分散型金融(DeFi)市場の発展とともに米ドルペッグのステーブルコインUSDCの取引高が増加傾向にあり、CompoundやAave、Uniswapなどでの利用によってオンチェーン取引高は900億ドル以上を記録。

分散型金融(DeFi)プロトコルにおけるステーブルコイン需要の高まりとCBDC発行に向けた各国中央銀行の動向
(画像=STOnlineより)

また、WrappedBTC(WBTC)・RenVMといったビットコインをイーサリアム上でトークン化するプロジェクトの活用も進んでおり、分散型金融(DeFi)での利用を主な目的として年間で5億ドル以上の相互運用が行われたといった事例も確認されています。

テザー(USDT)の時価総額も140億米ドル以上を記録するなど、法定通貨にペッグされたステーブルコインへの需要の高まりとともに中央銀行が発行するデジタル通貨への取り組みも盛んに報じられています。

すでに中国では、デジタル人民元(DCEF)を小売業で利用する実証も行われており、国際貿易の効率化に向けて今後もブロックチェーン技術の社会実装が進むことが予想され、国際貿易において世界に先駆けたデジタル人民元(DCEF)の利活用が世界経済のあり方にどのような影響を及ぼすのか大きな注目が集まることでしょう。

近年では、ラテンアメリカや東アジア地域においてクロスボーダーな商取引に暗号資産を採用する事例も急増しており、ここ1年間では約10億ドル/20万件の規模に拡大。

アジアからの輸入品の仕入れの際にブロックチェーンシステムが用いられることで請求書手続きのみならず、デジタル通貨による決済の迅速化が図られることも想定され、より効率的な国際貿易の実現によって資本市場はさらなる発展を遂げることでしょう。

ブラジルでは、2022年にはCBDC導入への準備が整うと発表しており、実体経済においてもブロックチェーン技術を活用した決済システムの普及が見込まれます。

分散型金融(DeFi)プロトコルにおけるステーブルコイン需要の高まりとCBDC発行に向けた各国中央銀行の動向が時代の大きな流れを形成している現在、より市場への理解を深めるために本稿では下記の事例について詳しく解説していきます。

目次

  1. 自動マーケットメーカー(AMM)「Binance Liquid Swap(BSwap)」のローンチ
  2. デジタル通貨イニシアチブ(DCI)がマサチューセッツ工科大学(MIT)の支援を発表
  3. 大阪・神戸地区の国際金融都市構想実現に向けてデジタル証券(セキュリティ・トークン)取引所を開設へ
  4. まとめ

自動マーケットメーカー(AMM)「Binance Liquid Swap(BSwap)」のローンチ

中央集権型取引所としては初めてとなる自動マーケットメーカー(AMM)「Binance Liquid Swap(BSwap)」の提供が発表されました。

分散型金融(DeFi)市場においては分散型取引所(DEX)「Uniswap」の24時間取引高が$953.59Mを記録するなど、今後も多くのプロジェクトが参加することが予想されています。

しかし、スマートコントラクトの未監査による安全性の問題や開発者が所有していたトークンを売却するなど、市場の健全化に向けた取り組みもまた重要なフェーズにあります。

自動マーケットメーカー(AMM)には、
・トークンを分散型取引所(DEX)に預託(プール)し、他のトークンとのスワップ取引
・預け入れ(プール)たトークン数に応じたインセンティブ(取引手数料・利子)の付与

といった機能があり、従来の中央集権型取引ではなく、第三者機関が仲介しないスマートコントラクトによる取引自動化を実現しています。

「Binance Liquid Swap(BSwap)」は、Binanceなど中央集権型取引所を利用するユーザーを対象にしており、
USDT/BUSD
BUSD/DAI
USDT/DAI

といった3種類のペアを提供するとしています。

これにより多くの資金が、分散型金融(DeFi)に投じられ、USDT・DAIの取引高が増加することでしょう。

預託による利子の付与
中央集権型取引所を利用するユーザー対象

などによって、「Uniswap」と差別化を図る「Binance Liquid Swap(BSwap)」がどれだけ発展を遂げるかによって、今後の分散型金融(DeFi)市場のあり方も大きく変わってくることでしょう。

デジタル通貨イニシアチブ(DCI)がマサチューセッツ工科大学(MIT)の支援を発表

デジタル人民元が突如ローンチされ、サービス・デジタル経済自由貿易区を北京に設置することが発表されるなど、中国による積極的な通貨や産業インフラのデジタル化への取り組みは世界を牽引。

米国においてはデジタル通貨イニシアチブ(DCI)が、デジタル通貨開発の技術提供に向けてマサチューセッツ工科大学(MIT)と連携し、プロジェクトを推進するとしており、デジタルドルの最終的な政策決定に向けて2-3年のスパンで取り組みを予定しています。

CBDCの開発においてはプライバシー・匿名性をどのように技術的に確立していくかが重要であるとされ、デジタルドルの要件を満たす新しい技術の開発に向けて、これまでのブロックチェーン技術のベストプラクティスを適用した技術的設計に取り組むとしています。

デジタル人民元の開発においても中央銀行と民間銀行が連携して研究を進めるなど、中長期的な取り組みが現在の大規模な実証につながっていると言えます。

デジタル人民元の普及により、この2-3年の間で基軸通貨である米ドルの信用力が低下するといった事態も想定されますが、世界経済において米ドルの影響力は非常に大きく、現在のところは各国でのユースケースの創出を参考に技術的進化を検証することが重要です。

大阪・神戸地区の国際金融都市構想実現に向けてデジタル証券(セキュリティ・トークン)取引所を開設へ

日本では、SBIホールディングスの北尾吉孝社長が、デジタル証券(セキュリティ・トークン)取引所を開設することを発表し、大阪・神戸地区における国際金融都市構想実現に向けた取り組みが進行しています。

分散型金融(DeFi)やCBDCとともにデジタル証券(セキュリティ・トークン)もまた金融市場を拡張し、新たな市場を創出している分野であり、ブロックチェーン技術を活用した資金調達・証券取引の効率化への取り組みが各国で行われています。

取引所が存在することによって、新たなユースケースの創出が米国では進んでおり、ナスダック上場企業が発行するデジタル証券(セキュリティ・トークン)が、上場市場における株価の上場とともに値上がりするといった事例も確認され、証券市場の新たな市場形成に多くの注目が寄せられています。

証券に関する法規制に準拠して発行されるデジタル証券(セキュリティ・トークン)は、デジタルアセット市場の健全化を図る上で重要な役割を担うとされ「新しい資金調達方法」として2018年頃から米国などでは発行プラットフォームが立ち上がっていました。

米国のSEC登録免除規定Regulationに準拠したSTOやドイツでの不動産担保デジタル証券(セキュリティ・トークン)の発行が相次いだ2019年を経て、2020年現在においては、分散型取引所(DEX)Uniswapにおける不動産トークン(RealT)の取引など、様々な形で市場の形成が見受けられます。

すでに大阪府や政府との協議をしており、デジタル証券(セキュリティ・トークン)取引所の開設が日本の証券市場においてどのように機能していくのか、様々なユースケースの創出と海外市場との連携など、日本においても今後の取り組みに大きな期待が寄せられています。

まとめ

分散型金融(DeFi)においても中国で業界団体「Open DeFi」の立ち上げが行われ、
上海科学技術委員会
Conflux Network(スタートアップ企業)
セコイアキャピタル(VC)

などの組織や企業が参加しています。

各国においてもコンソーシアムやアライアンスが設立され、
・市場の健全化に向けたリスクマネジメント
・流動性向上に向けた戦略の立案

といった取り組みを進めていくとしており、技術的進化による市場の拡大とともに相互連携によるポジショニングの確立といった動きも出てきています。

CBDCやデジタル証券(セキュリティ・トークン)市場においても共同事業による知見の共有や相互発展への取り組みが相次いでおり、今後もより良い市場の形成に向けて官民連携やボーダレスなパートナーシップの活用が行われることでしょう。(提供:STOnline