プライベートエクイティ市場におけるセキュリティトークンエコシステムの拡大

セキュリティトークン発行プラットフォームの開発/提供を手がける「Securitize」は、米国ブローカーディーラーおよび代替取引システム(ATS)「Distributed Technology Markets(DTM)」を買収することを発表。

STOnlineより
(画像=STOnlineより)

現在の公開株式市場と未公開株式(プライベートエクイティ)市場を比較すると

  • プライマリーマーケット「$1.4T:$2.9T」
  • セカンダリーマーケット「$33.0T:$0.1T」

といったようにセカンダリーマーケットにおいて330倍もの差が生まれています。

近年においては、従来の市場の機能不全を改善するために様々な取り組みが行われていますが、IPOゴールやオーバーバリュエーションといったように行き過ぎた短期利益の追求は規制当局によって是正されてきました。

2020年代においては、ブロックチェーン技術を活用し、これまで証券化されてこなかった実物資産のトークン化やその二次流通を担うインフラの普及が見込まれており、より良い投資商品を求める投資家ニーズに応える市場形成の促進が期待されます。

セキュリティトークン市場の発展は、従来の資本市場の機能を拡張させ、透明性の高い健全な投資商品の提供を実現します。

「Securitize」はその市場の発展に向けて重要な役割を果たしており、「Project Aquaman(プロジェクトアクアマン)」と名付けられた一連の取り組みは、現在のセキュリティトークン市場の低流動性といった課題解決を促進させることでしょう。

VelocityMarketsの子会社であるDTMは、米国SEC(証券取引委員会)およびFINRA(金融業規制機構)に登録され、私募証券(セキュリティトークンを含む)の発行/取引の承認を受けています。

今回のDTMの買収によって、「Securitize」はトランスファーエージェントとしての機能のみならず、ブローカーディーラー・代替取引システム(ATS)としてもセキュリティトークンエコシステムをより包括的にサポートすることが可能となります。

最近では、ATSであるtZEROでの取引が増加傾向にあり、市況の大きな変化によって劇的な成長を遂げたOverstock社が発行する「OSTKO」が市場全体の時価総額を大きく引き上げるといった事例も確認されています。

このことからセカンダリーマーケットへの参入企業が増えることで、市場への参加者も増加することが予想され、「Securitize」のプラットフォームを利用してセキュリティトークンを発行した企業が1年間のロックアップ期間を経て、「Securitize」提供のATSに上場するといった事例も将来的には考えられるでしょう。

エコシステム全体を自社サービスとして一元化できる企業が現れたことによって、市場全体の効率性が向上し、発行からATSへの上場を検討する企業の積極的な参画も見込まれます。

「Securitize」は、2017年に設立されて以降、150以上の顧客と40,000以上の投資家と協力し、セキュリティトークン市場の黎明期を支えてきました。

これまでMUFG、野村ホールディングス、SBI、Sony Financial Ventures(SFV)といった日本企業をはじめとして、SPiCE VC、TezosFoundationなどから3,000万米ドル以上の資金調達に成功しており、プライベートエクイティ市場における流動性の提供に向けて今後も成長が期待されています。

「Securitize」が、米国セキュリティトークン市場において、ブローカーディーラー・ATSとして機能することで、シームレスなエコシステムの構築が図られると考えられ、インフラストラクチャーの整備によって市場の成熟はさらに進むことでしょう。

最近では、tZEROのみならず、米国資本市場初のデジタルIPO(公募型STO)を実施したINXや英国でセキュリティトークン取引所の承認を受けたArchaxなどセカンダリーマーケットへの参画企業が各国であらわれており、日本でもSTOの実施が予定されているなど、証券のデジタル化に向けて取り組みが進んでいます。

また、Money transmitter(送金業者)である「VelocityPlatform」の買収も「Securitize」は計画しており、ブロックチェーン企業が証券発行から取引までのサービスを提供することで、プライベートエクイティ市場におけるセキュリティトークンエコシステムの拡大が見込まれます。(提供:STOnline