本稿では、Vertalo(ベルタロ)が手掛ける各不動産セキュリティトークンプロジェクトを紹介し、半永久的な不動産事業投資を可能とするビジネスモデルなど不動産STO市場の多様化について解説していきます。

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(画像=STOnlineより)

Vertaloの不動産部門であるVertalo Real Estate(VRE)は、商業用不動産ファンド「REI Capital Growth」と協業し、2つのSTOプロジェクトを発表しました。

  1. $50 million Equity STO for Growth – by REI Capital Growth
  2. $50 million Debt STO for Income – by REI Capital Lending (an REICG affiliate)

「Equity STO for Growth」は「パーマネントキャピタルビークル」、「インターバルファンド」といったこれまでにはないスキームとファンド構造が特徴です。

パーマネントキャピタルビークル(PCV):エバーグリーンファンドとも呼ばれ投資家からの資金を返済する義務を持たないことから事業収益を半永久的に再投資することができます。商業用不動産の安定したキャッシュフローによって、不動産ポートフォリオを拡大することができ、高い前年比成長率を遂げることができるとされています。バークシャーハサウェイは、PCVの成功事例として広く認知されています。

インターバルファンド:売却が3ヶ月/1年など期間が限定され、商業用不動産など長期保有向けファンドのことです。

PCVであることからキャッシュフローの90%を保有または再投資の資金として使用し、残りの10%は償還の準備資金となります。

このSTOは、海外投資家にむけた米国不動産への投資機会の提供といったメリットがある一方、米国商業用不動産の需要がどこまで回復するかといった点において、投資リスクの詳細な分析は必要になります。

「Debt STO for Income」は、四半期ごとに収益配当を提供予定(実質利回り4.00%:表面利回り5.5%)とされ、調達資金は不動産ポートフォリオの取得に投資されます。

どちらのSTOも米国免除規定RegulationSに準拠しており、調達資金でポートフォリオを拡大し、安定したキャッシュフロー創出/再投資するビジネスモデルを中長期にわたって展開することを目指しています。

不動産など安定したアセットを対象とした投資ファンドが、PCV・インターバルファンドの特徴を有することで、短期的な変動に囚われない投資商品の創出が可能となり、将来的には資本市場の多様化に繋がることが考えられます。

不動産のエコシステム全体を包括的に理解し、適切に構造化された投資商品を海外投資家に提供できるパイオニアが必要です。1960年にREIT構造が導入され、より多くの投資家が不動産投資に参加できるようになったのと同じように今回のSTOによって海外の投資家が少額から米国商業用不動産にアクセスできるようになりました。

「REI Capital Growth」のアランブレア社長は、このように述べており、PCV・インターバルファンド形式の不動産ファンドSTOが不動産セキュリティトークンの新たな形として創出されています。

目次

  1. Vertaloについて
  2. MountX Real Estate Capitalとカナダの不動産を対象としたトークン化事業を展開へ
  3. まとめ

Vertaloについて

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Vertaloは、様々な規模の不動産への投資機会を拡大するため自社の有するテクノロジーをSaaSサービス(B2B)として提供することに成功しており、そのシンプルで安全なプラットフォームはブロックチェーン技術によるグローバルな不動産投資を活性化させます。

このことは不動産セキュリティトークン市場の発展において非常に重要な意味を持つと考えられ、積極的な海外企業との協業による相互的な発展を目指す姿勢は市場の将来性をより確かなものにしています。

・バーボンウィスキーのトークン化事業(Wave Financial)
・3億ドル規模の不動産トークン化事業(tZERO)
・Tezosを活用した22個のセキュリティトークン事業(DealBox)
・Vertalo Real Estate(VRE)の立ち上げ

Vertaloはこれまで上記のプロジェクトを発表しており、米国セキュリティトークン市場を牽引しているパイオニア的存在です。

すでにセキュリティトークンに関連した多岐にわたるサービスを提供しており、従来の発行プラットフォームとしてのサービス提供のみならず株式名簿管理やこれからセキュリティトークンビジネスを始める企業へのデモプラットフォームの提供を実施している点において競合他社との差別化が図られています。

・Digital Asset Management Platform:カストディアン、ブローカーディーラー、取引所等とのシームレスな接続を実現するAPIプラットフォーム。

・Cap Table Management:ブロックチェーンを活用した資本政策表によってタイムリーな株式名簿管理を実現。

・Digital Security Issuance:TezosやEthereumブロックチェーンを活用し、SECのReglationに準拠したセキュリティトークン発行サービス。

・Vertalo Distribution Network(VDN):新規参入企業へのデモプラットフォームや各種ツールの提供によって、ビジネスの構築を促進。

MountX Real Estate Capitalとカナダの不動産を対象としたトークン化事業を展開へ

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今回、Vertaloはカナダの不動産を対象としたトークン化事業をMountX Real Estate Capitalと共同で実施することを発表。

両社は、2020年から1〜2年以内に15以上の不動産トークンプロジェクトを予定しており、ラテンアメリカ(主にメキシコであると想定されます)の投資家をはじめとして米国やカナダの投資家への販売が計画されています。

メキシコ・サンタフェとカナダ・トロントに拠点を持つMountX Real Estate Capitalは、Vertalo Real Estate(VRE)プラットフォームのライセンスを取得することで、堅牢なセキュリティと透明性を担保するブロックチェーン技術を活用した不動産投資機会の提供を実現し、MountX向けにカスタマイズ(設計)された利便性の高いVREプラットフォームはビジネスの発展を促進することでしょう。

不動産セキュリティトークン市場では、RealTがLCC(有限会社)の所有権をRegSに準拠してトークン化し、Uniswapで流通させるスキームでセカンダリーマーケットの形成が進んでおり、今後は米国や英国などの高級不動産や成長が見込まれる東南アジアの不動産の流動性向上など、これまでアクセスできなかった資産へのアクセスに関して大きな可能性を秘めていると考えられてきました。

日本では金商法や不特法に準拠したクラウドファンディングやソーシャルレンディングが普及し、1口1万円から不動産案件に投資できる環境の整備が進んでおり、株式会社LIFULLとSecuritize Japan株式会社が不特法事業者向けにセキュリティトークン発行に関するスキームやSaaSサービスの提供を発表するなど、不動産投資市場のデジタル化への取り組みが着実に進行しています。

まとめ

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Vertaloが推し進める各国の不動産トークン化事業は、約228兆ドルの規模を誇る世界の不動産市場へのグローバルなアクセスを拡大させ、デジタル化による業務効率化のみならず既存の証券市場のプレイヤーとのシームレスな接続をも実現しています。

不動産セキュリティトークンの市場規模はまだ小さいものの、優れた技術と実績を持つ企業によるSaaSサービスの提供と様々な規模の不動産プロジェクトの実施は市場の発展においては優れた成長戦略であると言え、Vertalo Real Estate(VRE)プラットフォームを活用した不動産トークン化事業が各国で行われることなど、より良い市場形成に向けVertaloの取り組みに今後も期待が寄せられています。(提供:STOnline