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原油価格の上値は重く、当面は1バレル=40ドル近辺で推移

野村証券 シニアエコノミスト / 大越 龍文
週刊金融財政事情 2020年9月21日号

 米国では通常、7月4日の独立記念日祝日を含む連休から、9月7日のレーバー・デー祝日を含む連休までが、夏場の行楽シーズンと認識されている。例年、この時期にドライブ旅行が盛んに行われ、米国ではガソリン需要の最盛期となる。

 米国のガソリン消費量は大きく減退した後、回復してきていた。新型コロナウイルス感染症の流行を受けて、原油需要は世界的に大きく減退したが、米国では経済活動の制限が徐々に緩和されるのに伴って、原油需要は正常化へ向けて動き出していた。そして、この行楽シーズンにガソリン需要が元に戻ることも期待され、7月上旬から9月上旬にかけてWTI(米国軽質原油)期近物先物価格が1バレル=40ドルをやや超えて推移する展開が続いた。

 しかし、米国エネルギー情報局(EIA)の週間石油統計で米国のガソリン消費動向を確認すると、今年の行楽シーズンのガソリン消費量は十分には回復しなかった。シーズン終盤にはガソリン消費量が減退し始め、結局、近年の不需要期の消費水準程度までしか戻らなかった。ガソリン消費の戻りが期待外れなものにとどまったことを主因に、足元のWTI価格は1バレル=40ドルをやや割る展開になっている。

 こうした状況を踏まえると、新型コロナの流行に伴って減退した世界の原油需要は徐々に正常化に向けて動き始めているものの、新型コロナ流行前の水準に戻るにはやや長い時間を要すると推察される。国際エネルギー機関(IEA)も、世界の原油需要の回復を予想しているが、2021年においても、新型コロナ流行前の水準に世界の原油需要が戻ることは困難と見込んでいる。また、再び感染拡大などによって新型コロナの悪影響が強まり、世界の原油需要が大きく減退し、原油価格が下振れする可能性も完全に否定することはできない。

 一方、原油需要の再度の減退が避けられ、石油輸出国機構(OPEC)等に加盟する主要産油国の協調減産が続けば、原油価格は支えられると見込まれる。もっとも、前述のように本格的な需要回復には時間がかかるとみられることから、原油価格が上値を追うことは困難であろう。

 原油市場の参加者は、原油需要の回復が続くか、OPEC等の協調減産が続けられるか、米国のシェール・オイルの生産が増加するかどうかの様子を見ながら、来年にかけてWTI価格は1バレル=40ドル近辺での取引を続ける可能性が高いと予想する。

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