1万人以上のビジネスパーソンへのインタビューを行ってきたコンサルタントの大塚寿氏によれば、今の50代の多くはまだ「会社への強い思い」を持っている人が多いという。しかし、会社側はそれに応えることをせず、「片思い」になってしまっているのが現実だ。その現実に対処するため、40代から始めておくべきこととは?

*本稿は、『できる40代は、「これ」しかやらない』(PHP研究所)の内容を抜粋・編集したものです。

「会社しかない人生」の寂しさ

できる40代は、「これ」しかやらない,大塚寿
(画像=PIXTA)

先日、高校の同窓会に出席した知人が、こんな話をしていました。

「メガバンクに新卒で入行し、53歳で融資先に出向になった同級生が、銀行最後の日にわざわざ本店の前に行って、記念写真を撮ってSNSに上げていた。出向になったというのに、まだそんなに会社のことを愛しているのかと愕然とした……」

確かに、どんなに会社のことを愛しても、会社があなたを愛してくれるとは限らないのが今の日本です。50代になると役職定年や出向で年収がぐっと下げられ、定年後再雇用となると、給与は下手をすると新人並みに下げられてしまいます。

多くの企業では、50代になった社員に「セカンドライフ研修」といった定年後の人生設計を考えさせる研修を行うのですが、その際、研修の冒頭で今後もらえる給与や退職金の額、そして年金の額を伝えると、みなその低さにシュンとなり、その後の研修も上の空になってしまうそうです。

リクルートから数多くの経営者が生まれる理由

こうした事態に陥らないためには、40代のうちに一刻も早く「会社人間」から脱却することです。会社にしか自身のアイデンティティがないから、会社に「裏切られた」と感じ、やる気を失ってしまうのです。

ここで、私から提案があります。会社や組織に勤める人は、「じぶん商店」の経営者だという意識を持ってほしいのです。「〇〇株式会社××事業部の大塚」ではなく、大塚という「じぶん商店」を経営しているという意識に転換するのです。

私が所属していたリクルートは世に「人材輩出企業」として知られています。その要因として、当時、会社に掲げられていた「皆経営者主義」という言葉が、大きな影響を与えていることは確かだと思います。誰もが会社に雇われている一介の社員ではなく、「自分が自分の仕事の経営者だ」という意識を持って仕事をする。当時のリクルートはまさに「じぶん商店」の集まりでした。

だからこそ、リクルート出身者からはUSENの宇野康秀氏、リンクアンドモチベーションの小笹芳央氏、LIFULLの井上高志氏、マクロミルの杉本哲哉氏ら著名な経営者が数多く輩出しているのでしょう。この伝統は今でも続いており、「スクー」の森健志郎氏、「ジモティー」の加藤貴博氏、「アソビュー」の山野智久氏など、今をときめく若手経営者も続々現れています。