、株価が理論的に形成される面が強まった。理論的には、株価は1株当たり利益(EPS)と株価収益率(PER)の掛け算である。2012年以降の日経平均の動きは、各時点の予想EPSに対してPER12~16倍の範囲におおむね収まってきた(図表)。つまりその時点の業績見通しと先行きに対し一定程度の期待の振れ幅の中で株価が動いてきた。

 この間の動きを見ると、まず1万円割れの日経平均株価が第2次安倍政権誕生後、約1年で1万6,000円程度まで戻した。その背景としては、「黒田バズーカ」とも呼ばれる日銀の強力な金融緩和などでドル円相場が1ドル=100円程度まで円安方向に回復し、輸出企業の収益環境が改善したことが挙げられる。

 その後3年ほど1万5,000~2万円のレンジ相場を経て、17年以降はおおむね1万9,000~2万4,000円のレンジに水準を切り上げた。17年以降のドル円相場は110円を中心に上下5円程度の動きであることを考えると、この間の金融緩和は(下支えではあったが)押し上げにはならなかったといえよう。代わって企業業績を押し上げたのは、企業統治改革と堅調な米国および世界経済であったと考えられる。

 弊社が調査対象とする主要企業の株主資本利益率(ROE)は、12年度の5%程度から17年度には10%程度まで大幅改善した。企業統治改革への意識の浸透と相まって株価を押し上げた面があったと考えられよう。

 足元では、新型コロナウイルス感染症の拡大で企業業績見通しが大きく落ち込んでおり、それに基づくと現状の株価は割高とも指摘される。一方、新総理が感染抑制と経済回復の両立という現状の政策を変えることは難しく、この政策を続けることを前提にすると、来年度の経常利益水準は直近ピークの18年度比9割強に戻るとみられる。

 それを基準に、今年度末にかけて従前のPERレンジに株価が回帰するとすれば、今年度後半の日経平均株価は2万~2万5,000円と予想される。経済政策の大枠が当面変わらないのであれば、各国の政局動向でボラティリティーが高まる局面があっても、最終的には経済回復の程度を見ながら株価が底上げされていくことが想定される。

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