STOとはSecurity Token Offering の略です。
Securityは株や債券などの「証券」を意味します。つまり証券性を持つSecurity Tokenを活用した資金調達(Offering)のことSTOと呼ぶのです。
従来の資金調達に代わる新たな資金調達の方法として注目を集めており、世界中で事例が生まれつつあります。
この記事ではSTOとは何か、そのメリットからデメリットまでわかりやすくご説明していきます。
ポイントは主に以下の3つです。
- ICOやIPOに代わる新たな資金調達の形である
- 従来の株式市場に透明性と流動性をもたらす
- 法規制に準拠するため暗号資産の健全化に繋がる
まず証券性を持つトークン、セキュリティトークンとはどのようなものなのでしょうか。
目次
セキュリティトークンの定義
暗号資産業界ではトークンの発行が「有価証券」に該当するのか議論が繰り返されてきました。トークン発行が「有価証券」として証券法の規制対象となるのか?
この判断基準として「Howeyテスト(ハウイテスト)」が用いられています。
「Howeyテスト」はその基準を以下のように定めています。
- 投資として資金の出資があること
- 投資先から収益が期待できること
- 投資先が共同事業であること
- 第三者の仕事による収益が期待できること
アメリカでは、この4項目に該当した場合にトークンは有価証券として認められると定義されています。
アメリカやアメリカの適格投資家を対象にしたトークン発行にはこの「Howeyテスト」に適合しているかどうかが重要になり、連邦証券法に則って登録義務が課せられます。
あくまで「Howeyテスト」は一つの定義にすぎませんが、世界各国で行われているセキュリティトークン発行は、その国の法規制に準拠して発行されています。
このことから一般的にセキュリティトークンは「ブロックチェーン上で有価証券をトークン化したもの」と定義されています。
(有価証券:株式や社債、不動産といった資産を持っていることを証明するもの)
資産の所有や債券を証明する有価証券は、その国ごとの規制に準拠しています。各国ごとに法規制は異なることから明確な定義づけは難しく下記のような解釈をアジア証券業金融市場協会(ASIFMA)は発表しているので、ぜひ参考にしてみてください。
ICOの課題を克服する新たな資金調達:STO
STOは2017年に盛り上がりを見せたICOとはどのように違うのでしょうか。
一言でまとめると、STOは審査を通して専門の取引所に上場されるため、ICOのような詐欺を防げる上、幅広い投資家からの資金調達を可能にします。
銀行融資や投資家からの資金調達に目新しさがなくなってきた状況の中、ベンチャー企業から注目を集めたのがビットコインの隆盛とともに話題となったICO(Initial Coin Offering=イニシャルコインオファリング)です。
ICOは広く投資家から出資を募ることができ、銀行融資や株式上場よりも大規模な資金調達のハードルがはるかに低いという利点がありました。しかし、なんの審査も資産の裏付けもなく行えるICOでは詐欺が頻発し、投資家が敬遠するようになってしまいました。
STOはこれらの欠点を克服した新しい資金調達手段になることが期待されています。
STOは審査を通して専門の取引所に上場されるため、ICOのような詐欺を防げる上、広く投資家から資金調達をすることを可能にします。投資家としても今まで一部の資金豊富な投資家のみであったベンチャー出資とは異なり、株式や社債の購入と同様に行うことができます。さらに証券取引所と異なり、24時間いつでも取引が可能となります。
このような市場に対する潜在的な需要は巨額であり、これからの時代の金融のメインストリームになることが期待されています。
ではSTOにはどのようなメリット/デメリットがあるのかを見ていきましょう。
STOのメリット
- 詐欺まがいのプロダクトは淘汰される
- IPOよりも資金調達がスピーディーにできる
- 機関投資家からの投資が募れる
- 株式市場に手続きの簡略化と流動性をもたらす
1.詐欺まがいのプロダクトは淘汰される
STOは各国の証券法に基づいた金融商品であり、「投資家保護」によって市場の健全化を図ることができます。
例えばアメリカにおける有価証券の募集・販売はSEC(アメリカ証券取引委員会)にて登録義務が課されています。
2.IPOよりも資金調達がスピーディーにできる
ICOと比較すると限られた投資家からしか投資を募れないといったデメリットはあります。
しかし、監査機関からの審査に2年ほど時間がかかるIPOと比較すると資金調達がよりスピーディーに行えます。
3.機関投資家からの投資を募ることができる
また機関投資家からの投資が募れるので、より大口の金額を集めることができます。
ICOによる投機や取引所からの資産流出などのニュースが重なり、暗号資産は「新しいけど怪しい」といったイメージがまだまだ根強く残っています。 詐欺のようなプロジェクトが乱立し、誰でも簡単に投機の対象にできたICOがまだ記憶に新しいかと思います。
法規制の整備やボラティリティ(価格変動)の激しさといった課題は山積していますが、ブロックチェーンの将来性については世界中が注目しています。
STOは各国の法規制に準じてトークンが発行されることを前提としているため、機関投資家による巨額な資金調達が行えると予想されます。
また、投資対象として適正価格の判断がしやすい点もICOにはないメリットです。
資産の裏付けがないものの誰でも参加できたICOと比較すると投資の判断の難易度は高いですが、法規制に則った金融資産です。
4.手続きの簡略化と流動性をもたらす
株や債券といった資産をトークン化することで、配当・支払いといった手続きが簡略化され、「透明性」を担保するといった側面にも注目が集まっています。
さらには株式市場が「24時間取引可能」になることで市場の「流動性」の向上も期待できます。
STOのデメリット
一見素晴らしいことだらけのSTOですが、実はデメリットも存在します。
- 投資家に資格が求められる
- STO実施企業の手続きが煩雑である
1.投資家に資格が求められる
各国の証券法に基づいているため投資家にも資格が必要です。例えば、アメリカではSECによって年収や資産が特定以上でないと投資できません。
そのためICOのように少額投資家が多額の利益を上げることはないと考えられます。
STOが普及していくことで仕組みが変わってくる可能性もありますが、現状ではICOバブルのようなことは起こらないでしょう。
2.STO実施企業の手続きが煩雑である
また、企業が「IPO」を行うためには監査機関からの審査や資料の作成といった手続きが必要不可欠で、おおよそ数年の準備期間がかかります。この準備期間が起業家にとっての障害となっています。
そのため手軽に資金調達を行えるICOが普及しましたが、監査もなく資産の裏付けもない金融商品は高いリスクが伴い、事実詐欺的な事例が頻発したため合法的で資金調達のコストを軽減できるSTOに注目が集まってます。
STO関連企業
実際にどのような企業がSTOを行っているのでしょうか。ここでは業界を牽引する動きを見せている3社をご紹介します。
Securitize|セキュリティトークン(STO)発行プラットフォーム
「Securitize(セキュリタイズ)」は、これまで10社以上のSTOを実施し、その実績からセキュリティトークン市場においても高い評価を得ている米国企業です。
Securitizeは2020年に入り、
- 不動産セキュリティトークンに関する実証実験(LIFULLとの協業)
- Instant Access:P2Pセキュリティトークン取引
- Securitize ID:APIで様々なプラットフォームと連携できるデジタルIDサービス
といった取り組みを展開しており、日本のSTO市場に大きな貢献を果たしています。
Swarm(スウォーム)|STOプラットフォーム
Swarm(スウォーム)は限られた投資家しか参加できないオルタナティブ投資に一般投資家も参加できるプラットフォームとして話題を集めています。
未公開株や不動産をセキュリティトークン化することで、より利回りのいい投資に一般投資家も参加できるようになります。
すでにSwarmでは株式をトークン化した「Robinhood」、アート作品の所有権をトークン化した「TheArtToken」といったプロジェクトも誕生しており、今後もSwarmを通じてより多くの投資機会が生み出されることが予想されます。
Vertalo(ベルタロ)|セキュリティトークンによる世界の不動産市場の変革
Vertaloは、様々な規模の不動産への投資機会を拡大するため自社の有するテクノロジーをSaaSサービス(B2B)として提供することに成功しており、そのシンプルで安全なプラットフォームはブロックチェーン技術によるグローバルな不動産投資を活性化させます。
Vertaloの不動産部門であるVertalo Real Estate(VRE)は、商業用不動産ファンド「REI Capital Growth」と協業し、すでに2つのSTOプロジェクトを発表しています。
まとめ
まとめるとポイントは以下の3点です。
ICOやIPOに代わる新たな資金調達の形である 従来の株式市場に透明性と流動性をもたらす 法規制に準拠するため暗号資産の健全化に繋がる
これまではICOの乱立によって、多くの投資家が詐欺まがいのプロダクトによって資産を失うなど、結果として暗号資産業界への信用が失われる事態に発展しました。しかし最近では「投資家保護」を目的に規制強化が行われており、法規制に準拠して発行されるセキュリティトークンの活用が暗号資産の健全化にもつながるとされています。
「新しい資金調達方法」として注目を集めているSTOはアメリカだけでなく、世界の国々でセキュリティトークンの発行が行われており、日本においてもその活用が期待されています。(提供:STOnline)