証券市場においてはブロックチェーン開発会社との協業によって、デジタル化への取り組みを進める動きが活発になっており、複数国の取引所をシームレスに統合する証券取引・決済アプリの開発といった事例も確認されています。

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また、デジタルアセット市場と既存の金融市場との融合も着実に進行しており、米国では暗号資産取引所が銀行の開設を実現するなど、分散型金融(Defi)市場の拡大とともに規制に向けた議論も買わされるようになりました。

本稿では、「ブロックチェーンがもたらした証券・金融市場の構造的変化」に着目し、各国での取り組みを紹介していきます。

目次

  1. BNPパリバ証券サービス スマートコントラクト言語「DAML」を活用した証券取引・決済アプリの開発を発表
  2. 暗号資産取引所クラーケンによる銀行設立
  3. 分散型金融への規制について

BNPパリバ証券サービス スマートコントラクト言語「DAML」を活用した証券取引・決済アプリの開発を発表

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BNPパリバは、パリ国立銀行(BNP)とパリバ(Paribas)が2000年に合併して誕生した国際金融グループです。(パリ国立銀行の前身である国立パリ割引銀行は1848年設立)

日本市場にも慶応3年(1867年)にパリ国立銀行が横浜に支店を構えるなど古くから参入しており、現在は、世界の71の国と地域で約20万人以上の従業員を抱え、ヨーロッパやアジアを中心に投資銀行業務・資産運用サービスを提供。

今回、BNPパリバグループの子会社であるBNPパリバ証券サービス (BPSS)は、スマートコントラクト言語DAMLの開発を手がけるDigitalAssetとの提携を発表しており、リアルタイム取引・決済アプリの提供に向けて取り組みを進めるとしています。

DigitalAssetは中国のBlockchain Service Network(BSN)との提携も発表しており、Corda、Hyperledger Fabricといったブロックチェーン、Amazon Auroraデータベースなどの相互運用を可能とする「DAML」の活用が着実に広がっています。

2018年に設立されたブロックチェーン企業であるBTP(Blockchain Technology Partners)は、Digital Assetと共同で「Sextant for DAML」の製品開発を手がけており、Hyperledger SawtoothやHyperledger Besu、Amazon QLDBなどをワンクリックでデプロイできるサービスを提供しています。

BNPパリバ証券サービス (BPSS)は、「DAML」を活用したリアルタイム取引・決済アプリとオーストラリア証券取引所(ASX)・香港取引所(HKEX)が開発を進めるブロックチェーンプラットフォームとの統合を予定。

各国の取引所を結ぶグローバルな取引・決済アプリの普及によって、2020年代の証券市場はどのようにデジタル化していくのか、BNPパリバ証券サービス (BPSS)とDigitalAssetによる先進的な取り組みに大きな期待が寄せられています。

暗号資産取引所クラーケンによる銀行設立

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米国では暗号資産取引所クラーケンがワイオミング州における銀行設立を発表。

すでにクラーケンはSPID(特別目的委託銀行機関)としての承認をワイオミング州で受けており、世界で初めての暗号資産取引所による銀行設立として今後も注目を集めることでしょう。

名称は「クラーケン・フィナンシャル」とされており、預金管理やカストディといった業務をはじめとしてデジタルアセットによる請求書決済、給与受け取り、投資ポートフォリオの構築サービスを提供するとしています。

「クラーケン・フィナンシャル」は、法定通貨とデジタルアセットを繋ぐデジタル金融市場の一例として利活用が進むことが予想され、将来的には米国のみならず世界各国の企業にデジタル金融サービスを提供することも考えられます。

ワイオミング州と連邦法の基準に基づいて他の米国の銀行と同じように規制される「クラーケン・フィナンシャル」の安定的な運営は、中長期的に既存の金融市場とデジタルアセット市場の融合を実現することに繋がるとも考えられ、デジタルアセット企業の銀行サービス市場への参入は新たな金融市場を構築していくことでしょう。

日本でもクラーケンの日本法人であるPayward Asia株式会社が暗号資産交換業者として登録され、10月初旬を目処に取引サービスの開始を予定しています。

分散型金融への規制について

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分散型取引所(DEX)「Uniswap」はガバナンストークン「UNI」を発行し、今年の9月1日までに「Uniswap」を利用したユーザーに対して400UNI(約1200ドル)の配布を実施。

分散型金融(Defi)市場の広がりとともにスマートコントラクトの監査を行なっていないプロジェクトが問題となるなど、健全性の向上に向けた取り組みが進む中、「Uniswap」が市場を牽引しています。

分散型金融(Defi)に対する規制やに関しては、2019年に開催されたG20で問題提起がなされており、第三者機関を介さないP2P取引がもたらすリスク(マネーロンダリングなどの不正)について議論が交わされてきました。

今年の3月に行われた「BG2C(Blockchain Global Governance Conference)」においても官民が連携して相互理解を深め、各国が連携して規制を整備することなどが重要であるとしています。

そのような中、世界的なコンサルティング企業「ボストンコンサルティンググループ」は、レポートを発表。

分散型金融(Defi)が国家的な規制に準拠することなく利用できる点を問題視しており、マネーロンダリングによる金融犯罪など、今後はKYCや取引の際に顧客情報の取得を義務付けるといった規制が施される可能性も示唆しています。(提供:STOnline