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初のマイナス成長から反転の中国、本格回復にはなお時間

(中国国家統計局「国内総生産」)

第一生命経済研究所 主席エコノミスト / 西濵 徹
週刊金融財政事情 2020年9月21日号

 昨年末に中国中部の湖北省武漢市で発見された新型コロナウイルスは、年明け直後に同市で感染拡大の動きが広がり、その後は中国全土に感染が広がる事態となった。中国政府は1年のうち最も人が移動する春節期間中に武漢市の都市封鎖に踏み切ったほか、その後は全土に都市封鎖の動きが広がるなど感染封じ込め策が強化された。さらに、春節休暇が延長されたものの、休暇後も都市封鎖措置を受けて幅広く経済活動が制限されるなど、中国経済にとっては過去に類を見ない悪影響が懸念された。

 中国でのウイルス感染拡大は、2002年に南部の広東省で感染が広がり、その後に中国全土に広がったSARS(重症呼吸器症候群)コロナウイルスが記憶に新しい。ただ、SARSにおける中国国内の感染者数は香港を合わせても8,000人強にとどまったのに対し、新型コロナの感染者数は香港を合わせると9万人弱と10倍以上に達している。

 SARSの際は、中国政府が意図的に世界保健機関(WTO)への報告を遅らせたことがその後の感染拡大につながったとされた。一方、新型コロナについては、地方政府の初動対応は拙かったとみられるものの、春節以降の対応は比較的早い決定がなされたという。それにもかかわらずこれだけ感染が広がった背景には、当時と足元では中国経済の規模が雲泥の差となっていることに加え、新型コロナの当初の感染拡大の中心地となった武漢市が、産業の集積地であるなど国内外との人およびモノの行き来が活発な土地であったことも影響したと考えられる。

 また、この20年ほどの経済成長を受けて、中国経済の構造変化が進んだことも影響した。足元ではGDPの半分以上を稼ぐサービス業を中心に、都市封鎖による幅広い行動制限が経済活動に甚大な悪影響を及ぼした。

 結果として、新型コロナの影響が明確に現れた1~3月の実質GDP成長率(前年同期比)はマイナス6.8%と四半期ベースで初のマイナス成長に陥った(図表)。季節調整値に基づく前期比はマイナス10%と統計開始後初のマイナスとなり、年率換算すれば30%以上のマイナス成長となる。

 その後、4月初めには武漢市の都市封鎖が解除されるなど感染収束に伴う経済活動の正常化が進み、5月末の全人代(全国人民代表大会)では財政および金融政策を通じた景気刺激策が打ち出された。そして、4~6月の実質GDP成長率は3.2%と2四半期ぶりのプラス成長となり、マクロ経済面では苦境を脱しつつある。一方、感染拡大第2波への懸念を含め、市民生活にはさまざまな悪影響が色濃く残っている模様であり、本当の意味での回復にはしばらく時間を要することになりそうだ。

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