「アントグループ(AntGroup)」は、国際貿易金融サービスプラットフォーム「Trusple」を発表。
「Trusple」は、国際貿易における買い手と売り手の間の信頼の問題を解決することを目的に開発され、アントグループのブロックチェーン技術である 「アントチェーン(AntChain)」が用いられています。
国際貿易の促進に向けてアントグループの親会社である「アリババ(Alibaba)」では、2001年から同様の取り組みを開始しましたが、企業間での取引は支払い方法とロジスティクスが複雑であったことから国際貿易金融サービスプラットフォームの開発/提供は難しく、TaobaoなどC2Cビジネスでの活用が進み、そのことはAlipayの開発へと発展しました。
本稿では、「Trusple」について解説し、国際貿易金融の効率化に向けたブロックチェーン技術の活用事例について解説していきます。
国際貿易金融サービスプラットフォーム「Trusple」について
浙江省義烏市では、Truspleを活用した国際貿易取引が行われています。
クリスタルジュエリーの販売事業を営む会社では、メキシコの業者とTruspleを通じて取引を実施。
これまで通常1週間かかっていた支払いの受け取りを翌日に短縮することができ、売上債権回転期間の良化によって「来年の事業は少なくとも30%の成長を達成できる」ともされています。
ブロックチェーン技術を活用することで、第三者機関を介さずとも取引の信頼性が担保され、国際貿易の複雑なプロセスの効率化を実現。
Truspleでは、取引注文とともにスマートコントラクトが生成され、注文で合意した条件に基づいて自動的に支払いが行われます。
このことで、売り手が支払いの遅延などの際に催促をする手間が省け、買い手は注文(請求期間)に基づく金融サービスも利用できるなど、従来の国際貿易におけるコストを大幅に削減します。
資金調達効率が向上することで、国際貿易事業を展開する中小企業の継続的な運営が可能となり、ブロックチェーン技術を活用した越境取引のデジタル化は世界経済により多くの信頼をもたらすことでしょう。
日本市場における国際貿易のデジタル化
Truspleのプロジェクトには「BNPパリバ、シティバンク、DBS、ドイツ銀行、スタンダードチャータードバンク」が参画しており、ブロックチェーン技術を活用した貿易金融プラットフォームの世界的な利活用が進行。
日本でも、ブロックチェーンの社会実装、スマートコントラクトの商用化といったテーマで多くの議論が交わされるようになり、行政のデジタル化など旧態依然とした既存システムの改革なくしては世界的な潮流から取り残されてしまうといった危機感も芽生え始めてします。
現在のところ証券、保険、不動産といった分野において実証実験による検証や実用化に向けた協業が日本では行われており、国際貿易の分野ではNTTデータが「貿易ブロックチェーンコンソーシアム」といった取り組みを実施。
すでにコンソーシアムごとに異なる国際貿易プラットフォームが活用されており、今後は統一規格の制定や合併によって差別化戦略をどのように構築するのかなど、市場環境の激化が予想されますが、それぞれのプラットフォームの利活用が広まることで、国際貿易の効率性が向上し、中小企業の成長を支える原動力となることでしょう。
国際貿易の市場規模は人口増加によって更なる拡大が見込まれ、2020年代は中国を中心としたアジア地域による世界経済の活性化が期待されています。
Truspleは、「支払いの安全性・確実性が不安」「ローンが間に合わない」「納期保証が難しい」といった国際貿易金融が抱える課題をブロックチェーンを活用した信頼メカニズムの構築によって解決することができ、日本市場においてもその利活用が進むことで、越境取引のコストが軽減され、新たなビジネスモデルの展開が促進されると考えられます。
まとめ
国際貿易は、多くの不確定要素を抱えたビジネスモデルであり、「不良品の仕入・売上の鈍化による在庫回転率の低下・資金繰りが困難になり売り手への支払いが遅延」といった悪循環に陥ることも少なくありません。
売り手と買い手が相互に信頼関係を構築できる市場メカニズムの登場は、一部の限られた人々によって構築されてきた国際貿易市場に大きな変革をもたらすことでしょう。
近年ではECサイトを介した越境取引も普及しており、より手軽で安全な商取引の実現に向けてTruspleの活用が期待されます。(提供:STOnline)