本稿では、ブロックチェーン技術を活用した上場株式の取引・決済関連事業を展開するスタートアップ企業「Paxos」「Axoni」「Blockstation」について解説していきます。

STOnlineより
(画像=STOnlineより)

暗号資産のカストディサービスや米ドルペッグステーブルコイン「Paxos(パクソス)」の発行を行っているブロックチェーン企業「Paxos Trust Company)」は「Paxos Settlement Service」を発表しています。

「Paxos Settlement Service」はブロックチェーン技術を活用した米国上場株式の取引システムのことであり、

  • Credit Suisse AG(クレディ・スイスグループ企業)
  • Instinet(インスティネット:野村グループの執行サービス部門)

と2年ほど前から協力し、商品設計・開発が行われてきました。

2019年10月には、米証券取引員会(SEC)がノーアクションレターを発行し、「Paxos(パクソス)」がブロックチェーンを活用して証券決済を行うことを認可。

今後は、クレディ・スイスとインスティネットの2社間での証券取引・決済についての実証実験をプライベートブロックチェーン(許可型)で行うとしており、次いでフランスの大手金融機関であるソシエテ・ジェネラルも米国株式の取引を行うとしています。

米国株式のみならず様々なアセットクラスへの進出を「Paxos(パクソス)」は目指しており、「Paxos Settlement Service」を利用することで、証券保管振替・決済機構を介さずとも証券取引・決済を実現できることから、今後は金融領域におけるブロックチェーン技術の活用事例として大きな注目を集めることでしょう。

目次

  1. 米国 証券取引の効率化に向けた取り組み
  2. 「Paxos(パクソス)」について
  3. ブロックチェーンスタートアップ企業「Axoni」について
  4. The Options Clearing Corporation ストックレンディングシステムへAxCoreブロックチェーンを導入へ
  5. Axoniの将来性
  6. Blockstation|ブロックチェーンによるIPOプロセスの効率化
  7. トークナイズドIPOについて
  8. トークナイズドIPOの普及に向けて
  9. IPOプロセスの効率化に向けて
    1. Blockstation Inc.について

米国 証券取引の効率化に向けた取り組み

日本においても「Progmat」の開発が発表され、セキュリティトークンとスマートコントラクトを活用した証券取引の効率化には大きな期待が寄せられています。

各国の証券取引所でもブロックチェーン導入への取り組みが相次いで行われており、今回の「Paxos(パクソス)」の事例は金融市場のレガシーシステムを変革する大きな一歩となるでしょう。

証券取引のコスト削減を削減し、効率的なインフラの整備が行われることで、金融市場全体の活性化が図られるとしてブロックチェーン基盤システムの開発が行われていますが、決済に関しては各国で準拠する法規制も異なるため大きな課題とされてきました。

米国においては、米証券取引員会(SEC)から証券決済に関する実証実験の認可を得た「Paxos(パクソス)」が「Paxos Settlement Service」を展開することで、将来的には様々な証券会社間での利用が行われることも考えられます。

また、米国証券保管振替機構「Depository Trust & Clearing Corporation(DTCC)」も金融市場におけるブロックチェーンのセキュリティフレームワークに関するホワイトペーパーの発表や各金融機関とともに実証実験を展開するなど、積極的な取り組みを行っています。

既存の清算機関を介さずとも「信頼が担保される」ブロックチェーン決済システムが普及することで、長年にわたって普遍とされてきた金融システムが大きく変貌を遂げようとしており、米国においてはブロックチェーン企業がSECが示す規制に準拠した形でサービスを展開しています。

「Paxos(パクソス)」について

2017年5月:Euroclearと連携し、金(ゴールド)を取引するブロックチェーンプラットフォームプロジェクトを実施(ソシエテ・ジェネラル、シティバンクが参加)

2018年6月:$65 million(約70億円)の資金調達を発表

2018年9月:米ドルペッグステーブルコイン「パクソス・スタンダード(PAX)」を発行

2019年9月:金(ゴールド)ペッグステーブルコイン「パックス・ゴールド(Pax Gold/PAXG)」を発行

2019年10月:NBA スペンサー・ディンウィディー選手と連携し、契約金を裏付け資産にしたSTOの実施を発表

2019年10月:米証券取引員会(SEC)がブロックチェーン上での証券決済に関するノーアクションレターを発行

2019年11月:暗号資産取引所「Binance」と連携し、米ドルとステーブルコインを交換する「法定通貨ゲートウェイ」を発表

ブロックチェーンスタートアップ企業「Axoni」について

この章では、ゴールドマンサックスやシティグループが出資しているブロックチェーンスタートアップ企業「Axoni」について解説し、株券等貸借取引システムへの最新技術導入の事例について考察していきます。

各国では証券業務の効率化に向けて、ブロックチェーンを取引・管理システムに導入する取り組みが行われています。

世界銀行やHSBC、サンタンデール銀行といった世界的な金融機関が、ブロックチェーン上で債券の発行・管理を行っており、証券のデジタル化とともに、ブロックチェーンを活用した証券保管振替や決済・カストディ業務の効率化に向けた取り組みが世界では行われています。

そのような中で、2020年2月にはゴールドマンサックスとシティグループはAxoniのブロックチェーン「Axcore」を使用してエクイティスワップ取引を実施。

取引情報がブロックチェーンによって可視化されることで、配当・金利の金額を照合する時間の短縮に繋がり、将来的には規制当局がブロックチェーンプラットフォームに直接アクセスを行うといった構想も立ち上がっています。

エクイティスワップ取引は、配当・金利および株価といった指標の確認・照合に多くの従業員を必要としていたために、ブロックチェーンを活用することで、合意形成の不備による損失を防止でき、業務の効率化が図られます。

「Axoni」は金融機関へのブロックチェーン導入事業を各金融機関と提携して行っており、シリーズBラウンドでは3,200万ドルの資金調達を行っており(2018年)、JPモルガンやWells Fargoが出資企業として名を連ねています。

2016年9月から「Axoni」は、照会情報(リファレンスデータ)管理の実証実験をシティグループや米証券業金融市場協会(SIFMA)と提携して行っており、R3などと共に金融領域においけるブロックチェーンの実用化に向けた取り組みを実施。

2017年にはエクイティスワップの実証実験をゴールドマンサックスやシティグループ、JPモルガンと共に6ヶ月にわたって実施しており、株式分割・スワップ契約の修正など成功率は100%とされていました。

資金調達額は2018年のシリーズBラウンドにおいてHSBCも含めると、3,600万ドルも及んでおり、全てのラウンドの合計資金は5,900万ドルとなっており、アンドレセンホロウィッツやYコンビネーターなども「Axoni」には出資をしています。

2018年には米国の証券保管振替機関「Depository Trust and Clearing Corporation(DTCC)」のクレジット・デリバティブ管理システム

「Trade Information Warehouse(TIW)」

へのブロックチェーン導入事業をIBMやR3、ゴールドマンサックスなどと共同で行っています。

エクイティスワップ市場は、2兆8000億ドル規模とされており、今後もブロックチェーン「Axcore」を活用した大手金融機関との連携など、実用化に向けた取り組みが行われていくと考えられます。

The Options Clearing Corporation ストックレンディングシステムへAxCoreブロックチェーンを導入へ

The Options Clearing Corporation(OCC)は、1973年に設立された世界最大のデリバティブ取引・清算機関です。

米国証券取引委員会(SEC)と米国商品先物取引委員会(CFTC)の管轄下で運営され、現在、19の取引所(プラットフォーム)に中央清算・決済機関(CCP)サービスを提供しています。

OCCは、先物・オプション、および貸借取引におけるカウンターパーティーリスクを軽減する清算機能を提供しており、ストックレンディング(株券等貸借取引)インフラへのブロックチェーン技術の導入と実装に向けてAxoniとの協業を発表しました。

主な清算機能

  • リスク管理(値洗い・市場参加者、業者の監視)
  • 関係機関の財務健全性の監査
  • CFTC(不正防止・取引監視 etc)規制適用の確認

Axoniのブロックチェーン「AxCore」を活用し、2020年Q2から開発が始まり、2022年に顧客向けにローンチが予定されています。

OCCのストックレンディング(株券等貸借取引)システムへのブロックチェーン技術実装によって下記のようなメリットがあるとされています。

  • これまでトレーディング調整プロセスを管理するために最大3人の従業員が必要であるとされてきた監査コストの削減(約数十億ドル)
  • 手作業で行われている業務プロセスの自動化
  • カウンターパーティーリスクの軽減

Axoniの将来性

米国では、2019年からストックレンディング(株券等貸借取引)システムへのブロックチェーン技術の導入に関する概念実証(POC)が行われ、監査の必要性を軽減し、決済時間を短縮するとされてきました。

  • モルガン・スタンレー
  • ステートストリート
  • シティバンク
  • クレディスイス
  • ソシエテジェネラル

OCCとAxoniは、将来的に、上記の企業との取引情報の管理・共有をブロックチェーンで行うことで、監査人の必要性を減らすことができるとしています。

株券等貸借取引ブロックチェーンシステムは韓国・新韓銀行も開発を進めています。

日本ではカブドットコム証券株式会社が株券等貸借取引業務に日立が開発する人工知能技術「Hitachi AI Technology/H」を導入するといった事例もあります。

貸株サービスにおける業務効率化のみならず

  • 適切な貸出レートの自動算出
  • 機会損失防止
  • トレーディング環境の最適化

などの実現にも大きな注目が寄せられています。

Blockstation|ブロックチェーンによるIPOプロセスの効率化

STOnlineより
(画像=STOnlineより)

トークナイズドIPOは中小企業の資金調達の促進に貢献し、証券取引所がグローバル市場からの投資家を獲得できるといったメリットがあることから、資本市場のさらなる流動性向上につながると考えられています。

この取り組みはカナダのFinTech企業である「Blockstation」とジャマイカ証券取引所との協業によって行われ、下記の企業がすでにジャマイカ金融サービス委員会への目論見書提出を行なっています。

  • BRED:カナダのプライベートエクイティファンド

  • Lotus Energy:オーストラリアのエネルギー会社

  • WiPay スペイン、トリニダードの送金会社

  • VeleV Capital カナダの投資会社

トークナイズドIPOは、証券をデジタル化したセキュリティトークンとブロックチェーンプラットフォームによって

  • IPOプロセスの「コスト削減、スケジュール短縮」の実現
  • 暗号資産投資家の株式市場の参加を促進

上記の特徴を有しており、証券取引所における伝統的なIPOをデジタル化したものと考えられます。

トークナイズドIPOについて

すでに米国では、tZEROやOpenFinancenetworkといったセキュリティトークン取引所によって市場が形成されています。

ジャマイカなど発展途上国においては株式市場での資金調達といった社会システムが成熟していないことからIPOプロセスを効率化させることで、資本市場を活性化を図ることができると考えられます。

カナダのプライベートエクイティファンドBREDは、従来のIPOとトークナイズドIPOを別々の証券取引所で実施することにより、それぞれのコスト、タイムライン、ワークフローを詳細に比較する機会を提供しました。

トークナイズドIPOを実施した最初の企業としてBREDの事例はレポートにまとめられており、サイトからダウンロードが可能です。

※ Blockstationのサイトに登録後、レポートがダウンロードできます。

Blockstationが提供するトークナイズドIPOプラットフォームは下記のメリットをジャマイカ証券取引所をもたらすとしています。

・中小企業や新興企業の証券取引所へのアクセスが増加
・IPOを通じて資金を調達するために必要な時間とコストを削減
・コンプライアンス、投票、配当などを含む、IPOにまつわる業務の継続的な効率を実現

トークナイズドIPOの普及に向けて

米国においては巨大な資本市場が形成されているために、株式市場のみならず

未公開株式取引所:Nasdack private market、Shere port

といったプライベートエクイティの取引市場の形成も行われています。

東南アジアにおいてもシンガポールでは

  • Capbridge
  • istock

といった米国と同様の取り組みが行われており、発展途上国における資本市場の活性化に向けてはIPOプロセスおよび証券取引のデジタル化は非常に重要な意味を持つと考えられます。

  • どのようなブロックチェーンシステムを構築しているのか
  • 汎用性があり、他のアフリカ諸国でも導入可能なのか

上記ような点は非常に気になるところですが、今回のBlockstationとジャマイカ証券取引所の取り組みは、将来的な発展途上国の資本市場の発展に貢献することでしょう。

IPOプロセスの効率化に向けて

今回のトークナイズドIPOにおける上場株式のトークン化は、従来のIPOと同じ規制手続きと要件に従っており、

  • 自社のバリュープロポジション
  • 不動産保有のトークン化された所有権

の概念実証として機能するとされています。

さらに、トークナイズドIPOにより、投資家はビットコインとイーサリアムを使用して株式を購入できるため、

  • 振替手数料の大幅に引き下げ
  • 国際的な個人投資家のアクセシビリティ向上

証券取引所にとっては新たな投資家層の獲得といったメリットも存在し、市場の流動性向上につながると考えられます。

Blockstation Inc.について

2014年に設立されたカナダの大手FinTech企業であるBlockstationは、証券取引所向けのセキュリティトークン取引に関するソリューションを提供しています。

ブローカーディーラー、投資家、発行者、預託機関、規制当局のエコシステム全体に対して、エンドツーエンドで準拠した上場、取引、決済サービスを提供します。

Blockstationを使用すると、証券取引所は暗号資産に対する投資家の需要に迅速に対応し、新規上場システムおよび取引収益を獲得できます。

このソリューションは、既存のITインフラストラクチャ、取引プロセス、リスク管理、規制の枠組みに適合します。(提供:STOnline