セキュリティトークン業界においては50カ国以上からの資金調達(STO)を可能とするプラットフォームをTokensoftが提供しています。

STOnlineより
(画像=STOnlineより)

Tokensoftプラットフォームは、「1日あたり1万人の投資家、1時間あたり1,000万米ドルを処理/50か国以上の規制/コンプライアンス対応を自動化」といった特徴を有し、グローバルな資金調達プロセスのデジタル化を実現。

国際金融市場では法的リスクの軽減のために多くの契約書を必要としますが、法的要件がプログラマブルなトリガーとして自動的に執行されることで法律実務のメカニズムもデジタル化されると言った事例も今後は増加すると考えられます。

本稿では、株式のデジタル化に関する各国での取り組みや言論を解説し、行政手続きの効率化やグローバル投資家からの資金調達について考察していきます。

目次

  1. ブロックチェーン技術を活用した株式のデジタル化
  2. 各国における株式のデジタル化の事例
  3. 株式のデジタル化の今後に向けて
  4. 行政のデジタル化とブロックチェーンの活用に向けて

ブロックチェーン技術を活用した株式のデジタル化

米国ではSEC(証券取引委員会)委員長であるジェイ・クレイトンが、WEBセミナー「Two Sides of the American Coin」において、将来的にすべての株式がブロックチェーン上で発行され、デジタル化される可能性を示唆しています。

株式の電子化から20年の歳月が経ち、各国の金融機関が債券発行や証券取引の効率化に向けてブロックチェーン技術を活用した実証を行っており、資金調達のみならず様々な分野でセキュリティトークン(証券のデジタル化)の利活用が進行。

現在のところ日本では法規制が厳格であるためにSTOを実施して資金調達を行う企業はいませんが、リアルエステート株式会社はケイマン諸島に子会社を設立し、米国SEC免除規定であるRegulationに準拠してSTOを実施するなど、グローバル投資家からの資金調達の1つとして認知が広がっています。

米国においてはATSにおけるセキュリティトークン取引が行われており、ブロックチェーン技術に対応した私設取引システムの利活用によって、市場が形成されつつあります。

日本では、STOを実施して資金調達を行うメリットが明確でないことや法務局など行政サービスがブロックチェーンプラットフォームと連動して資金調達プロセスを効率化するといった取り組みも現実的ではないことなど、その普及に向けては中長期的な取り組みが必要となることでしょう。

しかしながら、SEC(証券取引委員会)委員長がイノベーションの活用に積極的な姿勢を見せたことで米国では株式のデジタル化が進むことが予想され、発行/取引のインフラ整備に向けて既存企業がどれだけブロックチェーン技術に対応するのかが、市場全体のデジタル化に向けては重要な争点となりそうです。

各国における株式のデジタル化の事例

中国証券監督管理委員会の元会長であるXiao Gangは、デジタルトランスフォーメーションを支える最新のデジタル技術の活用は資本市場のエコシステムや投資のあり方にも大きな変革をもたらすとしています。

中国においても各国と同様に資産や取引所ビジネスのデジタル化が行われ、デジタルチャイナ/デジタルエコノミーの構築が進行。

株式のデジタル化に向けては、ブロックチェーン技術を活用した取引データ管理・共有の一元化へのパイロットテストが証券取引所で行われるなど、将来的にはデジタル人民元を利用した証券の即時決済にも期待が寄せられています。

米国ではATSライセンスを有したスタートアップ企業が取引所ビジネスを展開するといった事例も確認されており、セキュリティトークン市場を牽引。

アジアにおいてもシンガポールにおいてサンドボックス制度を利用した実証を経て、デジタル証券取引所の運営がおこなわれており、日本企業が日本の不動産をデジタル証券化し、クロスボーダーな取引を実現する取り組みを予定するなど、デジタル技術を活用した株式市場の活性化が期待されます。

タイにおいてもデジタル証券取引所が、タイSECから認可を受けるといった事例もあり、ビットコイン・DeFIといったデジタルアセットへの関心の高まりとともに株式市場においてもデジタル化への対応が着実に進行していると言えます。

株式のデジタル化の今後に向けて

多くの人々がデジタルアセットへの警戒心を抱いていた数年前とは状況は一変し、多くの投資家が市場へ参入していますが、Xiao Gang氏は、黎明期における課題として

  • デジタルへの適応が困難な従来の組織構造
  • 関連法規制の整備の遅れ
  • デジタルインフラストラクチャの強化

についても指摘しています。

中国においては暗号資産取引が禁止されている中、金融機関によるブロックチェーン上での証券発行など、より健全な市場形成への取り組みが実施されてきました。

暗号法の施行など政府が主体となって産業分野へのブロックチェーン技術の導入を推進しており、デジタル人民元の普及による通貨システムの変革といった観点からも資本市場に与える影響は非常に大きいものであると考えられます。

従来の金融システムでは対応していないことや法規制が曖昧であることから暗号資産が資本市場に大きな混乱をもたらすといった事例も過去には存在していました。

しかし、ブロックチェーン技術は取引所における効率的なバックオフィス業務を実現し、コンプライアンスコストの大幅削減といったメリットをもたらすとされ、株式市場のデジタル化を今後も促進することでしょう。

米国においては、銘柄自体は少ないもののセキュリティトークン取引所におけるナスダック上場企業の優先株の取引高が増加傾向にあり、各国におけるエコシステムの発展においてもセカンダリーマーケットの形成が将来的な市場の発展につながるとも考えられます。

行政のデジタル化とブロックチェーンの活用に向けて

現在、募集株式の発行(増資)によって資金調達を実施した非公開企業は変更登記の手続きが必要となります。

最寄りの法務局に発行済株式数や資本金が記載された登記申請書と関連書類を窓口で提出し、不備がなければ数日〜数週間で増資完了となりますが、補正の指示が法務局から出た場合には再度窓口に出向いて手続きを行う必要があります。

登記に関する手続きは自社の従業員が対応する場合もありますが、主に司法書士の業務として認知され、最近ではAI技術を活用した「AI-CON登記システム」といったサービスも普及しています。

多くとも年に数回の募集株式の発行(増資)の手続きですが、その煩雑な業務を効率化するためデジタル技術の活用が行われています。

また、株主総会のオンライン化が実験的に行われ、経営管理業務を効率化する「FUNDOOR(ファンドア)」といったサービスも提供されています。

株式投資型クラウドファンディングを活用した資金調達も普及しており、「FUNDINNO(ファンディーノ)」のように40,113人(10月5日現在)の投資家が集い、サポート体制が整備されたプラットフォームがあることで、未公開株投資市場も発展を遂げています。

このように日本でも行政手続きにデジタル技術の活用が行われており、今後は証券をブロックチェーン上で発行/管理する取り組みが金融機関の実証にとどまらず、証券取引所などでも進む可能性が考えられ、デジタル証券市場のさらなる拡大が期待されます。(提供:STOnline