為替レートは自国通貨と外国通貨の相対的な購買力の比率によって決定されるという為替相場決定理論。長期にわたる為替レートの決定理論で、スウェーデンの経済学者カッセル氏によって提唱された。完全に自由に貿易が行われる経済を想定した場合、同じものを自分の通貨で購入するより他国から他通貨で購入した方が安ければ、他通貨の需要が高まり、自国通貨が安くなる。逆に自国の物価が他国より安ければ、輸出した方が有利となり、自国の通貨が高くなる。このような調整プロセスを経ることで、通貨間の購買力が等しくなる水準に為替レートが決定されるという考え方が購買力平価説である。購買力平価説には、絶対的購買力平価説と相対的購買力平価説があり、前者の絶対的購買力平価説は、為替レートは2国間の通貨の購買力によって決定されるという説である。具体的には、例えばアメリカでは1ドルで買えるハンバーガーが日本では100円で買えるとするとき、1ドルと100円では同じものが買える(つまり1ドルと100円の購買力は等しい)ので、為替レートは1ドル=100円が妥当だという考え方である。しかし、この説が成立するのはすべての財やサービスが自由に貿易されなければならないため、厳密には成り立たない。一方、後者の相対的購買力平価説は、為替レートは2国間の物価上昇率の比で決定されるという説である。具体的には、ある国の物価上昇率が他の国より相対的に高い場合、その国の通貨価値は減価するため、為替レートは下落するという考え方である。しかしながら、この説もすべての財やサービスが同じ割合で変動することを前提としているため、厳密には成り立たないと言える。