(本記事は、PIM総研の著書『いきなりキャッシュリッチになった人のための資産防衛術』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)

個人と法人の税制格差を知る

税金
(画像=PIXTA)

日本の所得税は累進課税制度を採用しているため、所得に比例して税率が上がります。例えば、所得が4000万円を超える場合は、その税率は45%にもなります(下図参照)。

さらに所得税に対して一律10%の住民税がかかるため、最大55%の税金が課せられます(さらに個人事業税5%が加わった場合、最大で約61%にもなる場合も)。

一方で、法人税の実効税率は、平成29年度の法改正により、現在は29.74%。単純計算しても個人の所得税との差は、約26%もあることがわかります。

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(画像=『いきなりキャッシュリッチになった人のための資産防衛術』より)

法人税は、年々下がっている傾向が一目瞭然にわかりますし、国も、

法人課税をより広く負担を分かち合う構造へと改革し、「稼ぐ力」のある企業等の税負担を軽減することで、企業に対して、収益力拡大に向けた前向きな投資や、継続的・積極的な賃上げが可能な体質への転換を促すため、「課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げる」という方針の下で法人税改革が進められました。

この成長志向の法人税改革は、平成27年度改正から始まり、改革2年目である平成28年度改正で、目標とされていた「法人実効税率20%台」を実現しました。

というように、今後さらに、法人税率は下がる可能性を感じさせます。

なんとなく個人名義で不動産経営による資産運用をしていると、ある程度の規模になったときに、予想外の税金に驚くことになりかねません。実際、私たちの上席研究員Sさんも最初は個人で不動産経営を行い、税金の還付を目的としていたのですが、一定以上の規模になった際に、むしろ納付という経験がありました(当時は定率法であり、繰り上げ返済にも積極的であったため。その後、すぐに法人化したのは言うまでもありません)。

資産防衛のために不動産投資・経営を行っているのに、節税ならまだしも、持ち出しになるようでは元も子もありません。

この教訓からも、富裕層の方が、資産防衛で収益不動産投資を行うならば、個人・法人の税制の違いを意識して、スタート時点から法人化による「不動産投資・経営」を行うことをお勧めします。

どんな法人にすればよいのか?

資産防衛のための法人設立を行うには、当然ながら、税制面のメリットを活用しながら、さらに“簡単”に運営できることが重要となります。

そのためには、次の3つの選択肢があります。

(1)不動産保有会社をつくる
(2)不動産管理会社をつくる
(3)サブリース会社をつくる

それぞれの特徴を解説しましょう。

(1)不動産保有会社をつくる

税制面のメリットが最も大きい形態といえます。Sさんもこの形を導入しました。家族に給与を支払うことで所得分散ができ、自身も法人から報酬を得ることで、給与所得控除を受けることができます。

Sさんは、この所得分配メリットだけでなく、「個人ではなく、家族・同族でマネジメントし、信頼関係のもとに会社運営ができて、資産が守れる」点に着目しました。

資産防衛の観点では、「一番税金を取られるのは自分の相続税だから、自分がお金を持っていればいるほど一番高い税率が適用される。自分がお金を持っているより会社が持っている方がいい」とも。これは富裕層の本音でしょう。

また、不動産を個人として持っていると均等に分けるのが困難ですが、会社のものにしておけば不動産を子どもに分ける必要がなく、株を均等に分ければ済むという、末代への視点も法人設立を選んだ理由です。

法人の代表を自身でなく、妻や子(15歳以上ならば)とし、自身は単なる株主で(意思決定はする)、代表にも役員にもならずにいることで、自由な活動も可能となります(極端な話、他の興味深い企業の社員として働くことだってできるのです)。

不動産保有会社は、ある程度仕組みさえつくれば、さほどやることがないので、他にやりたいことがあれば両立ができるというメリットもあります。

さらに、この形をとると、小規模企業共済などを利用して、掛け金を損金計上でき、利益を圧縮することができます。

デメリットでいうと、すでに個人で不動産を保有している状況では、法人に移す場合、譲渡益課税が発生してしまったり、個人に融資中の物件を法人に転換することを金融機関が認めてくれないケースもあるため、あえて法人に移さず管理会社方式での法人運営の方を選んだ方がよい場合もあります。

ただし、個人所有で借入返済中でも、法人への融資が可能となるケースもあります。

(2)不動産管理会社をつくる

設立した不動産会社に物件の管理を委託するための法人設立です。不動産所得に対する課税を軽減できる、役員退職金を支給できる、利益が法人に蓄積されるので、個人資産の増加を抑えられるというメリットがありますが、これは保有会社とも同様です。

むしろ、高額な管理料を法人側に払えない、家賃の入金を受けられない、相続時の口座凍結の対策にならないなどの不利な面があります。なにより最大のデメリットは、実際には外部の管理会社にアウトソーシングするケースが多いため、法人の実体がないとされ、税務上問題視されかねない点にあります。相当な賃料が見込めない限り、効率の悪い法人形態と言えます。

(3)サブリース会社をつくる

設立した法人が、オーナーの不動産を借りて運用するという形態です。

相場賃料の80~90%で一括借り上げを行い、もし1000万円の賃料があるなら約100~200万円の収益を法人に移せるので、個人課税を抑えることができます。

空室リスクを法人が負える、相続時の口座凍結対策になるというメリットこそありますが、ここでも法人の実体が税務署から問題視されるケースもあり、リスクを伴います。

さまざまなメリット・デメリットを考慮しても、不動産保有会社の形態が、安全かつ節税にも適していると言えます。

キャッシュリッチになった人のための資産防衛術
PIM総研
資産形成に適したワンルームマンション販売と賃貸管理のプロフェッショナル集団・株式会社P I M を母体とするシンクタンク。富裕層を主な顧客として、不動産投資を軸に据えた資産運用と資産保全の情報調査・研究・提供を行っている。母体である株式会社PIMは、2001年東京都世田谷区梅丘で設立。創業以来、東京都内でも人気の高い地区のみにターゲットを絞り事業を展開。「不動産という資産を通じて、より豊かな暮らし」を実現するために、「営業本部」「管理本部」「リーシング事業本部」「開発事業本部」「コンサルティング事業本部」「法務管理室」の精鋭による6つの専門部署を設置し、資産形成を幅広くサポートしている。

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いきなりキャッシュリッチになった人のための資産防衛術
  1. 「資産を守る」タイプに伝えたいこと
  2. M&Aが活発に進むとともに、M&A富裕層が続々と生まれてくる
  3. 不動産投資・経営が資産防衛に向く5つの理由とは
  4. 不動産保有会社の形態が、安全かつ節税にも適している理由
  5. 法人化して不動産投資・運営などの事業を行うと何が違うのか
  6. “争続”を回避するためにどのような策を打てばいいか
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