(本記事は、PIM総研の著書『いきなりキャッシュリッチになった人のための資産防衛術』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)
富裕層って何だ?
会社の創業メンバーとなり、会社を成長させて売却するというサクセスドリームを実現したSさんですが、日本にはSさんのような超富裕層はどのぐらいいるのでしょうか?
まず、富裕層の定義ですが、日本国内だと資産1億円以上の人のことを富裕層と呼ぶことが多いようです。海外だと資産100万ドル以上を富裕層と呼ぶようなので、だいたい同じ額と思っていいようです。
野村総合研究所(NRI)では、下記のように富裕層を分類しています。
同じ富裕層でも、保有資産が5億円以上ある人が「超富裕層」です。ちなみに日本国内における富裕層の割合については、下記が参考になります。
2015年時点で、資産1億円以上5億円未満の富裕層が118.3万世帯、資産5億円以上の超富裕層が8.4万世帯となっています。意外に多いという印象を持たれるかもしれません。富裕層と超富裕層を合わせた数が、全体の2.3%ということですから、日本人の100人に2人は富裕層以上なのです。
また、日本国内における富裕層の数は年々増えており、その背景には株高や、団塊世代が退職金を受け取るようになったことなどが挙げられています。
M&Aで富裕層が大量出現?
私たちが注目しているのは、M&A(企業の合併・買収)による富裕層の増加です。
中小企業庁によれば、2025年までに127万社の中小企業が廃業することが予想されています。廃業の一番の理由は、後継者難です。1995年には47歳前後であった経営者年齢のボリュームゾーンが、2015年には66歳前後と高齢化しています。一般に経営者の引退年齢は70歳前後であることから、主流をなす団塊世代が大量引退の時期を迎えているのです。
東京商工リサーチによれば、廃業する会社の5割は黒字会社です。これらの企業が廃業するとなると、雇用やGDPにも大きく影響するため、国は事業がスムーズに継承されるためにさまざまな施策を打ち出しています。事業承継税制の特例もその1つです。
おそらく黒字会社の多くは、廃業せずにM&Aで継承される可能性が高いと考えられます。そうなれば、5億円以上のキャッシュが入る方も相当数出るだろうと予想されるのです。
最近では、経営者が身売りすることに対するアレルギーが薄れてきています。また、それに応じてM&Aの買い手の動きも活性化しています。
M&A市場では、必ずしも黒字企業だけが売買されるわけではありません。次のような条件を満たしていれば、業績不振でも買い手がつくと言われています。
(1)免許や資格を持っている企業 ガソリンスタンド、運送、調剤薬局、電気工事など、許認可が必要な業種は人気があるようです。また、独占輸入販売権を持つ輸入商社もニーズがあります。
(2)顧客基盤や技術がある企業 地場のスーパー・小売・外食、介護関連企業、自動車部品などです。一定の商圏内で強みを持つ企業や、独自の技術がある企業は評価されます。
(3)人手不足の業種 建設業、調剤薬局、運輸業、介護関連業などです。
(4)隠れた資産を持っている企業 大手企業との取引口座を持っていたり、買い手のニーズ次第で転用できるような広い敷地の工場などを持っている企業がこれにあたります。
すでに事業承継を目的としたM&Aの件数は、10年前と比較して2倍以上に増えています。また、「承継のプロ」である仲介事業者や弁護士・公認会計士といった士業、メガバンクから地銀・信金などの金融機関が、続々とビジネスチャンスと見て承継市場に参入してきています。
M&Aが活発に進むとともに、M&A富裕層が続々と生まれてくるものと予想されます。
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